Cast - Magic Hour (1999)
Cast『Magic Hour』(1999) レコード紹介
Castの3作目にあたる『Magic Hour』は、1999年にUKのPolydorから出たアルバムで、バンドのキャリアの中でも90年代Britpopの終盤をきちんと刻んだ1枚だ。Castはリバプール出身のロックバンドで、The La’sのJohn Powerを中心に結成され、90年代の英国ロック・シーンでメロディの強さとバンド感のある演奏で存在感を出してきた。この作品も、その流れを受けつつ、より骨太なギター・ロックとしてまとまっている印象がある。
1999年という年は、Britpopの勢いが落ち着き、当時の英国ロックが次の形を探していた時期でもある。そうした中での『Magic Hour』は、華やかさだけを前面に出すのではなく、曲の輪郭や演奏のまとまりを重視したアルバムとして聴こえる。Castらしい、歌えるメロディとまっすぐなバンドサウンドが軸にあり、同時代のOasisやOcean Colour Scene、The Charlatansあたりと並べて語られやすい土壌にある作品だ。
作品の位置づけ
Castは1990年代前半から中盤にかけてアルバムを重ね、Britpop期の代表格のひとつとして扱われてきた。『Magic Hour』はその中盤以降の到達点のひとつで、前作までで築いた「歌えるロックバンド」という輪郭を保ちながら、より落ち着いた手触りも持っている。派手な話題性より、アルバム全体の流れで聴かせるタイプの一枚という印象が強い。
この盤はUK盤で、Polydorのカタログ番号は547 176-1。1999年当時のオリジナル盤として流通したもので、印刷内袋付き、さらにCastのメーリングリスト用ポストカードが封入されていたとされる。こうした当時のリリース仕様からも、単なる作品発表ではなく、バンドを継続的に追っていたリスナー向けの出し方だったことがうかがえる。
聴きどころ
『Magic Hour』の聴きどころは、まずJohn Powerの声とギターのバランスにある。熱量を押し出しすぎず、かといって引きすぎもしない。リフが前に出る曲でも、サビでしっかり開ける曲でも、演奏が曲の骨格を崩さず支えている。Castのアルバムを通して感じる「バンドで鳴らすロック」の感覚が、この作品でもはっきり残っている。
また、Britpopのアルバムにありがちな過剰な装飾よりも、曲そのものの推進力を優先しているのがこの時期のCastらしいところだ。ギターの刻み、ベースの押し出し、ドラムの直進性が、メロディの分かりやすさと噛み合っている。派手な転調や大仰な構成に頼らず、ロックバンドの基本形で押していく作り。
代表曲としての「Magic Hour」
タイトル曲「Magic Hour」は、このアルバムの顔として扱われることが多い。Castの持ち味である、シンプルなコード進行に乗る伸びのある歌メロが中心で、バンドの輪郭を短い時間でつかみやすい。タイトルにある「Magic Hour」という言葉も、曲調の明るさと少しのノスタルジーをまとめる役割を果たしているように聴こえる。
この曲では、勢いだけで押すのではなく、サビに向かう流れが自然だ。ギターの鳴り方も、90年代後半のUKロックらしい乾いた質感を保ちながら、メロディを邪魔しない。アルバム全体の中でも、CastがBritpopの文脈にいながら、単なる流行追随ではないことを示す1曲として置かれているように見える。
アルバム全体の印象
全体としては、前に出る曲と、少し引いたテンポ感の曲が並び、アルバムとしての流れを作っている。Castの作品に期待される、まっすぐで聴きやすいロックの要素はそのままに、1999年という時期らしく、90年代中盤の勢いをそのまま引きずるのではなく、整理された感触がある。そこがこの作品の特徴になっている。
PolydorのUK盤らしい90年代末の流通物としても、Castのディスコグラフィーを追ううえで重要な位置にある。バンドの初期からの流れを知っていると、ここでの演奏や曲の並びに、活動を続けてきたロックバンドとしての手堅さが見えてくる。Britpopの熱気が一段落した時期に、Castがどの位置にいたかを確認できるアルバムと言える。
盤の仕様について
- アーティスト: Cast
- タイトル: Magic Hour
- リリース年: 1999年
- リリース国: UK
- レーベル: Polydor
- カタログ番号: 547 176-1
- 付属物: Cast mailing-list postcard、印刷内袋
『Magic Hour』は、Castの持つメロディ志向とバンド・ロックとしてのまとまりが、1999年の時点でどう鳴っていたかを確かめやすい一枚だ。Britpopの中核にいたバンドが、時代の変わり目に何を残したか、その輪郭がはっきりしている。
トラックリスト
- A1 Beat Mama
- A2 Compared To You
- A3 She Falls
- A4 Dreamer
- B1 Magic Hour
- B2 Company Man
- B3 Alien
- C1 Higher
- C2 Chasing The Day
- C3 The Feeling Remains
- D1 Burn The Light
- D2 Hideaway