Decameron - Third Light (1975)
Decameron 1975

Decameron - Third Light (1975)

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Decameron『Third Light』(1975) について

Decameronの『Third Light』は、1975年にUKのTransatlantic Recordsから発表された3作目のアルバムである。アコースティック寄りの編成を軸にしながら、フォーク・ロックの輪郭を保ったまま、歌とアンサンブルの組み立てで聴かせる作品として位置づけられる。バンドは1968年にCheltenhamでJohnny CoppinとDave Bellを中心に始まり、その後Al Fenn、Geoff March、Dik Cadburyらが加わっていく流れの中で、ライブ活動を重ねながら音を固めていった。本作は、そうした活動の延長線上にある一枚で、グループの持ち味が比較的はっきり表れた時期の記録といえる。

Transatlantic Recordsの1970年代中期らしいグローブ・ラベルで出たオリジナル盤で、今回の盤はB面にのみリリース情報が入る仕様。歌詞はジャケット裏面に掲載されている。スタンピングとエッチングのランアウトもあり、当時の英国盤らしい作りでまとまっている。レーベルの流通史をたどると、1975年という年はTransatlanticが大きく転換していく時期でもあり、その中で出た本作は、同レーベルのフォーク/シンガーソングライター系タイトルの一角として見ておきたいところ。

Decameronというバンドの立ち位置

Decameronは、派手なヒットを前面に出すタイプというより、メンバーの作曲とコーラス、アコースティック楽器の絡みで曲を積み上げていくバンドである。Johnny CoppinとDave Bellのソングライティングを軸に、Al Fennのギター、Geoff Marchのチェロやキーボード、Dik Cadburyのベースやヴァイオリンなどが加わることで、フォークの枠に収まりきらない厚みを作っている。1970年代英国のフォーク・ロック周辺では、PentangleやFairport Convention、Steeleye Spanのような名前がまず思い浮かぶが、Decameronはその隣で、もう少し室内楽的な編成感と歌の運びを強めた存在として聴ける。

『Third Light』は、そうしたバンドの輪郭を知るうえで重要な位置にある。後年の作品に比べて、まだライブ感のある骨格が残っている時期の記録としても読めるし、メンバーそれぞれの役割が見えやすい盤でもある。

サウンドの印象

実際に針を落とすと、まず耳に入るのは、歌を中心にした整ったアンサンブルである。アコースティック・ギターを土台に、必要なところでヴァイオリンやチェロ、キーボードが入り、曲ごとに音の重心が動く。過度に装飾へ寄らず、各楽器が譜面どおりに並ぶというより、歌の流れの中で自然に役割を変えていく印象が強い。録音も、楽器の分離を保ちながら全体を一つの部屋鳴りのようにまとめていて、英国フォーク・ロックの持つ手触りがよく出ている。

また、Decameronの作品らしく、メロディの運びが前に出る場面と、合奏の色合いをじっくり聴かせる場面が交互に現れる。派手な転調や大きなダイナミクスで押し切るのではなく、曲の中で少しずつ景色を変える作り。そこにJohnny Coppinの歌い回しと、Dave Bellのソングライティングの相性が見える。アルバム全体としては、静かな曲だけに寄らず、リズムの立つ曲でも過剰に硬くならないところが特徴になっている。

アルバムの中核となる聴きどころ

この作品では、まずバンド全体のまとまりが見える曲が要所になっている。コーラスの重なり、アコースティック楽器の並置、そして歌詞を前面に出す構成が、この時代のDecameronをよく表している。とくに、曲が進むにつれて編成が少しずつ広がるタイプの楽曲では、メンバーの人数が多いことがそのまま音の厚みに変わっているのがわかる。フォーク・ロックにありがちな「歌もの」一辺倒ではなく、室内楽的な組み立てが入ることで、曲の輪郭がくっきりする。

また、ギター主体の曲ではAl Fennの存在が目立つ。派手なソロで押すというより、和音の置き方やフレーズの切り替えで曲の進行を支えるタイプで、そこにDik Cadburyのベースやヴァイオリンが絡むと、単なる伴奏以上の動きが生まれる。Geoff Marchのチェロやキーボードも、音数を増やすためではなく、低音域や持続音で空気を変える役割を担っているように聴こえる。こうした積み重ねが、アルバム全体の統一感につながっている。

B面の存在感

この盤はB面にのみリリース情報が記されている仕様だが、聴感上でもB面は作品の流れを支える重要な側面になっている。片面ごとのまとまりがある時代のLPらしく、曲順を追うことでバンドの表情が変わっていくのが面白い。前半で提示された編成や歌の性格が、後半で別の角度から見える構成になっているため、単曲で切り出すより、アルバム単位で聴いたときの意味が大きい。

収録曲ごとの細かな知名度は高くないが、少なくともこのアルバムでは、特定の1曲だけが突出するというより、全体の流れの中で印象が残る作りになっている。英国フォーク・ロックの文脈では、楽曲単位の強さと同じくらい、アルバムとしての統一感が評価されることがあるが、『Third Light』もその系譜に置いて見やすい一枚である。

1975年という時期の意味

1975年の英国フォーク/ロック周辺は、シンガーソングライター系の作品が広く流通しつつ、バンド編成のアコースティック音楽も一定の存在感を保っていた時期である。Decameronはその中で、伝統曲の再解釈よりも、自作曲を中心にしたバンド表現を続けた点に特徴がある。本作は、その姿勢が比較的明快に出た時期の成果として読める。

のちにバンドはツアー編成や活動規模の問題を抱えながら解散へ向かうが、『Third Light』には、まだその前段階にある、まとまったアンサンブルを維持できていた時期の手応えが残っている。英国盤フォーク・ロックの棚の中でも、派手さより構成、即効性より積み上げを重視する作品として、静かに存在感を持つアルバムである。

トラックリスト

  1. A1 Rock And Roll Away 3:20
  2. A2 All The Best Wishes 5:16
  3. A3 The Strawman 4:33
  4. A4 Saturday 3:01
  5. A5 Wide As The Years 6:04
  6. B1 Journey's End 4:41
  7. B2 Road To The Sea 3:08
  8. B3 Trapeze 4:52
  9. B4 The Ungodly 4:08
  10. B5 Morning Glory 5:32

動画

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