The Pineapple Thief - All The Wars (2012)
The Pineapple Thief 2012

The Pineapple Thief - All The Wars (2012)

Rock Prog Rock

The Pineapple Thief『All The Wars』について

The Pineapple Thiefの『All The Wars』は、2012年にKscopeから発表されたスタジオ作品。英国プログレ寄りのロック・シーンで存在感を強めていく時期の重要作で、バンドの持つ内省的な歌心と、構築的なアレンジがまとまって表れたアルバムとして知られている。中心人物はBruce Soordで、彼のソングライティングを軸にしながら、バンド形態での演奏と録音のスケール感を押し広げた一枚でもある。

作品の位置づけ

The Pineapple Thiefは1999年にBruce Soordの音楽的ビジョンとして始まり、その後はライブ・バンドとしての体制を整えながら活動を続けてきた。『All The Wars』は、その流れの中で、個人の感情を起点にした楽曲を、バンド全体のダイナミクスへと広げた作品として位置づけられる。前作までで培ってきた叙情性に加えて、ストリングスを含む大きな編成が導入され、楽曲の輪郭がよりはっきりしている。派手な転換を狙うというより、これまでの持ち味を整理しつつ、表現の幅を広げた印象が強い。

制作背景とサウンド

制作面では、Peter GabrielのReal World Studiosでドラム録音が行われ、その後LincolnshireのThe Chapelを拠点に作業が進められた。さらにPrague Philharmonicによる22人編成のストリングスが加わっている。こうした経緯からも、単なるバンド録音ではなく、音像を積み上げていくタイプの作品であることがうかがえる。

実際に耳を通すと、リズム隊の推進力と、ギターや鍵盤の重なりがきれいに整理されていて、各曲の中で音が詰まりすぎない。ストリングスは前面に出ている場面もあるが、装飾よりも曲の輪郭を補強する役割が大きい。Bruce Soordの歌は、感情を大きく振りかぶるというより、言葉の重みをそのまま置いていくような質感で、作品全体の緊張感を保っている。音の積み方は丁寧で、静かなパートから厚みのある展開へ移る場面に、このバンドらしい流れがある。

テーマとアルバムの空気

Bruce Soordは本作について、身近な人との葛藤や喪失をテーマにしていたことを語っている。“戦争”というタイトルも、外側の争いというより、人間関係の中で起きる衝突やすれ違いを指すものとして受け取れる。そうした背景があるため、曲調は攻撃的に突き進むというより、感情の揺れを追うような組み立てになっている。言葉数を抑えた箇所でも、空白の使い方に意味がある。

この方向性は、同時代の英国プログレ/メロディック・ロックの中でも、派手な技巧より楽曲単位の密度を重視する流れと近い。Porcupine TreeやSteven Wilson周辺の作品と比べられることがあるのも自然で、どちらも現代的な録音感の中に70年代的な大きなアレンジを織り込んでいる。ただしThe Pineapple Thiefは、より内向きの視線と、歌の温度を中心に据えている点が目立つ。

評価と反応

リリース当時の反応も概ね好意的だった。公式チャートでは全英インディペンデント・アルバム・チャートで初登場22位を記録し、AllMusicもバンドにとっての英国チャート上の好成績に触れている。Louder系のレビューでは、極端な方向転換ではないが持ち味を活かした作品として扱われていた。大きく評価を変えるためのアルバムというより、積み上げてきた要素を確かな形にした一枚、という受け止め方が近い。

まとめ

『All The Wars』は、The Pineapple Thiefが内省的な楽曲作りとプログレッシブな拡張性を両立させた作品。2012年という時点で、バンドの表現はかなり整理されていて、ストリングス導入を含む制作もその方向をはっきり示している。Bruce Soordの個人的な感情を起点にしながら、バンドとしての演奏とアレンジでそれを包み込む構成。The Pineapple Thiefの歩みの中でも、次の段階へ進むための節目として見えてくるアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 Burning Pieces
  2. A2 Warm Seas
  3. A3 Last Man Standing
  4. A4 All The Wars
  5. A5 Build A World
  6. B1 Give It Back
  7. B2 Someone Pull Me Out
  8. B3 One More Step Away
  9. B4 Reaching Out

動画プレイリスト

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