Caravan - Caravan (1969)
Caravan『Caravan』について
Caravanのデビュー作『Caravan』は、1969年に発表されたカンタベリー・シーン初期の重要盤である。バンドはイングランド南東部ケント州ウィットステーブル周辺で結成され、のちにロンドンへ拠点を移した。Wilde Flowersの流れをくむ4人、デイヴ・シンクレア、リチャード・シンクレア、パイ・ヘイスティングス、リチャード・コフランを中心にまとまり、ジャズ、サイケデリック、ブルース、クラシックの要素を混ぜた独自の音楽を作り上げていく。その出発点にあたるのがこの1枚だ。
この日本盤は1982年のリリースで、レーベルはPolydor、品番は23MM 0134。録音はロンドンのAdvision Studiosで1968年10月に行われたとされる。つまり、作品そのものは60年代末の空気をまとったまま、80年代初頭に日本で再登場した盤ということになる。盤のリリース年とオリジナル年がずれているため、聴くときは1969年作品として捉えるのが自然だ。
カンタベリー・サウンドの原型
Caravanは、後年のプログレッシブ・ロックを語るときに必ず名前が挙がるバンドのひとつだが、このデビュー作ではまだ大仰な組曲路線よりも、バンドの演奏感と曲作りの手触りが前面に出る。AllMusicでも、ソフト・マシーンや初期ピンク・フロイドと並べて、まだ輪郭を作っていた時代のプログレの土台に位置づけられている。実際、耳を通すと、ロックの基本形の上にオルガンやフルートが重なり、曲が進むにつれてリズムや和声が少しずつずれていく構成が目立つ。
代表曲としてよく挙げられるのは「Place of My Own」「Magic Man」、そして9分を超える「Where but for Caravan Would I?」あたりだ。特にデイヴ・シンクレアのオルガンは、単なる伴奏ではなく曲の骨格を作る役割を担っている。そこにリチャード・シンクレアのベースと歌、パイ・ヘイスティングスのギターが絡み、ブルースロックの輪郭を保ちながら、当時としてはかなり細かいアレンジへ進んでいく。
作品の位置づけ
Caravanの初期キャリアにおいて、このアルバムは出発点そのものだ。のちに『In the Land of Grey and Pink』で評価を大きく高めるが、その前段階として、すでにこの時点でバンドの個性はかなりはっきりしている。派手なヒット作ではないものの、カンタベリー・シーンの中で「こういう音が出せるバンドがいた」という事実を示した役割は大きい。
同時代の英国ロックと比べると、よりジャズ寄りの感覚を持ちながら、サイケデリック・ロックの浮遊感も残している。ソフト・マシーンほど実験的に振り切らず、ピンク・フロイドほど長い叙情にも寄り切らない。その中間にある、演奏の密度と曲の親しみやすさが同居した盤として聴ける。
日本盤としてのポイント
この1982年の日本盤は、オリジナル期からかなり時間が経っている再登場盤である。PolyGram系の整理が進んだ時代のPolydor盤で、表記上はManufactured by Polydor K.K., Japan、KA 8202の記載がある。こうした日本盤は、当時の国内リスナーが英プログレの初期作へ触れる入口にもなったはずだ。オリジナルの60年代末盤に比べると、80年代の日本盤は入手しやすさの面で意味があり、カタログとしての役割も大きい。
音の印象としては、録音自体が古いので、現代的な分離感や低域の厚みを求めるタイプではない。だが、そのぶん楽器の配置や演奏の呼吸が見えやすく、オルガン、ベース、ドラム、歌が近い距離でぶつかる感触が残る。派手さよりも、バンドがスタジオで組み上げた流れを追う面白さがある。
まとめ
『Caravan』は、Caravanというバンドの出発点であり、カンタベリー・シーンの骨格を早い段階で示した作品だ。ブルースロックを土台にしつつ、ジャズやサイケデリックの要素を自然に混ぜ込んだ作りで、のちの長いキャリアの原型も見える。ヒット曲中心のアルバムではないが、「Place of My Own」や「Where but for Caravan Would I?」のような曲に、この時期のバンドの方向性がよく出ている。1969年の英国ロックが、プログレへ向かう途中でどんな形をしていたかを確かめるうえで、外せない1枚である。
トラックリスト
- A1 Place Of My Own
- A2 Ride
- A3 Policeman
- A4 Love Song With Flute
- A5 Cecil Rons
- B1 Magic Man
- B2 Grandma`s Lawn
- B3 Where But For Caravan World I