Beach Bunny - Honeymoon (2020)
Beach Bunny 2020

Beach Bunny - Honeymoon (2020)

Rock Indie Rock Emo

Beach Bunny『Honeymoon』について

Beach Bunnyの『Honeymoon』は、2020年にリリースされた作品で、シカゴを拠点に活動するインディー/パワーポップ・プロジェクトの存在感を広く印象づけたタイトルだ。中心人物はLili Trifilioで、もともとは2015年にソロ・プロジェクトとして始まり、2017年にバンド編成へ移行している。US盤はMom + Popからのリリースで、ライト・ブルーのヴァイナルにポスターが付属する仕様。作品全体としては、インディー・ロックの軽快さと、エモ由来の感情の出し方が同じ場所で鳴っているのが特徴的だ。

Beach Bunnyは、同時代のインディー・ロックやベッドルーム・ポップの感触を持ちながら、演奏の輪郭はかなり明快だ。ギターのフック、はっきりしたメロディ、歌詞の切り口が前に出るタイプで、2020年という時期にあっても、音の作りは比較的ストレート。『Honeymoon』は、そのバンドの基本形を分かりやすく示すアルバムとして位置づけられる作品に見える。

作品全体の印象

アルバムを通してまず目立つのは、曲ごとの立ち上がりの速さだ。イントロからすぐに歌とリフが前へ出て、サビで一気に開く構成が多い。演奏は過度に厚くせず、リズム隊とギターの役割が整理されているため、Lili Trifilioのボーカルが埋もれない。声の運びは感情を押しつけるというより、言葉をそのまま前に出す感触が強く、そこがこの作品の聴きやすさにつながっている。

ジャンル表記としてはインディー・ロック、エモが並ぶが、実際の聴感では、90年代以降のギターポップや、2010年代後半のUSインディーに近い整理された鳴りがある。比較対象として名前を挙げるなら、同世代のギターロック勢や、メロディ重視のインディー・ポップに接続する部分がある。ただし、Beach Bunnyはサウンドを大仰にしすぎず、曲の長さや展開も含めて、日常の感情をそのまま差し出すような作りに寄っている。

注目曲「Cloud 9」

『Honeymoon』を語るうえで外せないのが「Cloud 9」だろう。アルバムの中でも特に広く知られた曲で、Beach Bunnyの名前を決定づけた代表曲のひとつとして扱われている。ギターの刻みとストレートなビートの上に、恋愛感情の高揚と不安定さがそのまま乗る構成で、サビに向かう推進力がはっきりしている。メロディの引っかかりが強く、耳に残るフレーズが早い段階で出てくるのもこの曲の強みだ。

聴いていると、勢いだけで押し切るタイプではなく、細かい言葉の選び方で感情の揺れを見せていく曲だと分かる。サウンド自体は明快でも、内容は単純ではない。そのバランスが、Beach Bunnyの楽曲がポップに聴こえながらも、単なる軽さで終わらない理由になっているように思える。

注目曲「Prom Queen」

もうひとつの代表曲としてよく挙がるのが「Prom Queen」だ。こちらは、外見や他者の視線にまつわる感覚を、かなり直接的に切り取った曲として印象に残る。ギターは明るく前へ進むのに、歌の中身は自己像の不安や比較意識に触れていて、その落差が曲の輪郭を強くしている。Beach Bunnyの持ち味である、明るいコード進行と内省的な歌詞の同居が分かりやすい一曲だ。

この曲は、エモ的な感情の表し方を、インディー・ポップの形式に落とし込んだ例としても見やすい。大きく叫ぶのではなく、日常語のまま気持ちを置いていく感じがあるため、派手さよりも具体性が残る。アルバム全体の中でも、Beach Bunnyが何を歌い、どんな温度で鳴らしているのかをつかみやすい場面になっている。

Beach Bunnyにとっての『Honeymoon』

この作品は、Beach Bunnyがソロ・プロジェクトからバンドへと形を変えたあと、その輪郭を広く示したアルバムとして見ることができる。Lili Trifilioの書く曲が、個人的な感情をそのまま運ぶだけでなく、バンドの演奏でしっかり支えられている点が重要だ。結果として、曲の強さがボーカル頼みになりすぎず、アンサンブルとしてのまとまりも感じられる。

2020年のUSインディー・ロックの文脈で見ると、『Honeymoon』は、メロディの分かりやすさと感情表現の率直さが両立した一枚として位置づけやすい。Mom + Popからのリリースという点も含め、インディーの現場から広く届いていくタイプの作品だったことがうかがえる。ライト・ブルー・ヴァイナルという物理仕様も、作品の見た目の印象をやわらかくしていて、盤としての存在感もある。

『Honeymoon』は、Beach Bunnyの初期の到達点として、そして「Cloud 9」や「Prom Queen」といった曲を通じてグループの名前を広げた作品として、今でも参照されやすいアルバムだと言えそうだ。

トラックリスト

  1. A1 Promises
  2. A2 Cuffing Season
  3. A3 April
  4. A4 Rearview
  5. B1 Ms. California
  6. B2 Colorblind
  7. B3 Racetrack
  8. B4 Dream Boy
  9. B5 Cloud 9

動画

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