Black Mountain - In The Future (2008)
Black Mountain『In The Future』について
Black Mountainは、カナダ・バンクーバー出身のサイケデリック・ロック・バンドで、2003年にJerk With A Bombのメンバーを中心に結成された。『In The Future』は2008年にJagjaguwarから発表された作品で、バンドの初期の到達点を示す一枚として位置づけられる。ブルース・ロック、スペース・ロック、サイケデリック・ロック、インディー・ロックという複数の要素を含みながら、曲ごとに温度差のある構成を持つアルバムでもある。
Black Mountainの音楽は、70年代ロックの骨格を土台にしつつ、現代的な録音感覚と長尺の展開を組み合わせるところに特徴がある。Stephen McBeanとAmber Webberの歌唱、Jeremy Schmidtのキーボード、Joshua Wellsのドラムを中心に、複数のメンバーが分厚い音像を作っていく流れ。単に重いだけでなく、メロディとリフの往復がはっきりしている点がこの作品でも確認できる。
作品の位置づけ
『In The Future』は、バンドのキャリアの中でも、サウンドの輪郭がかなり明確になった時期の作品として捉えやすい。前作までで見せていたラフなバンド感よりも、曲の長さ、曲順の流れ、録音の重ね方に意識が向いている印象がある。結果として、1曲ごとの個性と、アルバム全体の統一感が両立している。
録音はThe Factory、The Hive、Sunset Sound、Argyle Hotelと複数の場所で行われ、最終的にHipposonicでミックスされている。こうした分散した制作環境は、曲ごとの質感の違いにもつながっているように感じられる。加えて、LPにはダウンロード用の案内紙が同封され、歌詞とクレジットの入ったインサートも付属する。2008年当時のフィジカルとデジタルの接点が、パッケージにも表れている。
アルバム全体の聴きどころ
この作品は、静かな導入から一気に音圧を上げる場面まで、曲の振れ幅が大きい。ブラック・サバス系の重さを思わせるリフ、フロントに出る女性ボーカル、スペース・ロック的な広がり、インディー・ロックの乾いた運びが、1枚の中で自然につながっている。とはいえ、ただ要素を並べただけではなく、各曲の推進力が強いため、長尺でも流れが途切れにくい。
同時代の文脈で見ると、2000年代後半のサイケデリック・ロック再評価の流れの中に置ける作品でもある。The Black AngelsやComets on Fireのような重心の低いサイケデリック・バンド、あるいはMonotonixのような荒々しいライブ感を重視するバンドと比較されることもあるが、Black Mountainはそこにツインボーカル的な構図と、曲の展開を整理する感覚を持ち込んでいる。
注目曲
“Stormy High”
アルバムの中でも代表曲として触れられることの多い曲。リフの押し出しがはっきりしていて、バンドの持つハードな面が前面に出る。Stephen McBeanのボーカルは低く構え、そこにAmber Webberの声が入ることで、単なる直線的なロック曲では終わらない。サビに向かう際の持ち上がり方もわかりやすく、アルバム全体の入口として機能しやすい一曲。
この曲では、ギターの厚みとリズム隊の踏み込みがそのまま楽曲の説得力になっている。派手な装飾よりも、リフの反復と声の対比で引っ張る作りで、Black Mountainの基本形を短い時間で示している感じがある。
“Tyrants”
長尺で進んでいくタイプの楽曲で、このバンドのスペース・ロック的な側面がよく出る。前半の重たいグルーヴから、徐々に空間の広がりへ移っていく構成で、単なるジャムではなく、展開の設計が見える。キーボードの使い方も印象に残りやすく、音の層が増えるにつれて曲の景色が変わっていく。
この曲を聴くと、Black Mountainが70年代ハードロックの再現だけを目指していないことがわかる。重さを保ったまま、宇宙的な広がりへ移行する流れがあり、アルバムの中でも特にバンドの個性が出やすい。
“Bright Lights”
比較的メロディの輪郭が見えやすい曲として挙げやすい。リフの押し出しだけでなく、歌の流れが前に出てくるため、アルバムの中で耳に残りやすい位置にある。音の分厚さは保ちながら、曲としてのまとまりが強い。
こうした曲があることで、『In The Future』は重い曲だけの作品にはなっていない。硬質なギターと歌の親しみやすさが同居していて、Black Mountainの幅を示す役割を持っている。
まとめ
『In The Future』は、Black Mountainの持つブルース・ロック的な骨格、サイケデリックな拡張性、インディー・ロックの現代性が、2008年時点でかなり整理された形でまとまった作品。録音場所の分散や、LPへのダウンロード案内の同封といった当時のリリース事情も含めて、時代の空気がよく反映されている。曲ごとの性格がはっきりしているため、アルバム単位でも、代表曲単位でも印象を残しやすい一枚として記憶されやすい。
トラックリスト
- A1 Stormy High 4:33
- A2 Angels 3:07
- A3 Tyrants 8:02
- B1 Wucan 6:03
- B2 Stay Free 4:30
- B3 Queens Will Play 5:16
- B4 Evil Ways 3:26
- C1 Wild Wind 1:42
- C2 Bright Lights 16:41
- D Night Walks 3:56
動画
- Black Mountain - Stormy High
- Black Mountain - Angels
- Black Mountain - Tyrants
- Black Mountain - Wucan
- Black Mountain - Stay Free
- Black Mountain - Queens Will Play
- Black Mountain - Evil Ways
- Black Mountain - Wild Wind
- Black Mountain - Bright Lights FULL VERSION
- Black Mountain Night Walks