Goat - New Games / Rhythm & Sound (2018)
Goat『New Games / Rhythm & Sound』について
大阪を拠点に活動する実験音楽バンド、Goatによる『New Games / Rhythm & Sound』は、2018年に発表された作品で、2024年にEM Recordsから日本盤としてリリースされた1枚だ。メンバーはKoshiro Hino、Atsumi Tagami、Akihiko Ando、Tetsushi Nishikawa、Takafumi Okada。バンド名の通り一言で括りにくいが、電子音楽とロックの要素を行き来しながら、反復とずれ、リズムの組み替えに重心を置いた音作りが核にある。
EM Recordsは大阪を拠点に、境界をまたぐ作品を数多く手がけてきたレーベルで、本作もそのラインの中に置くと見通しがつきやすい。国産の実験音楽でありながら、単に「日本のバンド」という枠に収まらず、ミニマルな構造やマスロック的な切り返し、電子的な処理を自然に接続している点がこの作品の特徴だ。
作品の輪郭
『New Games / Rhythm & Sound』というタイトルは、2つの語を並べるだけで、内容の手触りをかなりはっきり示している。ここで聴こえてくるのは、メロディを前に出すタイプのロックではなく、短いフレーズ、拍のずれ、音の抜き差しによって推進力を作る音楽だ。展開は過度に劇的ではなく、同じモチーフを少しずつ変形させていく進め方が中心。結果として、楽曲ごとの輪郭よりも、演奏の組み立てそのものが印象に残る。
Goatは大阪の実験バンドとして語られることが多いが、この作品でもその性格は明確だ。即興一辺倒ではなく、きっちり組まれた構造の上で、演奏の揺れや音色の差し替えが効いている。耳を引くのは派手なソロより、リフの反復が少しずつ形を変える瞬間、あるいはビートが前に出たり引いたりする局面。聴き進めるほど、曲の中で起きている細かな運動が見えてくるタイプの作品だ。
タイトル曲まわりの聴きどころ
「New Games」は、その名の通り新しいルールの組み立てを思わせる1曲だ。ギターやリズム隊が同じ地点を回り続けるようでいて、完全に固定されているわけではない。フレーズの重なり方、音の入り方、抜け方が少しずつ変わり、曲全体がひとつの装置のように動いていく。ロックの推進力はあるが、一般的な歌ものの起伏とは異なり、反復そのものが緊張を生む構造になっている。
この曲で目立つのは、音数の多さではなく整理のされ方だ。いくつもの要素が同時に鳴っているようで、実際には必要なものだけが残されている印象が強い。そこに演奏のわずかなズレが加わることで、機械的になりすぎず、かといって崩れすぎないバランスが保たれている。Goatの持ち味である、反復を土台にしながらも硬直しない感覚がよく出た楽曲といえる。
『Rhythm & Sound』側の印象
一方の「Rhythm & Sound」は、タイトルが示す通り、リズムと響きの関係に意識が向いた曲として聴こえる。ここではビートが単なる拍の刻みではなく、音の密度や空間の見え方を変える要素として働いている。音が前に出る瞬間と、引いて余白を作る瞬間の差がはっきりしていて、その切り替えが曲の流れを作っている。
この曲の面白さは、音響的な処理を前面に出しながらも、バンド演奏の身体感覚が残っているところにある。電子音楽的な整理の仕方と、ロックバンドならではの生っぽい推進力が同居していて、どちらか一方に寄り切らない。EM Recordsが扱ってきた多様な音楽の中でも、こうした「演奏」と「構成」の両立は、この作品の見どころとして受け取れる。
Goatというバンドの位置づけ
Goatは、関西の実験音楽やオルタナティブなロックの流れの中で、独自の立ち位置を築いてきたバンドだと見てよさそうだ。マスロックのような複雑な拍感、ミニマル・ミュージックに通じる反復、電子音楽的な音の整理が、ひとつの演奏単位の中で自然に混ざっている。単に技巧を見せる方向ではなく、リズムの組み替えそのものを音楽の主題にしている点が、このバンドらしさになっている。
2018年作としての本作は、その方向性がまとまった形で表れた一作として捉えやすい。2024年盤は日本での流通を担う形での登場で、作品そのものの核は2018年時点のものにある。派手なヒット曲で押すタイプではないが、曲単位よりも全体の構造で聴かせる作品として、Goatの輪郭をつかむ手がかりになる1枚だ。
まとめ
『New Games / Rhythm & Sound』は、Goatの持つ実験性とバンド演奏の強度が、過不足なくまとまった作品だ。反復、ずれ、音の整理、そしてリズムの変化。そうした要素が、ロックと電子音楽の間を行き来しながら組み上げられている。大阪発のバンドが、国内のインディペンデント・レーベルからこうした形で作品を出していること自体も、このシーンの広がりを示す一例として見えてくる。
トラックリスト
- A1 New Games 9:28
- A2 Std 12:31
- B1 Solid Eye 10:43
- B2 Ghosts Part 1 3:40
- B3 On Fire 8:10