山崎ハコ - 人間まがい (1979)
Hako Yamasaki 1979

山崎ハコ - 人間まがい (1979)

Rock Folk, World, & Country Blues Funk / Soul Experimental Folk Acoustic Soul

山崎ハコ『人間まがい』について

1979年に発表された山崎ハコの『人間まがい』は、フォークの語り口を土台にしながら、ロック、ブルース、ソウルの要素を自然に抱え込んだ一枚だ。山崎ハコは1970年代のフォーク・ブームを代表するシンガーソングライターのひとりで、鋭い言葉選びと、感情を押し殺しすぎない歌い方で独自の位置を築いてきた。本作もその延長線上にあり、単なる弾き語り作品というより、当時の「ニューミュージック」以降の広がりを含んだアルバムとして聴こえてくる。

1979年という年は、フォークの枠組みが少しずつ変質し、歌の骨格はそのままに、編曲やサウンドの側で新しい感触を取り込む動きが目立っていた時期でもある。『人間まがい』は、そうした時代の空気を受け止めつつ、山崎ハコ自身の視点を前面に出した作品という印象が強い。タイトルの通り、人と人との距離感や、社会の中での居心地の悪さを見つめる姿勢が全体を貫いている。

作品の位置づけ

山崎ハコは、1970年代から一貫して作品を積み重ねてきたアーティストだが、『人間まがい』はその中でも、フォークの直球の告白性と、演奏面の広がりが並立している時期の記録として見やすい。後年の作品群に比べると、ここではまだ70年代的な緊張感が強く、言葉の重さとアレンジの動きが近い距離にある。歌の中心に立つのはあくまで本人の声だが、その周囲に置かれる楽器の色合いが、感情の温度を少しずつ変えていく。

同時代の文脈で見ると、岡林信康や中島みゆきの初期、あるいは五輪真弓の一部作品に通じる、歌詞の強度を軸にした日本語ポップスの流れの中に置ける。もっとも山崎ハコの場合は、語りの勢いだけで押し切るのではなく、沈黙の間や声の擦れ方まで含めて曲が成立しているところが特徴的だ。

注目曲について

本作の中心にあるのは、やはり表題曲「人間まがい」だろう。タイトルからして強い言葉だが、実際の曲もその印象を裏切らず、自己否定や周囲への違和感を、単なる感情の爆発ではなく、じわじわと積み上げるように歌っていくタイプの楽曲として受け取れる。山崎ハコの歌声は、ここで大きく張り上げるというより、言葉を噛みしめるように進み、その抑え方がかえって内容の重さを際立たせる。

表題曲の聴きどころは、メロディの起伏よりも、フレーズごとの言い回しにある。日本語の子音や母音の置き方が丁寧で、ひとつひとつの語が簡単に流れない。フォークの形式を踏まえながらも、歌詞が単純なメッセージソングに収まらず、個人の内側と外側のずれを描く方向へ進むところが、この時期の山崎ハコらしい。

もうひとつ耳を引くのは、アルバム全体の中で、比較的リズムや演奏の輪郭がはっきり感じられる曲群だ。山崎ハコの作品は静かな弾き語りだけが核ではなく、ブルースやソウルの感触を持つ曲で、声の湿度や言葉の引っかかりがより見えやすくなる。本作でもそうした場面では、歌の切迫感だけでなく、身体の動きに近いグルーヴが前に出てくる。フォークの内省と、バンドサウンドの推進力がぶつかりすぎず同居している点が面白い。

聴きどころの輪郭

『人間まがい』は、派手な演出で引っ張る作品ではないが、曲ごとの温度差がはっきりしている。アコースティックな手触りが前面に出る場面では、歌詞の輪郭がくっきり立ち、実験的な響きを含む場面では、山崎ハコの声がその不穏さを受け止める。結果として、アルバム全体が一枚の作品としてまとまりながらも、曲ごとに表情が変わる。

また、1979年の日本のレコードとして聴くと、フォークとロックの境界がかなり柔らかくなっていたことがわかる。『人間まがい』もその流れの中にあり、歌謡曲的な親しみやすさと、歌詞の切実さが同じ場所に置かれている。山崎ハコの作品群の中では、初期の緊張を保ったまま表現の幅を広げた段階にあたる一枚として捉えやすい。

まとめ

『人間まがい』は、山崎ハコの歌の核にある孤独感や自己観察を、1979年という時代のサウンドの中で形にしたアルバムだ。フォークを起点にしながら、ロック、ブルース、ソウルの要素が無理なく入り、言葉と声の存在感が最後までぶれない。派手さよりも、歌の内容と演奏の手触りがじわじわ残るタイプの作品として、山崎ハコのディスコグラフィーの中でも印象を残しやすい一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 誰が呼ぶ 4:28
  2. A2 きょうだい心中 5:51
  3. A3 ムラサキの花 4:38
  4. A4 からす 5:35
  5. B1 呪い 4:20
  6. B2 人間まがい 3:45
  7. B3 暗闇 6:24
  8. B4 三つの花 3:17
  9. B5 心だけ愛して 4:40

動画

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