Anaconda - Sympathy For The Madman (1969)
Anaconda『Sympathy For The Madman』について
Anacondaの『Sympathy For The Madman』は、1969年に残された10インチ・アセテートをもとにした作品で、2020年にUKのSeelie Courtからアナログ盤として登場した。アーティスト情報としては、Acid folk bandとして記録されており、Arcadiumで知られるMiguel Sergidesが関わっている点が大きい。60年代末の英国アンダーグラウンドに接する録音として見ると、フォークロックとサイケデリック・ロックの境目に置かれる内容だろう。派手な大作というより、当時のローカルな制作環境と、短い媒体に収められた音の記録として受け取るほうが自然だ。
Seelie Courtは、1960〜70年代英国の埋もれた録音や未発表音源の発掘で知られるレーベルで、この作品もそうしたアーカイブ再発の流れにある。オリジナルの1969年録音からかなり時間を置いての再登場なので、2020年盤は現行の聴取環境で聴き直すための再提示という意味合いが強い。こうした再発では、単に古い音源を復刻するだけでなく、保存状態の悪さや入手難を越えて、作品の輪郭を改めて見せる役割がある。
作品の位置づけ
Anacondaにとっては、まとまった正式アルバムというより、1969年時点の活動を伝える記録的な一枚と捉えられる。10インチ・アセテートという媒体自体が、商業流通を前提にした完成品というより、スタジオや関係者の間で回された試作的な性格を持つことが多い。そこにMiguel Sergidesが加わっていることで、単なる素朴なフォーク録音ではなく、当時の英国サイケデリア周辺に接続する感触が生まれている。
同時代の文脈で見ると、英国のアシッド・フォークやフォークロックは、伝統曲の再解釈だけでなく、より内省的で、時に実験性のある表現へ向かっていった。PentangleやFairport Conventionのようなフォークロックの流れと、より地下的なサイケデリック作品群のあいだに置くと、Anacondaの立ち位置が見えやすい。大きな商業性よりも、限られた場で鳴っていた音の質感に価値があるタイプの作品だ。
「Sympathy For The Madman」
タイトル曲は、この作品の核として扱われることが多いはずだ。曲名そのものが示す通り、当時のサイケデリック期に見られる「逸脱した心性」や「周縁の感覚」を思わせるが、ここでは誇張されたドラマよりも、アコースティックな手触りの中に不穏さが差し込むような作りが中心になる。アシッド・フォークの文脈では、歌詞や題名が心理的な揺らぎを示すことは珍しくないが、この曲もその系譜にあると見てよさそうだ。
2020年盤で聴くと、録音の近さと乾いた音像が印象に残る。アセテート由来の資料らしく、音の輪郭が過度に磨かれていないぶん、演奏の細部が前に出る。ギターの打音、声の距離感、曲の進行にともなう緊張の積み上がりといった要素が、いわゆる完成されたスタジオ盤とは少し違う形で伝わってくる。ここは作品の魅力のひとつで、後年の再発だからこそ、当時の空気をそのまま覗くような聴き方ができる。
「Miguel Sergides」の関与が示すもの
メンバーとして挙がるMiguel Sergidesは、Arcadiumで知られる人物で、60年代英国ロックの周辺史を追ううえで重要な接点になる。Arcadiumはハードロック寄りの文脈でも語られることがあるが、そこでの経験がAnacondaの録音にも何らかの影響を与えていた可能性は高い。とはいえ、この作品は技巧の誇示よりも、フォークの骨格にサイケデリックな揺れが入り込む点に特徴がある。
そのため、Anacondaは単独で語るより、当時の英国アンダーグラウンドに散在した小さなセッションや私家盤の流れの中で見ると理解しやすい。完成度の高い名盤というより、時代の境目に置かれた音源。フォークロックが拡張していく瞬間と、サイケデリアが日常の録音へ浸透していく瞬間、その両方が重なっている。
2020年再発盤としての意味
2020年のSeelie Court盤は、1969年の元音源を現在のレコードとして聴ける形に整えたものだ。オリジナル盤と比べると、入手性の面で大きく性格が異なる。もともと10インチ・アセテートという限定的な媒体に残された作品が、再発によって広く聴取可能になった点は大きい。アーカイブ・レーベルらしく、作品の歴史的な位置を保ちながら、現代のリスナーに向けて再提示している。
総じて『Sympathy For The Madman』は、1969年英国のアシッド・フォーク/フォークロック周辺に残された、短くも重要な痕跡として受け取れる一枚だ。大きなヒット曲や広く知られた代表曲を持つタイプではないが、タイトル曲を中心に、当時の地下音楽が持っていた録音の生々しさと、場末のスタジオ感覚がよく残っている。アーカイブ再発の価値が、そのまま作品の意味になっている盤だ。
トラックリスト
- A1 It's Not Me 3:42
- A2 Riding Alone 4:20
- A3 Who Are We? 5:36
- B1 Outrider 3:40
- B2 Sympathy For The Madman 4:20
動画
- Anaconda - Outsider (1969)
- Anaconda - Who Are We?
- Anaconda - It's Not Me
- Anaconda - Riding Alone
- Anaconda - Sympathy For the Madman 1969