A Flock Of Seagulls - Dream Come True (1986)
A Flock Of Seagulls『Dream Come True』レビュー
A Flock Of Seagullsの『Dream Come True』は、1986年にUKのJiveから出た4作目のアルバムである。Liverpool出身のニューウェイヴ・バンドとして知られる彼らは、80年代前半にシンセサイザーを前面に出したサウンドで存在感を示し、本作はその流れの中で発表された作品になる。バンドの中心はMike Scoreで、ギターのPaul Reynolds、ドラムのAli Score、ベースのFrank Maudsleyという初期編成の色が強く残る時期の記録としても見ておきたい一枚だ。
同時代のUKニューウェイヴやシンセポップの中では、派手な装飾よりも、機械的なリズムとメロディの輪郭をはっきり出すタイプの音作りが目立つ。A Flock Of Seagullsといえば、髪型のイメージが先に語られがちだが、実際にはシンセとギターの役割分担が明快で、80年代らしい音像の整理されたバンドでもある。本作もその印象を引き継いだ内容として受け取れる。
作品の位置づけ
『Dream Come True』は、バンドの4作目にあたり、1986年3月10日発売のアルバムとしてまとまっている。収録曲のうち先行シングルとしては、1985年10月の「Who's That Girl (She's Got It)」と、1986年2月の「Heartbeat Like A Drum」が出ている。アルバムの前後関係を見ると、バンドが80年代中盤のUKポップ/ダンス寄りの空気にしっかり接続していたことがわかる。
この時期のA Flock Of Seagullsは、初期の代表曲で広く知られる一方で、作品単位で追うとアルバムごとに音の整理の仕方が変わっていく。本作は、初期の勢いだけで押し切るというより、曲ごとの構成をきちんと見せる方向に寄ったアルバムとして捉えられる。ライブ編成の表記にChris ChryssaphisやGary Steadninの名前があるのも、この時期の活動の広がりを示している。
「Who's That Girl (She's Got It)」
先行シングルの「Who's That Girl (She's Got It)」は、本作を語るうえで外せない曲である。1985年10月に先行して出ており、アルバムの顔として機能している。タイトルからもわかる通り、フックの立て方が明確で、A Flock Of Seagullsらしいシンセの線の細さと、ポップソングとしてのわかりやすさが同居している。
この曲のポイントは、音数を詰め込みすぎずに、ボーカルのメロディとリフの反復で引っ張るところにある。80年代のシンセポップには、同じように軽快なテンポ感を持つ曲が多いが、その中でもA Flock Of Seagullsはギターの入れ方がはっきりしていて、単なるキーボード主導のポップとは少し違う手触りを残す。バンドの持つ都会的な硬さが、そのまま曲の輪郭になっている印象だ。
「Heartbeat Like A Drum」
もう一つのシングル「Heartbeat Like A Drum」は、1986年2月にリリースされている。タイトル通り、打ち込み的なビート感を意識した作りで、アルバムの中でもリズムの存在が前に出やすい楽曲といえる。A Flock Of Seagullsの作品には、メロディだけでなく、ドラムやシーケンスの反復が曲の推進力になる場面が多いが、この曲もその系譜にある。
聴き進めると、サビでの押し出しよりも、各パートが少しずつ重なっていく構造が印象に残る。派手な展開で盛り上げるというより、一定の拍を保ちながら曲全体を前へ進めるタイプで、シンセポップらしい機能性がよく出ている。アルバムの中では、先行シングルとしての役割がはっきりした一曲だと思える。
音の印象と聴きどころ
本作のサウンドは、80年代中盤のUKポップスらしく、シンセサイザーの音色が曲の骨格を作っている。そこにMike Scoreのボーカルが乗り、ギターが隙間を埋める。初期A Flock Of Seagullsにあった、少し冷たい質感のあるアレンジはここでも確認できる。いわゆる“ニューウェイヴのバンド”という括りの中でも、ダンスフロア向けの派手さより、整った構成を優先するタイプのアルバムに見える。
また、同時代の比較対象としては、The Human LeagueやHoward Jonesのようなシンセポップ勢が思い浮かぶが、A Flock Of Seagullsはその中でもギターの使い方がやや目立つ。音の隙間を活かしつつ、メロディをはっきり聴かせる作りは、バンドとしての輪郭を保つうえで重要だったはずだ。アルバム全体を通しても、その点は一貫している。
盤について
今回のUK盤はJiveのHIP 32。レーベルとしてのJiveは80年代以降、ポップやダンス系の作品で広く知られるようになるが、1986年時点ではまだ80年代中盤のUKシーンの中で動いていた時期にあたる。なお、このアルバムは2005年にCD化された記録があるが、ここで扱うのは1986年のオリジナル盤である。オリジナルのLPとして追うなら、当時のバンドの空気とレーベルの持っていた方向性が、そのまま盤に刻まれているように感じられる。
『Dream Come True』は、A Flock Of Seagullsのキャリアの中で、初期の代表像と80年代中盤のポップな整理の両方が見える作品である。ヒット曲の印象だけで語るより、アルバム単位で聴くことで、バンドがどのようにシンセポップの形式を自分たちの音にしていたかが見えやすい一枚だ。
トラックリスト
- A1 Better & Better 5:21
- A2 Heartbeat Like A Drum 5:30
- A3 Who's That Girl (She's Got It) 4:17
- A4 Hot Tonight 5:55
- B1 Cry Like A Baby 6:28
- B2 Say So Much 3:35
- B3 Love On Your Knees 3:58
- B4 How Could You Ever Leave Me 3:22
- B5 Whole Lot Of Loving 6:00