Baby Huey - The Baby Huey Story - The Living Legend (1971)
Baby Huey『The Baby Huey Story - The Living Legend』について
Baby Hueyの『The Baby Huey Story - The Living Legend』は、1971年にUSのCurtomからリリースされた、彼の唯一のアルバムとして知られる作品だ。Baby HueyことJames Rameyは1944年生まれ、1970年に26歳で亡くなっており、本作はその死後に世に出た。つまり、本人の活動を総覧する“デビュー作”であると同時に、短い活動期間の記録でもある。ソウルとファンクを軸にした内容で、当時のシカゴのレーベル・シーンとも深く結びついた1枚になっている。
CurtomはCurtis MayfieldとEddie Thomasが立ち上げたシカゴのソウル・レーベルで、Baby Hueyのような歌い手を世に出す受け皿としても機能していた。本作は、単なる遺作というより、60年代後半のシングルやライヴ感覚を含んだ録音をまとめ、ひとりのシンガーの輪郭をアルバムとして提示したもの、と見るのが自然だろう。後年には拡張盤も出たが、1971年当時のオリジナル盤は、この作品像を最初に形にした版という位置づけになる。
アルバム全体の印象
全体を通してまず目立つのは、声の押し出しの強さだ。Baby Hueyの歌は、細かく整えるタイプというより、言葉の勢いとフレーズの伸びで引っ張る場面が多い。バックの演奏も、ソウルの骨格にファンクの粘りを重ねた作りで、リズム隊が前に出る曲ではグルーヴがはっきり立つ。いわゆる洗練された都会派ソウルとは少し違い、熱量をそのまま記録したような手触りが残る。
また、このアルバムはBaby Hueyのキャリアを知るうえでも重要だ。The Babysitters時代のシングル群からつながる歌い方があり、ソロ作としてはそこから一段大きいスケールで聴こえる。短い生涯のなかで残された録音が、アルバムという形でまとまった意味は大きい。作品単体の完成度だけでなく、アーティストの記録としての重みがある。
「Hard Times」について
代表曲としてまず触れておきたいのが「Hard Times」だ。もともとシングル「Listen to Me / Hard Times」として出ていた曲で、本作にも収録されている。タイトル通り、生活の厳しさや切迫感を抱えた内容で、Baby Hueyの歌がそのまま感情の圧力になっている。声をまっすぐ押し出す場面と、バンドが反復で支える場面の往復がはっきりしていて、曲の構造自体はシンプルでも、聴感はかなり濃い。
この曲では、ソウルの語り口とファンクの反復が自然に接続している。演奏の土台はタイトだが、歌はそこからはみ出すように進む。ヒット曲として広く知られるタイプではないものの、Baby Hueyという歌い手の性格を最も端的に示す1曲として扱われることが多い。アルバムを通して聴くと、ここで示された緊張感がほかの曲にも波及しているのがわかる。
「Listen to Me」について
もう1曲、シングル表題曲の「Listen to Me」も重要だ。こちらは「Hard Times」と対になる存在で、Baby Hueyの歌の押しの強さがより前面に出る。曲名どおり、聴き手に向けて声を届ける姿勢が明確で、フロントマンとしての存在感がそのまま録音に残っている。シングルで先に出ていた曲がアルバムに組み込まれているため、本作は単発の録音集ではなく、彼の活動の中核をまとめた編集盤的な性格も持つ。
この曲を聴くと、Baby Hueyが当時のシカゴ・ソウルの文脈にいながら、よりざらついた、より大きな声の持ち主だったことが伝わる。Curtom周辺の作品に通じるファンクの感触はありつつ、声の圧が前に出るぶん、同じレーベルの他作よりも荒い手触りが残る。そこが本作の個性でもある。
収録曲と文脈
本作は、Baby HueyがThe Babysitters名義で残した60年代の録音群とは別に、ソロ名義での存在感をまとめて確認できる点が大きい。The Babysitters時代の「Monkey Man」「Beg Me」「Messin' with the Kid」「Just being Careful」といった録音で見えていた人物像が、アルバムではより広いレンジで展開される。シングル曲の再収録も含めて、彼の録音を後から辿る入口として機能している。
同時代のシカゴ・ソウルという点では、Curtis Mayfield周辺の作品と並べて語られることが多い。だが、Baby Hueyは洗練よりも、声量と勢い、バンドとのぶつかり合いに特徴がある。ファンクの側面を強めに感じる瞬間もあるが、根っこはソウル・シンガーの表現にある。短命ゆえに作品数は少ないが、この1枚で人物像はかなりはっきり立つ。
オリジナル盤としての位置づけ
1971年のUSオリジナル盤は、Baby Hueyの作品世界を最初に提示した版だ。のちに拡張版が出ているが、まずはこのオリジナル盤が基準になる。亡くなった翌年に出たアルバムという事情もあり、作品としては完成された新作というより、残された録音をどう並べるかが重要だったはずだ。そのため、曲ごとのまとまりだけでなく、ひとりの歌い手の記録として聴くと、輪郭がより見えやすい。
『The Baby Huey Story - The Living Legend』は、ヒット曲中心のソウル盤とは少し違い、人物の声そのものを聴かせるアルバムだ。Baby Hueyの短いキャリア、シカゴのCurtomという場、そして「Hard Times」「Listen to Me」のような代表曲が、そのまま作品の核になっている。ソウルとファンクの境目にあるような録音の熱が、今もこの1枚の中心にある。
トラックリスト
- A1 Listen To Me 6:35
- A2 Mama Get Yourself Together 6:10
- A3 A Change Is Going To Come 9:23
- B1 Mighty, Mighty 2:45
- B2 Hard Times 3:19
- B3 California Dreaming 4:43
- B4 Running 3:36
- B5 One Dragon Two Dragon 4:02
動画
- Listen To Me
- Mama Get Yourself Together
- A Change Is Going To Come
- Mighty Mighty
- Hard Times
- California Dreamin'
- Running
- One Dragon Two Dragon