Gerry Rafferty - Can I Have My Money Back? (1971)
Gerry Rafferty 1971

Gerry Rafferty - Can I Have My Money Back? (1971)

Rock Pop

Gerry Rafferty『Can I Have My Money Back?』について

Gerry Raffertyの『Can I Have My Money Back?』は、1971年に発表された彼のファースト・ソロ・アルバムである。のちに「Baker Street」や「Right Down the Line」で広く知られることになるRaffertyだが、その出発点にあたる本作では、まだソロ・シンガーとしての輪郭を探っている段階がはっきり出ている。英国スコットランド出身の彼らしいフォークの感触を土台にしながら、ポップ・ソングとしての整え方も早い段階で示している作品で、Stealers Wheel以前のGerry Raffertyを確認するには重要な一枚である。

このUS盤はABC Recordsの1978年プレスで、オリジナルの1971年盤とはリリース時期が異なる。ABC Recordsは1970年代にロック、ソウル、カントリーまで幅広く展開していたレーベルで、この盤もそのカタログの中で流通した再登場盤のひとつとして位置づけられる。1978年という時期を考えると、Raffertyがすでに大きな成功を手にする直前の段階で、初期作品が改めて市場に出ていた流れも見えてくる。

アルバム全体の印象

本作の中心にあるのは、派手な演出よりも、曲そのものの運び方だ。Gerry Raffertyは、メロディを前に出しながら、言葉の置き方やフレーズの伸ばし方で印象を作るタイプのソングライターで、この時点ですでにその持ち味がある。後年の大きなヒット曲に比べると音の作りは比較的素朴だが、そのぶん曲の骨格が見えやすい。アコースティックな響き、軽いリズム、歌の間合いが前に出る構成で、英国のシンガー・ソングライター作品に近い手触りもある。

ただし、単なるフォーク・アルバムというよりは、ポップ・ソングとしての整理が意識されている点が面白い。楽曲によってはユーモアや皮肉も混じり、のちのRafferty作品で感じられる、少し距離を取った語り口につながっていく。アルバムタイトルからも分かるように、歌詞面では日常の感覚や小さな不満、世の中との噛み合わなさのようなものが視野に入っている。

注目曲「Can I Have My Money Back?」

タイトル曲は、本作の性格をそのまま示すような一曲である。曲名の時点でかなり率直だが、実際の歌もその方向性を保ちながら、感情を過度に煽らずに進んでいく。Raffertyの歌声は、この段階ですでに耳に残る独特の粘りがあり、言い切りすぎない歌い方が曲の内容と合っている。のちの代表曲ほど大きなスケールではないものの、フックの置き方にはすでに手慣れた感覚がある。

この曲では、後年の洗練されたアレンジよりも、メロディとリズムの噛み合わせが重要になる。聴き進めると、コミカルさと少しの苦味が同居していて、単純に明るいだけでも暗いだけでもない。Raffertyがソロ作家として何をやりたいのか、その入口が見える曲と言える。

注目曲「Mary Skeffington」

「Mary Skeffington」は、本作の中でもRaffertyらしい書き分けがよく出る曲である。タイトル曲のような直接性とは少し違い、人物像を追うような視点が前に出る。語り口は落ち着いていて、メロディの流れに沿って情景が自然に立ち上がるタイプだ。彼が後年に見せる、旋律の滑らかさと歌詞の距離感の組み合わせを、早い段階で確認できる。

こうした曲では、派手な転調や大きな盛り上がりよりも、フレーズの運びが印象を決める。Raffertyはその部分がうまい。歌が進むほどに説明しすぎない余白が残り、聴き手が曲の空気を受け取る形になっている。アルバム全体の中でも、ソングライターとしての輪郭をつかみやすい一曲である。

ソロ作としての位置づけ

Gerry Raffertyにとって本作は、Stealers Wheelへ進む前の出発点であり、同時にソロ・アーティストとしての基礎を置いた作品でもある。彼の名前が広く知られるのは1978年の『City to City』以降だが、その成功を支える作曲感覚や歌の組み立て方は、すでにこの1971年作の時点で見えている。ここではまだ大きな商業的成功の影は薄いが、作家としての方向はかなり明確だ。

同時代の英国シンガー・ソングライターの流れで見ると、フォーク由来の書き方を持ちながら、ポップ・チャートにも届く形を探る動きの中にある。James TaylorやCat Stevensのような名前と並べて語られることもあるが、Raffertyの場合はそこに少し乾いたユーモアと、言葉の置き方の独特さが加わる。のちの「Baker Street」で一般的に知られる洗練の前段階として聴くと、曲作りの芯がよく分かるアルバムである。

1978年US盤として聴く意味

このUS盤は1978年に出たABC Records盤で、オリジナルの1971年盤とは時間の差がある。Rafferty自身はその間にStealers Wheelを経て、ソロでも成功への階段を上っていくため、1978年の時点では初期作が「後から見直される」性格を帯びる。盤としては、その後のキャリアを知ったうえで初期の姿を確かめる、という聴き方がしやすい。

『Can I Have My Money Back?』は、完成された大ヒット作というより、作家の原型を見せるアルバムである。だが、曲の中にすでにRaffertyらしいメロディの扱い、言葉の運び、少し引いた視点がある。後年の代表曲へつながる線をたどるうえで、この初期作は静かに重要な位置を占めている。

トラックリスト

  1. A1 New Street Blues 2:59
  2. A2 Didn't I? 3:42
  3. A3 Mr. Universe 2:50
  4. A4 Mary Skeffington 2:31
  5. A5 Long Way Round 4:31
  6. A6 Can I Have My Money Back? 1:51
  7. A7 Sign On The Dotted Line 2:34
  8. B1 Make You, Break You 3:29
  9. B2 To Each And Everyone 2:46
  10. B3 One Drink Down 2:50
  11. B4 Don't Count Me Out 3:49
  12. B5 Half A Chance 4:26
  13. B6 Where I Belong 2:03

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