Elton John - Elton John (1970)
Elton John『Elton John』(1970)レビュー
1970年にUS盤として登場した『Elton John』は、エルトン・ジョンが本格的にアルバム・アーティストとして広く認識されていく前夜を切り取った作品だ。ソロ名義の2作目にあたるこのアルバムでは、のちに大きな成功を収める前の彼の持ち味、つまりピアノを軸にした旋律の運び、曲の起伏を支える歌唱、そしてバンド・アンサンブルの中でメロディを立てる感覚が、すでにはっきり示されている。70年代初頭のロック、ポップ・ロックの文脈の中でも、ギター主体のバンドとは少し違う位置に立つ作品で、ピアノが前面に出る作りが印象に残る。
この時期のエルトン・ジョンは、まだ巨大なスターダムに到達する直前だが、作曲面ではすでに成熟へ向かっている。バーニー・トーピンとのコンビで書かれた楽曲群は、後年のヒット曲に通じる分かりやすいフレーズと、短い曲の中に場面を切り替える構成が目立つ。アメリカ盤はUni Recordsからのリリースで、1970年当時のオリジナル盤としての存在感もある。盤面の表記に見られる「Suitable For Mono」は、この時代のレコード事情を反映した要素としても興味深い。
作品全体の印象
アルバム全体を通してまず感じるのは、派手さよりも曲そのものの輪郭を追わせる作りだ。オーケストラやアレンジが大きく広がる場面もあるが、中心にあるのはあくまでピアノと歌。エルトン・ジョンの声は、この時点ですでに感情の振れ幅が大きく、静かな曲でも言葉の置き方に強さがある。サウンドの厚みはあるが、音の数で押すというより、メロディの流れで引っ張るタイプのアルバムといえる。
同時代のイギリス勢でいえば、ピアノを前に出したロックの手触りは、The Beatles後期や時期の近いCat Stevens、あるいはBill Withersのようなソウル寄りの表現とも比較されやすい。ただしエルトン・ジョンの場合は、ポップな明快さと劇的な展開が同居していて、そこに既に独自性がある。まだ「大箱のヒットメーカー」というより、曲の組み立てで聴かせるシンガーソングライターの顔が強い。
注目曲「Your Song」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Your Song」だ。エルトン・ジョンの代表曲として知られ、のちのキャリアを決定づける一曲でもある。派手な導入ではなく、ピアノの和音から自然に始まり、言葉が少しずつ輪郭を持っていく流れが印象的だ。歌詞は身近な感情をそのまま差し出すような書き方で、誇張しすぎない素直さが曲の強さにつながっている。
演奏面では、歌を支えるピアノが非常に重要だ。リズムの置き方に余裕があり、メロディの跳ね方も含めて、後年のライブで大きく育っていく土台がここにある。ヒット曲としての分かりやすさはあるが、単に覚えやすいだけではなく、最後まで聴くと曲の構造がきれいに整っていることがわかる。70年代初頭のポップ・バラードの中でも、かなり長く残る種類の書き方だと思える。
注目曲「Take Me to the Pilot」
「Take Me to the Pilot」は、「Your Song」とは対照的に、少し荒さと推進力を持った曲だ。リズムが前に出ていて、バンドの一体感がよく出る。エルトン・ジョンの歌はここでやや強めに押し出され、メロディの跳躍も大きい。アルバムの中で、彼が単なるバラード歌手ではなく、ロック寄りのダイナミズムも扱えることを示す場面になっている。
この曲では、ピアノが伴奏にとどまらず、曲の推進力そのものになっている。歌と楽器の関係が対等で、フレーズの切り替わりにも緊張感がある。のちのエルトン・ジョンが見せる、ステージ上での大きなエネルギーを予感させる一曲として聴けるはずだ。アルバムの中で印象の違いを作る役割も大きい。
アルバムの位置づけ
『Elton John』は、彼の名を広く知らしめる前段階の重要作という位置づけになりそうだ。次作以降で世界的な成功が加速していくことを思うと、このアルバムはその出発点として、すでに完成度の高い楽曲と演奏を備えている。大ヒット曲「Your Song」を収めている点だけでなく、アルバム全体にソングライターとしての基礎体力が見えるところが重要だ。
70年代ロックの中で、ピアノ主体のポップ・ロックがどのように存在感を持ちうるかを示した一枚でもある。後年のエルトン・ジョンは、より華やかで大規模な表現へ進むが、その前にこのアルバムのような、曲の芯をきちんと聴かせる時期があったことは大きい。オリジナルの1970年盤として見ると、彼のキャリアの初期像がそのまま刻まれた記録として読める。
トラックリスト
- A1 Your Song
- A2 I Need You To Turn To
- A3 Take Me To The Pilot
- A4 No Shoe Strings On Louise
- A5 First Episode At Hienton
- B1 Sixty Years On
- B2 Border Song
- B3 The Greatest Discovery
- B4 The Cage
- B5 The King Must Die
動画
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Your Song
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I Need You To Turn To
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Take Me To The Pilot
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No Shoe Strings On Louise
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First Episode At Hienton
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Sixty Years On (Album Edit)
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Border Song
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The Greatest Discovery
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The Cage
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The King Must Die