Fairport Convention - Full House (1970)
Fairport Convention『Full House』──英国フォークロックの骨格がはっきり見える一枚
Fairport Conventionの『Full House』は、1970年にUKのIsland Recordsから出たアルバムで、バンドのフォークロック路線がかなり明確になった時期の作品だ。Fairport Conventionは1967年結成のイングリッシュ・フォークロック・バンドで、トラディショナルな英国民謡の感触とロックの編成を自然につなぐ存在として知られている。この作品も、その基本線を保ちながら、演奏の密度とバンド感を前面に出した内容になっている。
アルバム全体を通して耳に入るのは、アコースティックな響きだけでなく、エレクトリック・ギター、フィドル、リズム隊の噛み合いだ。単に「フォークをロック化した」だけではなく、曲の輪郭を保ったままアンサンブルで押していく作りになっていて、同時代の英国フォークロックの中でも、かなりバンドの手触りが強い。PentangleやSteeleye Spanと並べて語られることがあるのも納得できるが、Fairport Conventionの場合は、よりロックバンドとしての推進力がはっきりしている。
作品の位置づけ
『Full House』は、Fairport Conventionのディスコグラフィーの中でも、バンドの路線が固まった時期の代表的な一枚として見られることが多い。1970年という時点で、英国のロックはサイケデリックの余韻からハードロックやプログレッシブな方向へ広がっていたが、この作品はそうした流れに寄りかかりすぎず、英国の伝承曲やフォーク由来の旋律感を軸に据えている。派手な実験よりも、曲と演奏のまとまりが印象に残るタイプだ。
また、Island RecordsのUK盤らしい時代感もある。Islandはこの頃、ジャマイカ音楽中心のレーベルから、より広いロックの文脈を担うレーベルへと存在感を強めていた時期で、Fairport Conventionのような英国的なルーツを持つバンドとも相性がよかった。ILPS 9130というカタログ番号も、同レーベルのアルバム群の中にしっかり位置づけられる。
注目曲:「Walk Awhile」
冒頭を飾ることが多い「Walk Awhile」は、このアルバムの方向性をつかむうえで重要な曲だ。リズムの立ち上がりが早く、フォーク由来のメロディをロックの推進力に乗せていく。派手に展開するというより、演奏が前へ進む感覚そのものが聴きどころで、Fairport Conventionらしい“踊れる”感触がある。フィドルやギターの受け渡しも自然で、バンド内の会話がそのまま曲になったようなまとまりがある。
この曲を聴くと、Fairport Conventionが単なる伝承曲の再現ではなく、バンド編成で民謡的な旋律を再構成していたことがよくわかる。歌と演奏が分離せず、曲の流れの中で一体になって進むので、アルバムの出だしとしてかなり強い印象を残す。
注目曲:「Sloth」
もう一つの核として語られやすいのが「Sloth」だ。こちらは長めの尺を使って、バンドの演奏力と構成力をじっくり見せるタイプの曲で、Fairport Conventionのアルバムの中でもよく代表曲として挙げられる。テンポを急がず、フレーズの積み重ねで引っ張っていくので、派手さよりも展開の説得力が残る。曲の中で音数が増えすぎないぶん、各パートの役割がよく見えるのも面白いところだ。
この曲では、フォークロックの「素朴さ」と「組み立て」の両方が出ている。土台は伝承音楽の感触に近いのに、演奏はかなりバンド的で、ロックのアルバムとしての強度もある。Fairport Conventionがこの時期に到達していたバランスを、そのまま切り取ったような一曲だ。
演奏とサウンドの印象
『Full House』を通して聴くと、各曲の個性はありつつも、アルバム全体の統一感が強い。録音は過度に装飾的ではなく、楽器の鳴りが比較的前に出るので、アンサンブルの細部が追いやすい。フィドルの線が曲の芯を作り、ギターがその周囲を固め、ベースとドラムが地面を作るという役割分担が見えやすい。
感触としては、英国の田舎風景をそのまま音にした、というよりも、伝承曲の要素を都市のロックバンドが整理し直した、というほうが近い。だからこそ、土臭さだけに寄らず、演奏の精度や曲の構成が印象に残る。フォークロックという言葉の中にある二つの要素が、どちらかに偏らず並んでいる作品だ。
まとめ
『Full House』は、Fairport Conventionのフォークロックを理解するうえで外しにくいアルバムだ。1970年という時代の英国ロックの空気を受けつつ、バンド独自の民謡感覚と演奏のまとまりを前面に出している。ヒット曲を大きく狙うというより、アルバム全体でバンドの輪郭を見せる作りで、そこにこの作品の強さがある。
Fairport Conventionという名前を知っていても、どの時期のどのアルバムから入るべきか迷うことはあるが、『Full House』はその中でも、バンドの核が比較的わかりやすい一枚として位置づけられる。英国フォークロックの文脈をたどるときに、自然と手に取られる作品だ。
トラックリスト
- A1 Walk Awhile 3:57
- A2 Dirty Linen 4:12
- A3 Sloth 9:13
- B1 Sir Patrick Spens 3:27
- B2 Flatback Caper 6:18
- B3 Doctor Of Physick 3:30
- B4 Flowers Of The Forest 4:00
動画
- Walk Awhile
- Dirty Linen
- Sloth
- Sir Patrick Spens
- Doctor Of Physick
- Flatback Caper
- Flowers Of The Forest