Eminem - The Marshall Mathers LP (2000)
Eminem 2000

Eminem - The Marshall Mathers LP (2000)

Hip Hop Hardcore Hip-Hop Horrorcore

Eminem『The Marshall Mathers LP』レビュー

2000年に発表されたEminemの3作目のスタジオ・アルバムが、『The Marshall Mathers LP』だ。前作『The Slim Shady LP』で一気に注目を集めたあと、その勢いを保ったまま、より個人的で、より攻撃性の強い方向へ踏み込んだ作品として知られている。タイトルには本名のMarshall Mathersが使われていて、キャラクターとしてのSlim Shadyだけでなく、ひとりの人物としてのEminemを前面に出した内容になっている。

この作品は、Aftermath Entertainment、Interscope Records、そしてEminem自身のShady RecordsからUSでリリースされた。プロデュース面ではDr. Dreの存在が大きく、Eminem本人に加えてThe 45 King、Bass Brothers、Mel-Manらが参加している。サウンドは2000年当時のメジャー・ヒップホップの中でもかなり硬質で、ビートの隙間に言葉を押し込むようなラップの密度が印象に残る。

作品の位置づけ

このアルバムは、Eminemにとって単なる次作ではなく、ブレイク後の立場をそのまま作品化した一枚と見られている。前作で急速に有名になったこと、その結果として受けた批判や好奇の目、家族やメディアとの摩擦が、かなり直接的に言葉へ変換されている。表面的な挑発だけでなく、内側にある苛立ちや疲労感まで含めて記録されている点が、この作品の大きな特徴だ。

当時のヒップホップの文脈で見ると、Dr. Dre系の西海岸サウンド、デトロイト出身のEminemが持ち込んだ言葉数の多いラップ、そしてハードコア・ヒップホップやホラーコアの要素が、ひとつのメジャー作品として強く結びついた例と言える。Gangsta rapの流れを引き継ぎながらも、暴力や悪意を単に描写するだけでなく、自己否定や過剰な自己演出まで含めて押し出しているのが特徴的だ。

代表曲と聴きどころ

収録曲では「The Real Slim Shady」「The Way I Am」「Stan」「Criminal」「Marshall Mathers」などがよく知られている。特に「Stan」は、狂信的なファン心理を手紙形式で描いた曲として広く認識されていて、ヒップホップの枠を越えて語られることも多い。Eminemの物語性と、感情の圧をそのまま曲の構造に落とし込む手つきがよく出ている。

「The Real Slim Shady」は、ポップな引っかかりを持ちながらも、本人のイメージを逆手に取った曲として機能している。「The Way I Am」は、成功したあとに向けられる期待と圧力への返答のように響くし、「Marshall Mathers」では本名をタイトルに置くことで、キャラクターではない個人の輪郭をさらに強めている。実際に聴くと、どの曲もフックの強さだけでなく、声の押し出しと語尾の置き方がかなり細かく作られているのがわかる。

評価と反応

発売当時から本作は大きな論争を呼んだ。暴力的な表現や差別的と受け取られる表現をめぐって賛否が分かれた一方で、ラップの技術、構成の緻密さ、自己暴露の強さは高く評価された。2001年にはグラミー賞で最優秀ラップ・アルバムを受賞している。商業面でも初週売上は約176万枚とされ、USで大きな反響を記録した。のちにRIAAでダイヤモンド認定も受けており、Eminemの代表作としての地位を固めた作品だ。

同時代のメインストリーム・ラップと比べても、このアルバムはかなり言葉の圧が強い。派手なパーティー感よりも、個人の内面と社会への反発が前に出ていて、その点で後続の多くのラッパーに影響を与えたと見られている。Eminemがその後のキャリアで何度も参照されるのも、この時点で「売れ方」と「書き方」の両方を決定づけたからだろう。

この盤について

今回のUS盤はInterscope Recordsのカタログ番号069490629-1のアナログ盤で、2000年のオリジナル期に出たものだ。フロントカバーには「The Real Slim Shady」「Criminal」「Marshall Mathers」を収録している旨のステッカーが付いている。収録内容としては、作品の代表曲をそのまま押し出した構成で、当時のアルバムの顔がはっきり見える仕様になっている。

『The Marshall Mathers LP』は、Eminemが単なる話題のラッパーではなく、2000年代初頭のポップ・カルチャーそのものに強く食い込んだことを示す一枚だ。挑発、自己開示、商業的成功、その3つが同時に極端な形で表れた作品として、今見ても存在感が大きい。

トラックリスト

  1. A1 Public Service Announcement 2000 0:25
  2. A2 Kill You 4:24
  3. A3 Stan 6:44
  4. A4 Paul (Skit) 0:10
  5. A5 Who Knew 3:47
  6. A6 Steve Berman 0:53
  7. B1 The Way I Am 4:50
  8. B2 The Real Slim Shady 4:44
  9. B3 Remember Me? 3:38
  10. B4 I'm Back 5:10
  11. C1 Marshall Mathers 5:20
  12. C2 Ken Kaniff (Skit) 1:01
  13. C3 Drug Ballad 5:00
  14. C4 Amityville 4:14
  15. C5 Bitch Please II 4:48
  16. D1 Kim 6:17
  17. D2 Under The Influence 5:22
  18. D3 Criminal 5:21

動画プレイリスト

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