Billie Eilish - Happier Than Ever (2021)
Billie Eilish 2021

Billie Eilish - Happier Than Ever (2021)

Pop Indie Pop

Billie Eilish『Happier Than Ever』レビュー

Billie Eilishの『Happier Than Ever』は、2021年に登場した2作目のフルアルバム。前作『When We All Fall Asleep, Where Do We Go?』で一気に世界的な存在になった彼女が、その勢いを保ったまま、より広いレンジの表現を見せた作品として位置づけられる。制作は兄のFinneasとの共同作業が軸で、密室感のあるポップ、ミニマルなビート、息の混じるボーカル処理といった、Billie Eilishらしい要素がこの時点でもしっかり残っている。

このレコードはUSA & Europe仕様、Darkroomからの2021年盤で、100% Black Recycled Vinylという表記もある。全16曲が通し番号で並び、アルバムとしての流れがはっきりした構成。ポップを土台にしながら、インディーポップ寄りの距離感や、音数を絞ったアレンジが前面に出る場面も多い。Billie Eilishというアーティストの、10代の終わりから20代の入口へ進むタイミングの記録としても見やすい1枚だと思う。

作品全体の印象

『Happier Than Ever』は、前作よりも曲ごとの表情がはっきりしている。静かな語り口で始まり、途中から強いバンドサウンドへ切り替わる曲もあれば、淡々とした打ち込みの上で感情を抑えめに置いていく曲もある。Billie Eilishの作品に共通する、近い距離で耳元に来るような歌い方はそのままに、今回はアルバム全体の起伏が少し大きい。

実際に聴くと、低音の扱いが非常に重要な作品だとわかる。ビートが前に出る曲でも、音を詰め込みすぎず、空白を残したまま進む場面が多い。そこにBillieの声が乗ることで、感情を強く押し出すというより、抑えたまま温度だけを上げていくような感触になる。派手な装飾よりも、音の配置で引っ張るタイプのアルバム。

代表曲「Happier Than Ever」

タイトル曲の「Happier Than Ever」は、このアルバムを語るうえで外せない1曲。前半は静かな独白のように進み、語りかけるようなボーカルが中心になる。そこから後半で一気にギター主体の大きな展開へ切り替わる構成で、アルバム全体の中でも特に振れ幅が大きい。

この曲は、Billie Eilishがそれまで積み上げてきた内省的なポップの手法を、より明確な形で開いたものとして聴ける。小さく始めて大きく終わる設計はわかりやすいが、単純な盛り上がりではなく、言葉の重さが積み上がった結果として音量が上がる感じがある。2021年のBillieを象徴する曲として扱われるのも自然だろう。

「Therefore I Am」とのつながり

このアルバムの流れを考えると、先行シングル「Therefore I Am」も重要な位置にある。自己主張の強さを前面に出した曲で、Billieのイメージにある受け身の印象だけでは捉えきれない部分を示している。『Happier Than Ever』では、そうした態度がさらに整理され、感情の出し方に幅が出ているように感じる。

前作時点では、ベッドルーム的な密度やダークな質感が強く語られがちだったが、この作品ではポップとしての輪郭がより明確だ。とはいえ、明るく開けた方向へ寄り切るわけではなく、あくまでBillie Eilishらしい陰影を保ったまま、表現の幅を広げている。そのバランスが、このアルバムの聴きどころのひとつ。

同時代性と位置づけ

2021年という時期を考えると、ポップの主流の中でも、過度にきらびやかに仕上げるより、音数や空間をコントロールして存在感を出す流れが強かった。Billie Eilishはその文脈の中でも特に目立つ存在で、インディーポップの感覚を大きなポップ作品へ持ち込む役割を担っていたように見える。LordeやLana Del Reyのように、ポップの中心から少し距離を取った質感を持つアーティストと比較されることも多いが、この作品ではより明確に「大きなポップ作品」としての完成度が意識されている。

Billie Eilish本人にとっては、デビュー作の成功を経て、その先に何を見せるかを示したアルバムでもある。若い世代の感覚を代表する存在として消費されるだけでなく、曲の構成、声の使い方、静と動の切り替えまで含めて、作家性をはっきり提示した1作という印象が残る。

収録盤としての特徴

この盤はBlack Recycled Vinyl仕様で、16曲を通して収録。アルバムの流れをそのまま追いやすい構成になっている。曲順の意味が大きい作品なので、1曲ごとのヒット性だけでなく、前後関係を含めて聴くと印象が変わりやすい。Billie Eilishの作品らしく、単曲よりもアルバム単位でのまとまりが強い1枚だと言えそうだ。

『Happier Than Ever』は、Billie Eilishのポップとしての強度と、内向きな視線の両方が同居した作品。2021年のメジャー・ポップの中でも、音の隙間と感情の圧を同時に扱ったアルバムとして、今なお見返しやすい存在だと思う。

トラックリスト

  1. A1 Getting Older 4:04
  2. A2 I Didn't Change My Number 2:38
  3. A3 Billie Bossa Nova 3:16
  4. A4 My Future 3:30
  5. B5 Oxytocin 3:30
  6. B6 Goldwing 2:31
  7. B7 Lost Cause 3:32
  8. B8 Halley's Comet 3:54
  9. C9 Not My Responsibility 3:47
  10. C10 Overheated 3:34
  11. C11 Everybody Dies 3:26
  12. C12 Your Power 4:05
  13. D13 NDA 3:15
  14. D14 Therefore I Am 2:53
  15. D15 Happier Than Ever 4:58
  16. D16 Male Fantasy 3:14

動画

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