Bill Bruford's Earthworks - Earthworks (1987)
Bill Bruford's Earthworks 1987

Bill Bruford's Earthworks - Earthworks (1987)

Jazz Fusion Contemporary Jazz

Bill Bruford’s Earthworks『Earthworks』について

1987年にUKのEditions EGから登場した、Bill Bruford’s Earthworks名義のデビュー作。ジャズの枠組みの中に、ロック由来の推進力と即興の緊張感を持ち込んだ作品として知られている。バンド名の通り、中心にいるのはドラマーのBill Brufordで、彼にとってはプログレッシブ・ロックの大舞台で培った感覚を、より小編成のインタープレイへと移し替えた重要な一枚といえる。

この作品は1986年10月にロンドンのTerminal 24 Studiosで録音され、ミックスはイングランドのケンブリッジにあるSpaceward Studiosで行われた。TownhouseでDirect Metal Masteringが施されており、当時のUK盤らしい整った音像も印象に残る。レーベルはEditions EG、カタログ番号はEGED 48。Editions EGはE.G. Recordsの傘下にあったレーベルで、この時期の英国の先鋭的なジャズや実験音楽とも近い空気を持つリリースをいくつか送り出している。

Bill Brufordにとっての位置づけ

Bill Brufordは、YesやKing Crimsonで知られるドラマーだが、Earthworksはそうしたロック側の経歴をそのままなぞるものではない。むしろ、アコースティックなジャズの編成の中で、彼のリズム設計やフレーズの切り方がどう機能するかを示す場になっている。1986年に結成されたこのバンドは、2009年まで活動を続けた長寿ユニットであり、最初の『Earthworks』はその出発点としての意味が大きい。

メンバーにはIain Ballamy、Mick Hutton、Tim Harriesなどが名を連ね、のちにTim Garland、Django Bates、Patrick Clahar、Mark Hodgson、Steve Hamiltonらも参加していく。初期の編成では、Brufordのドラミングに対して、管楽器とベースがどのように応答するかが聴きどころになっている。いわゆるリーダー作というより、バンド全体の対話を前に出した作品という印象が強い。

作品全体の聴こえ方

全体としては、拍子感の明確さと即興の流動性が同居している。Brufordの演奏は、単に手数が多いというより、音の置き方がはっきりしていて、リズムの輪郭を崩さないまま細かな変化を入れてくる。そのため、フュージョンの流れにありながら、過度に滑らかにならず、むしろ各楽器の発音が見えやすい。Iain Ballamyのサックスは、旋律をなぞる場面でも、音を少しずらして入る場面でも、線の細さと芯の両方が感じられる。

この時期の英国ジャズには、米国のクロスオーバーとは少し違う、構成の緻密さや硬質さが見られることがあるが、『Earthworks』もその文脈に置いて聴くとわかりやすい。派手なソロの応酬だけで押し切るのではなく、短いモチーフの反復や、編成の隙間を生かした展開が目立つ。結果として、コンテンポラリー・ジャズとしての整った作りと、フュージョン的な推進力が両立している。

注目したいポイント:リズムの組み立て

まず耳が向くのは、Brufordのドラムが曲全体の重心をどう作るかという点だ。ロックの文脈で語られがちなドラマーだが、この作品ではビートを強く前に出すというより、フレーズの区切りやアクセントで音楽の流れを組み立てている。ベースとの絡みも単純な土台ではなく、細かく呼吸を合わせながら推進していく感じがある。

このリズムの作り方は、同時代の英国ジャズやフュージョンを聴くときの基準にもなる。たとえば、よりエレクトリックな方向へ振れた作品と比べると、『Earthworks』は生音の輪郭が保たれていて、各パートの役割が見えやすい。派手さよりも、アンサンブルの精度に耳がいくタイプの一枚といえる。

注目したいポイント:Iain Ballamyの管楽器

もうひとつの核はIain Ballamyのサックス。音数で押すのではなく、フレーズの始点と終点を明確にしながら、曲の隙間に入り込んでいく。Brufordの複雑なリズムに対して、必要以上にぶつからず、それでも存在感は薄くならない。このバランス感覚が、アルバム全体の聴きやすさを支えている。

Ballamyの吹き方は、メロディを前面に出す場面でも、即興で輪郭を崩す場面でも、どこか整理された印象がある。だからこそ、曲が展開しても散漫になりにくい。Earthworksというバンド名が示すように、地面のような安定感と、そこから立ち上がる動きの両方が見えてくる。

音質と盤の印象

このUK盤はDirect Metal Masteringによるカッティングで、輪郭のはっきりした再生が想像しやすい。1987年当時のオリジナル盤として聴くなら、レーベルの時代性も含めて、英国産ジャズ・フュージョンの一断面として捉えやすい。なお、フランスのFnacで流通した輸入盤には1987年10月にゴールドの価格コード・ステッカーが付いた個体があったとされ、初期流通の姿を示す細かな点として興味深い。

まとめ

『Earthworks』は、Bill Brufordがドラマーとしての個性を、ロックからジャズへ単純移植するのではなく、アンサンブルの中で再構築した作品。1987年という時点で、英国ジャズの緻密さとフュージョンの推進力を、比較的コンパクトな編成でまとめ上げている点が見どころだ。派手な看板曲で引っ張るというより、全編を通してバンドの会話が続くタイプのアルバムとして残っている。

トラックリスト

  1. A1 Thud 4:10
  2. A2 Making A Song And Dance 5:52
  3. A3 Up North 5:19
  4. A4 Pressure 7:25
  5. B1 My Heart Declares A Holiday 4:35
  6. B2 Emotional Shirt 4:45
  7. B3 It Needn't End In Tears 5:04
  8. B4 The Shepherd Is Eternal 1:50
  9. B5 Bridge Of Inhibition 4:15

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