B.B. King - Completely Well (1969)
B.B. King 1969

B.B. King - Completely Well (1969)

Blues Electric Blues

B.B. King『Completely Well』——“The Thrill Is Gone”で広く届いた1969年作

B.B. Kingの『Completely Well』は、1969年にUSのBlueswayから出たアルバムだ。B.B. Kingという名前を、ブルースの枠を越えて広く知らしめた作品として語られることが多く、この時期の彼がどこへ向かっていたのかをはっきり示す一枚でもある。もともとR&Bの文脈で活動してきたキングが、1960年代後半の空気の中で、より大きな聴衆に届く形へと自身の表現を整えていく、その流れの中心にある作品と見てよさそうだ。

B.B. Kingは、ミシシッピ生まれのアメリカン・ブルース・シンガー/ギタリスト/ソングライターで、“Blues Boy”の略としてのB.B.で知られる。エレクトリック・ブルースの代表的存在であり、Albert KingやFreddie Kingと並んで“三大キング”と呼ばれることもある。この『Completely Well』が出た1969年は、彼がすでに長いキャリアを重ねた後期の重要局面で、ロック世代の聴衆にも自然に届く位置へ入っていった時期でもある。

アルバム全体の位置づけ

この時代のB.B. Kingは、単に伝統的なブルースを守る人というより、時代に合わせて音の輪郭を広げていく存在だった。1968年にはニューポート・フォーク・フェスティバルやFillmore Westにも出演し、同時代のロック・アーティストたちと同じ舞台に立っている。『Completely Well』は、その接点が作品として定着したもののひとつで、ブルースの語法を保ちながら、当時のメインストリームにも届く録音になっている。

レーベルはBluesway。ABC傘下で1960年代後半に展開されたブルース系レーベルで、Jimmy ReedやJohn Lee Hooker、Otis Spannらの作品も出しているが、なかでもB.B. Kingは最大の成功例だった。ブルース専門の枠に収めるというより、ブルースをより広い市場へ運ぶ役割を担ったレーベルで、このアルバムもその流れにきれいに乗っている。

聴きどころ1:「The Thrill Is Gone」

このアルバムを語るうえで外せないのが「The Thrill Is Gone」だ。B.B. Kingの代表曲としてあまりにも有名で、オリジナルのアルバム収録曲としても、この作品の印象を決定づけている。曲自体は古いブルースの感覚を持ちながら、ここではストリングスを含む整ったアレンジと、B.B.のギターの一音一音が前に出る構成が印象的だ。

歌の内容は、失われた関係を静かに受け止めるものだが、B.B.の歌唱は感情を過剰に押し出さず、淡々とした重みを保っている。ギターも派手に鳴らすというより、フレーズの間合いで語るタイプで、いわゆる“弾きすぎない”美学がはっきり出ている。結果として、この曲はブルースの定番でありながら、当時のポップ・チャートにも届く普遍性を持った一曲として機能している。

聴きどころ2:アルバムに通るB.B.のギターと歌

『Completely Well』の面白さは、ヒット曲だけでなく、アルバム全体でB.B.の歌とギターの役割分担がよく見えるところにある。B.B. Kingは速弾きで圧倒するタイプではなく、ビブラートのかかった持続音、短い返し、歌の隙間に入るギターの応答で存在感を作る。このアルバムでも、その持ち味がよく整理されている。

ボーカルは、若いブルースマンの荒さよりも、長年の現場で鍛えられた落ち着きが前に出る。言葉を強く投げる場面でも、音程や息の置き方に余裕があるため、曲ごとの感情がはっきり伝わる。エレクトリック・ブルースの中でも、シカゴ・ブルースの直線的な推進力とは少し違い、B.B.ならではの“歌とギターの会話”が中心にある作品だと受け取りやすい。

1969年という時代の中で

1969年は、ブルースが再評価され、ロックの側からも強く参照されていた時期だ。英国や米国の若いロック・ミュージシャンたちが先輩ブルースマンを掘り起こし、その影響が再び表舞台に戻ってきた。B.B. Kingはその文脈の受け手であると同時に、中心人物として再び前景化した存在でもある。『Completely Well』は、そうした時代の空気の中で、ブルースが古い形式に留まらず、現役の音楽として聴かれていたことを示す記録になっている。

なお、盤としてはUS盤で、Columbia Santa Mariaプレスのバリエーションが確認されており、ラベル表記やジャケット仕様にも当時の流通盤らしさがある。ラミネート加工のゲートフォールド・スリーブという点も、1960年代末のLPらしい作りだ。作品そのものはもちろん、当時のアルバムとしての物理的な存在感も含めて、B.B. Kingの代表期を支える一枚と言えそうだ。

まとめ

『Completely Well』は、B.B. Kingが長く積み上げてきたブルースの語法を、そのままの形で閉じ込めた作品というより、1969年の時点で最も広い場所に届く形へ整えたアルバムだ。「The Thrill Is Gone」の存在で知られる一方、アルバム全体を通しても、歌とギターのバランス、抑制の効いた表現、エレクトリック・ブルースの現代化がきちんと見える。B.B. Kingのキャリアの中でも、重要な転換点として扱われるのは自然だろう。

トラックリスト

  1. A1 So Excited 5:34
  2. A2 No Good 4:35
  3. A3 You're Losin' Me 4:54
  4. A4 What Happened 4:41
  5. A5 Confessin' The Blues 4:56
  6. B1 Key To My Kingdom 3:18
  7. B2 Cryin' Won't Help You Now 6:30
  8. B3 You're Mean 9:39
  9. B4 The Thrill Is Gone 5:30

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