Bunny Wailer - Sings The Wailers (1980)
Bunny Wailer『Sings The Wailers』について
1980年にジャマイカでリリースされたBunny Wailerの『Sings The Wailers』は、タイトルの通り、彼がThe Wailers時代に関わってきた楽曲群をあらためて自分の声でまとめた作品だ。レゲエ、なかでもルーツ・レゲエの流れの中で聴くと、Bunny Wailerという人物の立ち位置がかなりはっきり見えてくる1枚である。The Wailersのオリジナル・メンバーとして知られる彼が、グループの歴史を自分の視点からたどり直す内容で、ソロ活動の中でも重要な位置を占める作品として受け止められている。
録音とミックスはHarry J's Studioで行われている。ジャマイカのレゲエ史を語るうえで外せないスタジオのひとつで、当時の制作環境をそのまま反映したような、硬質で芯のある鳴りが印象に残る。レーベルはBunny Wailer自身のSolomonic。自分の作品を自分のレーベルから出すという形も含めて、彼の独立した姿勢がそのまま表れている。
作品の位置づけ
Bunny Wailerは1947年生まれ。Bob Marley、Peter ToshとともにThe Wailersを結成した中心人物のひとりで、グループの初期から重要な役割を担ってきた。のちにソロへ移ってからは、ラスタファリの信条や政治的、精神的なメッセージを軸にした作品を多く残している。その流れの中で『Sings The Wailers』は、単なる回顧盤というより、The Wailersの楽曲をBunny Wailerの声で再配置した作品として聴ける。グループの歴史を知る人ほど、曲の意味合いが少し違って聞こえるはずだ。
同時代のルーツ・レゲエの作品と比べると、ここでは派手な展開よりも、曲の輪郭とメッセージの明確さが前に出る。Bob Marley and The Wailersの広がりのある表現、Peter Toshの鋭い語り口と並べると、Bunny Wailerはより内省的で、信仰や共同体意識を軸に据える傾向が強い。このアルバムでも、その性格はかなりはっきりしている。
Side Aの流れ
収録曲は「Battering Down Sentence」「Pass It On」「Fighting Against Conviction」「The Oppressed Song」「Arise Blackman」などで始まる。Side Aは、The Wailersの初期から中期にかけての曲をBunny Wailerが歌い直す形で進み、政治性と精神性が前面に出る構成だ。タイトルだけでも内容が読み取りやすく、当時のジャマイカ社会の緊張感や、ラスタの視点から見た抵抗の意識がそのまま並ぶ。
とくに「Pass It On」は、The Wailersの文脈を知る人には重要な曲だろう。共有、継承、メッセージの伝達といった要素が曲名にそのまま表れていて、Bunny Wailerがこの作品で何を残そうとしているかが分かりやすい。歌い方も、勢いで押すというより、言葉をひとつずつ置いていくような進め方で、曲の意味が前に出る。
注目曲「Battering Down Sentence」
「Battering Down Sentence」は、アルバムの中でも特にメッセージ性の強い曲として耳に残る。タイトル通り、抑圧や裁きに対する抵抗の感覚が中心にあり、Bunny Wailerの歌声がその緊張を支えている。ここではリズムの推進力に頼り切らず、言葉の重みで押していく印象が強い。ルーツ・レゲエらしい骨格の上に、彼の語り口がきれいに乗る。
この曲を含むSide Aは、聴き進めるほどに、Bunny WailerがThe Wailersの楽曲を単に懐かしんでいるのではなく、自分の思想を通して再提示していることが分かる。原曲の記憶を持つ人にも、ここでの歌い直しは別の意味を持って届くはずだ。
注目曲「Arise Blackman」
「Arise Blackman」もこの作品の核のひとつだ。黒人としての誇り、目覚め、自己認識をテーマにした曲名で、Bunny Wailerの作品群に通じるラスタ的な視点がそのまま表れている。歌詞の主題がはっきりしているぶん、演奏も必要以上に飾らず、メッセージを前に出す作りになっている。
ここでは、彼の声が説得力の中心になる。強く押し出すというより、落ち着いた重さで言葉を運ぶタイプで、派手さではなく持続する緊張感がある。The Wailersの楽曲を歌うという企画の中でも、この曲はBunny Wailerのソロ作としての輪郭をくっきり示す場面だ。
Side Bと収録曲の見どころ
Side Bには「Burial」「I Stand Predominate」「Walk The Proud Land」「Rule This Land」「I'm The Toughest」が並ぶ。なお、ジャケットとレーベル表記ではSide Bの曲順に誤りがあるとされているが、収録内容そのものはこの5曲で構成される。ここでもテーマは一貫していて、信仰、土地、支配、抵抗といった言葉が並ぶ。
「Walk The Proud Land」は、アルバム全体の中でも比較的イメージが立ちやすい曲だ。誇りを持って歩く、という直線的な表現が、Bunny Wailerの歌唱と相性よく機能している。ルーツ・レゲエの文脈では、こうした言葉の強さがそのまま曲の推進力になることが多いが、この曲もその例に入る。
注目曲「I'm The Toughest」
「I'm The Toughest」は、終盤に置かれたことで存在感が増している。自己主張の強いタイトルだが、単なる威勢の良さではなく、これまでの曲で積み上げてきた姿勢の延長として聞こえる。Bunny Wailerの作品では、強さの表現がそのまま精神的な自立と結びついていることが多く、この曲もその流れの中にある。
演奏面では、派手な装飾よりもリズムの粘りが印象に残る。アルバム後半を締める役割として、曲単体の主張と作品全体のまとめ役が両立している。ここでの「強さ」は、声量や勢いよりも、長く続く姿勢として伝わってくる。
総評
『Sings The Wailers』は、Bunny WailerがThe Wailersの遺産を自分の声で再提示した作品として位置づけられる。1980年という時期に、ジャマイカ制作のルーツ・レゲエとしてまとめられたことも含めて、グループの歴史とソロ作家としての姿勢が重なる1枚だ。ソロの代表作を追ううえでも、The Wailersの楽曲がどのように彼自身の思想へ接続しているかを見るうえでも、重要な記録になっている。
聴きどころは、曲の派手さではなく、Bunny Wailerの歌い回しと、言葉の置き方にある。The Wailersの曲を知っている人には再解釈として、初めて触れる人にはルーツ・レゲエの骨格を知る入口として、それぞれ違う見え方をする作品だろう。
トラックリスト
- A1 Dancing Shoes
- A2 Mellow Mood
- A3 Dreamland
- A4 Keep On Moving
- A5 Hypocrite
- B1 Rule This Land
- B2 Burial
- B3 I Stand Predominate
- B4 Walk The Proud Land
- B5 I'm The Toughest
動画
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Dancing Shoes
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Mellow Mood
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Dreamland
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I Gotta Keep On Moving
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Hypocrite
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Rule This Land
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Burial
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I Stand Predominate
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Walk The Proud Land
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I'm The Toughest