Gong - Shamal (1976)
Gong『Shamal』――ジャズ・ロックへ寄った1976年作
Gongの『Shamal』は、1976年にUKのVirginから出たアルバムで、バンドのディスコグラフィーの中でも、サイケデリックな色合いとジャズ・ロック寄りの演奏が前面に出た作品として知られている。Gongはフランスで結成されたグループだが、この時期には活動の拠点やメンバー構成が大きく動いており、作品ごとの輪郭もかなり変わっていく。そんな中で『Shamal』は、バンドの流れを追ううえで、ひとつの節目として見やすいタイトルだと思う。
盤としてはUK盤、VirginのV 2046。見開きの未ラミネート・ジャケット、そして白い縁取りのあるグリーンのツイン・ラベルという仕様で、1976年のVirginらしい時期感もはっきりある。録音はロンドンのBasing Street StudiosとOlympic Studios、ミックスはSarm Studios。ロンドンのスタジオをまたいで仕上げられていて、当時の英国プログレ/ジャズ・ロックの制作環境がそのまま反映されたような組み合わせだ。
Gongの中での位置づけ
Gongは、Daevid AllenとGilli Smythを中心に始まったバンドで、初期はサイケデリック・ロックの文脈で語られることが多い。一方で70年代半ばに入ると、Steve Hillage、Mike Howlett、Pierre Moerlen、Didier Malherbeらの参加によって、演奏の密度やリズムの組み立てが変わり、よりジャズ・ロック、フュージョン寄りの手触りが強くなる。『Shamal』はその変化が表に出た時期の作品で、Gongの中でも比較的インストゥルメンタル性の高い方向へ寄っている。
同時代の英国勢でいうと、Soft MachineやHatfield and the North、Brand Xのようなジャズ・ロック系、あるいはCamelやCaravanの一部作品とも並べて語られやすい。ただしGongの場合は、そうしたバンドよりも曲の構成に遊びの余地があり、音の感触にも独特のユーモアが残る。プログレッシブ・ロックの枠に収まりきらないのが、この時期のGongらしさでもある。
アルバム全体の聴きどころ
『Shamal』を通して聴くと、まず印象に残るのは、リズム隊の動きとギター、サックス、キーボードが同じ面でぶつかり合う感じだ。派手な歌メロで押すというより、各パートが少しずつ形を変えながら前へ進む作りで、曲ごとに温度差がある。Daevid Allenの存在感はあるものの、アルバム全体としてはバンド・アンサンブルの比重が高い。
録音面では、音の輪郭が比較的はっきりしていて、各楽器の分離も追いやすい。ベースとドラムの推進力が前に出る場面と、シンセやフルート、サックスが空間を広げる場面の切り替えがわかりやすく、スタジオ作品としての整理も感じる。Gongの中でも、混沌より構築の比重がやや高い一枚として捉えやすい。
注目曲
「Shamal」はアルバムのタイトル曲で、作品全体の方向性をつかみやすい中心的な1曲だ。曲の進み方は直線的ではなく、パートの受け渡しを重ねながら少しずつ展開していく。Gongらしい浮遊感を残しつつ、演奏はかなりタイトで、ジャズ・ロック的な緊張感が強い。派手なフックで押すタイプではないが、バンドのこの時期の姿を端的に示す曲として重要だと思う。
「Bambooji」は、よりリズムの切れ味が目立つトラックで、アルバムの中でもバンドの演奏力が見えやすい。フレーズの反復だけで終わらず、各楽器が少しずつ色を変えながら絡むため、聴いているうちに構造が立ち上がってくる。Gongの音楽が、単なるサイケデリックな雰囲気だけではなく、アンサンブルの組み立てで成立していることがよくわかる曲だ。
「Flute Salad」のような曲では、タイトル通りフルートの存在感が前に出る。ここではロックのバンド編成の中に、ジャズや即興の感覚が自然に入り込んでいて、Gongの音楽が他の英国プログレ勢と少し違って聞こえる理由も見えやすい。メロディを追うというより、音色の重なりや流れを味わうタイプの曲として印象に残る。
盤の仕様について
このUK初出盤は、ラミネートなしのゲートフォールド・スリーブ、白い縁取りのあるグリーン・ツイン・ラベルという点が特徴的だ。Virginの1976年前後のレーベル意匠は時期ごとの差がわかりやすく、この盤もその流れの中にある。カバー表記はV2046、ラベル表記はV 2046で、細かな表記差も当時のUK盤らしい要素だ。
まとめ
『Shamal』は、Gongがサイケデリック・ロックのバンドから、より演奏主体のジャズ・ロック/フュージョン寄りへ移っていく途中の姿を記録した作品として見るとわかりやすい。前作以前の幻想性を引きずりつつ、演奏の密度と構成の明快さが増していて、バンドの変化がそのまま音になっている。Gongの中でも、時代の切り替わりを聴き取れる一枚だ。
トラックリスト
- A1 Wingful Of Eyes 6:19
- A2 Chandra 7:15
- A3 Bambooji 5:21
- B1 Cat In Clark's Shoes 7:45
- B2 Mandrake 5:07
- B3 Shamal 8:58
動画
- Wingful Of Eyes (Remastered 2018)
- Chandra (Remastered 2018)
- Bambooji (Remastered 2018)
- Cat In Clark's Shoes (Remastered 2018)
- Mandrake (Remastered 2018)
- Shamal (Remastered 2018)