David Bowie - The Man Who Sold The World (1970)
David Bowie 1970

David Bowie - The Man Who Sold The World (1970)

Rock Hard Rock Glam

David Bowie『The Man Who Sold The World』について

David Bowieの『The Man Who Sold The World』は、1970年に制作された3作目のスタジオ・アルバムで、Bowieが70年代の表現を一段深く押し広げていく入口にある作品だ。録音はロンドンのTrident Studiosで1970年4月17日から5月22日にかけて行われ、UK盤としては1971年にMercuryから出ている。グラム・ロックが本格的に広がる直前の空気をまといながら、ハードなバンドサウンドと、Bowieらしい視点のずれた歌詞が同居しているのが、この盤の大きな特徴だ。

オリジナルの米国盤は1970年11月にMercuryから登場しているが、UK盤は翌1971年のリリースで、ジャケットも複数のヴァージョンが存在したことで知られる。現在では1971年のUKカバーが公式ジャケットとして扱われることが多い。今回の盤はMercuryの7桁カタログ番号を持つため、レーベル史の上でも1970年4月以降の仕様に当たる。UKリリースである点も、当時のBowieの立ち位置を考えるうえで重要だ。アメリカ市場先行の形で出たのち、英国で改めて受け止められていった流れが見える。

作品の位置づけ

このアルバムは、後の『Hunky Dory』や『Ziggy Stardust』へ直結する前段階として語られることが多い。まだ決定打としてのキャラクターが固まり切る前で、音楽的にはより重く、演奏はバンド色が強い。Bowieの初期作品の中では、フォーク寄りの感触とハードロック寄りの推進力が近い距離で並んでいる。英国の同時代でいうと、Led ZeppelinやBlack Sabbathのような重量感とは少し違い、歌の主導権が最後までBowie側にあるのが面白いところだ。

聴き進めると、単に重いだけの作品ではないことが分かる。リフの押し出しが強い曲の中にも、フレーズの置き方や声の抜き差しに独特の間がある。実際に通して聴くと、派手な変化球よりも、各曲の輪郭がはっきりしている印象が残る。のちのBowie作品にあるような洗練されたレイヤー感より、演奏の生々しさが前に出る盤だ。

代表曲「The Man Who Sold The World」

タイトル曲は、このアルバムを象徴する1曲だ。曲名だけを見るとSF的なイメージもあるが、実際にはもっと内面に近い感触を持つ。ギターのリフは執拗に繰り返され、そこにBowieの声が淡々と乗る。感情を大きく振りかぶるのではなく、少し距離を置いたまま歌が進むため、歌詞の輪郭がかえって残る構造だ。

後年になってNirvanaのアンプラグドで取り上げられたことで、この曲は世代をまたいで知られるようになった。だがオリジナル盤を聴くと、あの楽曲の核はすでに1970年時点でかなり明確だと分かる。ハードな演奏の上で、Bowieが人物像と視点をずらしながら歌う感じ。グラム・ロックの前夜に、すでにBowie独自の物語の作り方が見えている。

「All the Madmen」とアルバムの重心

「All the Madmen」は、この作品の中でも特に印象が残りやすい曲だ。メロディの運びは比較的わかりやすい一方で、歌詞の主題はかなり重い。アルバム全体に通じる不安定さ、視点のゆらぎがここで濃く出る。演奏は力強いが、単純に押し切るのではなく、曲の中に陰影を残していく。

この曲を含めて聴くと、本作が単なるハードロック盤ではないことがはっきりする。Bowieはこの時点ですでに、ロックの形式を使いながら人物像や世界観を組み立てている。のちのコンセプト志向の作品ほど整理されてはいないが、そのぶん感情や不穏さが直接入ってくる。

「Black Country Rock」「After All」「The Width of a Circle」

「Black Country Rock」は、アルバム内で比較的軽快な動きがある曲だ。リズムの流れがよく、硬質な曲が並ぶ中で耳を変える役割もある。「After All」は、より陰影のある流れが中心で、Bowieの歌声の置き方が曲の温度を決めている。こうした曲があるため、全体が単調にならず、側面の違うBowie像が並ぶ構成になっている。

終盤の「The Width of a Circle」は長尺で、アルバムの中でも特にバンドの熱量が前に出る。展開の多さよりも、演奏の圧と反復で引っ張るタイプの曲だ。ここでは初期Bowieの荒さがそのまま魅力として残っている。後の作品で見られるような構築美とは別の、ライブ感に近い推進力がある。

録音と盤の見どころ

このUK盤は1971年リリースのMercury盤で、オリジナルの米国盤とは時期も流通も異なる。ジャケット違いがある作品としても知られるが、UK盤は現在もっとも基本的な参照先として扱われやすい。Mercuryのロゴやレーベル表記からも、当時の欧米での流通経路が見えてくる。1970年代初頭のMercuryは、すでに国際的なレーベルとして機能しており、Bowieのように国ごとに発売形態が異なる作品を抱えていた。

『The Man Who Sold The World』は、Bowieが70年代に入ってから大きく飛躍していくための足場のようなアルバムでもある。完成された代表作というより、後の変化を予告する要素が各所に散らばっている。だからこそ、のちの名盤群と並べて聴くと、ここで何が始まっていたのかがよく見えてくる。初期Bowieの中でも、特にバンドの手触りと作家性が近い距離で同居した1枚だ。

トラックリスト

  1. A1 The Width Of A Circle 8:07
  2. A2 All The Madmen 5:38
  3. A3 Black Country Rock 3:33
  4. A4 After All 3:52
  5. B1 Running Gun Blues 3:12
  6. B2 Saviour Machine 4:27
  7. B3 She Shook Me Cold 4:13
  8. B4 The Man Who Sold The World 3:58
  9. B5 The Supermen 3:39

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