David Byrne - Music For The Knee Plays (1985)
David Byrne 1985

David Byrne - Music For The Knee Plays (1985)

Rock Jazz Avantgarde Contemporary Jazz

David Byrne「Music For The Knee Plays」について

David Byrneの「Music For The Knee Plays」は、1985年に登場した作品で、Robert Wilsonの大規模な舞台作品「The Civil Wars」の一部として書かれた音楽をまとめたものだ。Talking Headsの中心人物として知られるByrneが、バンドの枠を離れて舞台芸術へ深く関わった時期の記録でもあり、ソロ作の中でもかなり位置づけのはっきりした一枚と言える。

この作品は、単独のアルバムというより、演劇の構成要素として作られた音楽集という性格が強い。ライナーテキストには「Music for 'The Knee Plays' by Robert Wilson and David Byrne from Robert Wilson's 'The Civil Wars': A tree is best measured when it is down.」とあり、舞台全体の文脈の中で機能することを前提にしている。とはいえ、音源として聴くと、短い断片の連なりというより、ひとつのまとまった作品として十分に成立している印象がある。

作品の背景

裏ジャケットには、この音楽がニューオーリンズのDirty Dozen Brass Bandに触発されたと記されている。実際、ブラスの響きが前面に出る場面があり、ロックの作法だけではない、行進曲や室内楽、舞台音楽の要素が混ざった構成になっている。録音は1984年4月にNorth HollywoodのOne On One StudiosとSound Studio Recordersで行われ、ミックスは同年12月にまとめられた。初演は1984年4月26日、ミネアポリスのWalker Art Centerで行われたとある。

1980年代半ばのByrneは、Talking Headsでの活動と並行して、より広い意味でのアート・ロック、舞台音楽、異種混交の音楽表現へと関心を広げていた時期にあたる。Brian Enoとの共同作業や、後年のワールド・ミュージック的な感覚にもつながる、ジャンルの境界をまたぐ姿勢がすでに見える。そうした流れの中で「Music For The Knee Plays」は、歌もののソロ作というより、構成と音色の実験が前に出た作品として置かれている。

聴きどころ

ブラスとリズムの組み立て

この盤でまず目立つのは、ブラス・アンサンブルの扱い方だ。Dirty Dozen Brass Bandを思わせるような、輪郭のくっきりした管の響きが、単なる伴奏ではなく、曲の骨格そのものとして機能している。ニューオーリンズ由来の感覚を下敷きにしながらも、ファンクやロックの直線的な押し出しに寄り切らない進み方で、拍の置き方やフレーズの反復に独特の間がある。

聴いていると、盛り上げるための展開よりも、場面転換や動きの切り替えが先に来る印象が強い。舞台作品のための音楽らしく、ひとつの楽曲が終わると次の動作へつながるような作り。アルバムとして通して聴くと、曲ごとのキャラクターよりも、全体の流れの中で音が変わっていく感覚が残る。

Robert Wilsonとの共同作業らしさ

Robert Wilsonとの共同作業という点も、この作品を理解するうえで大事だ。Wilsonの演劇は、物語をまっすぐ追うというより、視覚的な配置や動き、時間の伸縮で見せるタイプの舞台として知られている。そのため、Byrneの音楽も、メロディを前面に押し出すより、空間や動作に合わせて輪郭を変える方向へ寄っている。

結果として、楽曲はどれも短いシーンのように感じられる場面が多い。印象的なフックで引っ張るタイプではないが、音の配置や繰り返しの回し方に耳が向く。Talking Headsの代表曲群にあるような、タイトなバンド・サウンドとは別の文法で書かれていることがよく分かる。

日本盤について

今回の日本盤はZonophone(EMS-91127)からのリリースで、1985年盤として出ている。オリジナルの年と同じ1985年の発売なので、作品の初出当時の空気に近い形で受け取れる盤だ。Zonophoneというレーベル名は、EMI系の文脈を持つ歴史あるブランドで、日本盤の見た目にも当時らしい整理のされ方が感じられる。

この作品は、David Byrneの中でも、ポップ・ソングの延長線だけでは語りにくい一枚だ。舞台芸術、ブラス・バンド、現代音楽寄りの構成が交差していて、1980年代半ばのByrneがどこへ向かっていたのかを示す記録として見やすい。ヒット曲を軸にした作品ではないが、彼の活動の幅を知るうえでは重要な位置にある。

まとめ

「Music For The Knee Plays」は、David Byrneのソロ作の中でも、舞台音楽としての性格がはっきりした作品だ。ニューオーリンズのブラスの感触、Robert Wilsonの演劇的な構成、1980年代中盤のアート・ロックの空気が重なり合い、曲単位よりも全体の流れで聴きどころが立ち上がる。静かに形を変えていく音の集まりとして、当時のByrneの関心の向き先をそのまま映した内容と言えそうだ。

トラックリスト

  1. A1 Tree (Today Is An Important Occasion) 4:02
  2. A2 In The Upper Room 3:35
  3. A3 The Sound Of Business 6:15
  4. A4 Social Studies 4:52
  5. A5 (The Gift Of Sound) Where The Sun Never Goes Down 2:34
  6. A6 Theadora Is Dozing 2:59
  7. B1 Admiral Perry 5:32
  8. B2 I Bid You Goodnight 2:51
  9. B3 I've Tried 3:24
  10. B4 Winter 6:11
  11. B5 Jungle Book 3:38
  12. B6 In The Future 6:35

動画

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