G.I. Orange - Winter Wonderland (1985)
G.I. Orange『Winter Wonderland』について
G.I. Orangeの『Winter Wonderland』は、1985年に日本でリリースされた作品である。アーティストは1983年結成の英国ニューウェイヴ・グループで、編成はKarl Whitworth、Simon Whitworth、Mark Whitworth、Gary Holt。ジャンル表記はElectronic、スタイルはSynth-popとNew Wave。80年代前半の英国シーンで広く共有されていた、打ち込み主体のポップ感覚とバンド演奏の輪郭を両方にらんだ作品として捉えやすいタイトルである。
日本盤はCBS/Sonyの23AP 3100。CBS/Sonyの80年代中盤らしいカタログ体系に収まるLPで、1985年当時の国内流通盤としてまとまった体裁になっている。アーティストの活動時期を考えると、バンドが結成から間もないタイミングで出した初期の代表的な一枚と見てよさそうだ。タイトルが示す通り、寒色のイメージを持つ作品名だが、実際の中身は季節限定の企画物というより、当時のニューウェイヴ/シンセポップの文法に沿った作品として受け取るほうが自然である。
80年代前半の英国ニューウェイヴ文脈の中で
G.I. Orangeは英国のニューウェイヴ・グループとして紹介されている。1983年結成という時期は、ポストパンクの流れが整理され、シンセサイザーやリズムマシンを前面に出したポップ・バンドが数多く登場していた頃に重なる。そうした時代背景の中で『Winter Wonderland』は、ギター主体のロックというより、電子音の質感やメロディの整理された作りを軸に置く作品として位置づけやすい。
同時代の比較対象としては、Human League、Depeche Mode、Orchestral Manoeuvres in the Dark、A Flock of Seagullsあたりが思い浮かぶ。もちろんそれぞれの個性は大きく違うが、80年代中盤の英国ポップが持っていた、冷たさと親しみやすさを同居させる感覚は共通している。G.I. Orangeもその流れの中で、バンド名義のアンサンブルを保ちながら、電子的な音像を前面に出していたグループとして理解しやすい。
タイトル曲「Winter Wonderland」
表題曲「Winter Wonderland」は、この作品の顔としてまず耳に入る一曲である。タイトルから連想される定番クリスマス曲とは別物で、G.I. Orange自身の楽曲として扱われている。80年代シンセポップでは、曲名に季節感や風景を置きながら、実際のサウンドでは硬質なシンセベースと整ったビートで進める作りがよく見られるが、この曲もそうした系譜に置いて聴きやすい。
歌のメロディは比較的わかりやすく、フックを前に出すタイプの作りと受け取れる。ニューウェイヴ特有の距離感を残しつつも、極端に尖った音ではなく、ポップソングとしての輪郭を保っている点が印象に残る。派手な展開で押し切るというより、リフレインの積み重ねで曲の印象を残すタイプの楽曲で、当時の英国インディー/ポップ系シーンの感触をよく伝える一曲である。
作品全体の聴こえ方
『Winter Wonderland』全体を通してみると、シンセの音色が作品の芯になっていることが分かる。電子楽器の比重が高い一方で、バンドとしてのまとまりが失われていないのがこの時代の作品らしいところで、打ち込みの冷たさだけに寄らず、ボーカルやメロディで引っ張る構成が見えやすい。音数を積み上げるというより、必要な要素を整理して並べる作りで、80年代中盤のポップ・プロダクションの感覚が表れている。
また、日本盤として出ている点もこの作品の見どころである。CBS/Sonyからのリリースは、当時の日本市場が英国ニューウェイヴやシンセポップをしっかり受け止めていたことの証拠でもある。日本のリスナーに向けて輸入盤よりも手に取りやすい形で届けられた一枚として、G.I. Orangeの初期像を知るうえで重要な位置を占める作品といえる。
まとめ
『Winter Wonderland』は、1985年の英国ニューウェイヴ/シンセポップの空気を日本盤LPという形で伝える一枚である。G.I. Orangeというバンドの初期の姿を確認できる作品であり、電子音主体の80年代ポップが持っていた整理された構成、メロディ重視の作り、そして当時の音楽市場との接点が見えやすい。派手な逸話が前に出るタイプではないが、時代の文法に沿ってきちんと作られた作品として、80年代英国ポップの流れを追ううえで押さえやすいタイトルである。
トラックリスト
- A1 Winter Wonderland 3:54
- A2 The Whole Land Is Sleeping Tonight 5:04
- A3 Honey Wood 3:28
- B1 Psychic Magic (Remix Version) 6:56
- B2 I Wish It Could Be Christmas Everyday 4:03