Gilberto Gil - Refazenda (1975)
Gilberto Gil『Refazenda』(1975)について
ブラジル音楽を語るうえで、Gilberto Gilは外せない名前だ。シンガー、ギタリスト、ソングライターとして活動しながら、音楽と社会への関わりを切り離さずに歩んできた人物でもある。1975年の『Refazenda』は、そうしたGilのキャリアの中でも重要な位置を占める作品として知られている。ブラジル盤はPhilipsからのリリースで、レーベル番号は6349 152。ジャンル表記ではLatin、Funk / Soul、スタイルではSamba、MPBに置かれている。
この時期のGilは、単なる流行の追随ではなく、ブラジル音楽の土台にあるリズムや歌の語り口を、当時の感覚で組み替えていくような仕事を続けていた。『Refazenda』というタイトル自体が示す通り、ここでは“作り直す”という意識が前面にある。サンバやMPBの要素を軸にしながら、歌の輪郭をはっきりさせ、演奏の中に生活感や土地の気配を持ち込む構成が印象に残る作品だ。
作品全体の印象
このアルバムは、派手な音圧で押し切るタイプではなく、曲ごとの言葉の運びとリズムの置き方で聴かせる作りになっている。ギターと歌を中心に、アレンジは比較的整理されており、その分だけフレーズの細部が耳に入りやすい。MPBの洗練と、サンバ由来の身体感覚が同じ場所にある、という言い方がしやすい内容だ。
聴き進めると、曲の中でリズムが細かく揺れながらも、全体は落ち着いた推進力を保っているのがわかる。ファンクやソウルの要素もクレジット上では見えるが、音の質感はブラジルの歌ものとしての輪郭が強い。英米圏のロックやソウルと単純に比較するより、同時代のブラジル音楽の中で、Caetano VelosoやGal Costa、さらにはNovos Baianos周辺とは別の角度から都市と地方、洗練と素朴さをつないでいる作品として見ると掴みやすい。
「Refazenda」というタイトル曲
アルバムの核としてまず触れたいのがタイトル曲「Refazenda」だ。ここでは、言葉の響きとリズムの結びつきが非常に強い。曲名の通り、何かを耕し直す、組み直す、という感覚が音の流れにも出ている。派手な展開で驚かせるというより、フレーズが少しずつ積み重なり、歌の中で景色が立ち上がっていくタイプの曲だ。
Gilberto Gilの歌い方も、この曲ではよく機能している。力任せに押すのではなく、言葉を置く位置でニュアンスを作るため、メロディの輪郭が明確になる。サンバの身体性を持ちながら、同時にMPBらしい知的な組み立ても感じられるところが、この曲の面白さだ。アルバム全体の方向性を示す1曲として、かなり重要な役割を担っている。
アルバムの中で見えるGilの立ち位置
Gilberto Gilは、トロピカリアの文脈で語られることも多いが、『Refazenda』ではそのイメージだけでは収まらない。ここでは、より地に足のついた語り口で、ブラジルの音楽的な資源を再配置している印象がある。政治的な発言や活動でも知られる人物だが、この時期の音楽には、メッセージを前面に押し出すというより、音楽そのものの構造で世界の見え方を変えるような姿勢が見える。
1970年代半ばのブラジル音楽には、MPBの成熟と、ファンク、ソウル、地方色の再解釈が同時に進んでいた。『Refazenda』はその流れの中で、Gilが自分の言葉とリズムをいったん整理し、別の形で提示したアルバムとして位置づけられるだろう。派手さよりも内容の密度で聴かせるタイプで、作品全体に一貫した設計がある。
1975年ブラジル盤としての位置づけ
この盤は1975年当時のブラジルで出たオリジナル・リリースで、Philipsレーベルからの発売。70年代のブラジル盤らしく、作品そのものの時代感をそのまま持っている。録音やマスタリングの傾向を含めて、後年の再発盤とは別の空気があることは、実物のレコードを聴く楽しみの一つだろう。アナログ盤で聴くと、リズム隊のまとまりや声の前に出方がよりわかりやすい。
『Refazenda』は、Gilberto Gilの広いディスコグラフィの中でも、サンバとMPBの接点を丁寧に掘り下げた一枚として見てよさそうだ。ブラジル音楽の流れを追うとき、トロピカリア期の作品群とあわせて置くことで、この人がどのようにスタイルを移し替えていったのかが見えやすくなる。1975年という年のブラジル音楽の厚みを、そのまま封じ込めたようなアルバムである。
トラックリスト
- A1 Ela 3:00
- A2 Tenho Sede 3:40
- A3 Refazenda 3:00
- A4 Pai E Mãe 3:48
- A5 Jeca Total 2:40
- A6 Essa É Pra Tocar No Rádio 3:00
- B1 Ê, Povo, Ê 4:05
- B2 Retiros Espirituais 4:47
- B3 O Rouxinol 2:33
- B4 Lamento Sertanejo 4:10
- B5 Meditação 1:45
動画
- Gilberto Gil * Ela * Refazenda
- Pai E Mae (Gilberto Gil)
- Gilberto Gil - Tenho Sede
- Refazenda
- Gilberto Gil - 1975 - Refazenda - 10 Lamento Sertanejo
- Tenho sede
- Gilberto Gil e a Trilogia Re (Realce, Refavela e Refazenda) | O Som do Vinil com Charles Gavin