Jiro Inagaki & His Soul Media - In The Groove (1973)
Jiro Inagaki & His Soul Media 1973

Jiro Inagaki & His Soul Media - In The Groove (1973)

Jazz

Jiro Inagaki & His Soul Media『In The Groove』とは

Jiro Inagaki & His Soul Media の『In The Groove』は、1973年に発表された日本のジャズ作品で、2024年に Deep Jazz Reality から再発された盤だ。名義どおり、中心にいるのはサックス奏者の稲垣次郎と彼のソウル・メディア。メンバーには岡沢章、清水靖晃、松木恒秀、今田勝、荒川康男、成毛滋、伏見哲夫、稲垣次郎、海老沢一宏、石松元、鎌田俊夫が名を連ねる。日本のジャズが、よりリズムの強さやグルーヴ感を前面に出していった時期の空気を、そのまま閉じ込めた一枚として捉えやすい作品だ。

稲垣次郎は、ビッグバンドやストレートなジャズの文脈だけでなく、当時のソウル、ファンク、クロスオーバーの要素を取り込みながら活動した人物として知られる。ソウル・メディアもその志向を共有する編成で、硬質な管楽器の推進力と、リズム隊の粘りがはっきりした演奏が印象に残る。1970年代前半の日本ジャズは、渡辺貞夫や猪俣猛、日野皓正、菊地雅章らの周辺でも多様化が進んでいたが、この作品はその中でも、タイトルどおり「ノリ」を前面に置いた姿が見えやすい。

1973年作としての位置づけ

1973年という年は、日本のジャズがアコースティックな演奏の枠内にとどまらず、電気的な音色やロック寄りのビートも視野に入れていた時期だ。『In The Groove』も、その流れの中で理解しやすい。演奏の中心にはジャズの即興性がある一方で、曲の立ち上がりや反復の置き方には、当時のクラブ・ミュージック的な身体性が感じられる。ソウル・ジャズやジャズ・ファンクと呼ばれる領域に近い耳で聴くと、構成のわかりやすさと、細部のアンサンブルの緊張感が目につく。

この時期の稲垣次郎の作品は、同時代の日本のジャズ・ロックやエレクトリック寄りの作品群と並べて語られることが多い。とくに、リズムを強く押し出す編成や、ホーン・セクションの切れ味を重視する作りは、海外のソウル・ジャズやファンクの手触りとも接続しやすい。とはいえ、単純な模倣ではなく、日本のスタジオ・ミュージシャン文化の精度が前に出るところに、この作品らしさがある。

演奏の聴きどころ

まず耳に入るのは、アンサンブルの輪郭のくっきりしたことだ。管楽器が前に出る場面でも、音がただ厚いだけではなく、フレーズの切り方が揃っているため、リフが前進する感覚が保たれている。そこに、ピアノ、ベース、ドラムが作る一定の推進力が重なり、曲が進むほどにグルーヴが定着していく。派手な展開で押すというより、同じモチーフを少しずつ熱量の高い方向へ運ぶ作りが目立つ。

稲垣次郎のサックスは、前面に出るときに音の芯がはっきりしていて、バンド全体の方向を示す役割が強い。ソロの場面でも、技巧を見せるというより、リズムに対してどう置くかが重要になっている。こうした設計は、ソウル・ジャズやジャズ・ファンクに通じるものだが、演奏者の個々の反応速度が高いため、単調にはならない。メンバーの顔ぶれを見ても、今田勝や岡沢章、松木恒秀ら、当時の日本のスタジオ/ジャズ界で確かな仕事をしていたプレイヤーが並び、曲の骨組みをしっかり支えている。

再発盤としての2024年盤

2024年の Deep Jazz Reality 盤は、オリジナルの1973年作を現代のレコードとして手に取りやすくした再発盤だ。Deep Jazz Reality は Universounds 系の再発プロジェクトとして知られ、日本のジャズ再評価に力を入れてきたレーベルで、この盤もその流れの中にある。オリジナル盤は当時の空気を伝える資料性が強く、再発盤はそうした作品を今の環境で聴きやすくする役割を持つ。レコードとしての入手性や保存性の面でも、現代のリスニング環境に接続しやすい一枚といえる。

再発によって、当時の録音の持っていた質感や、演奏の細かな分離があらためて見えやすくなることがある。『In The Groove』のように、アンサンブルの噛み合いが重要な作品では、その点が聴きどころになりやすい。オリジナルの時代感を保ちながら、2024年の盤として再び流通したことで、稲垣次郎とソウル・メディアの1973年の到達点を、今の耳で追いやすくなっている。

まとめ

『In The Groove』は、稲垣次郎とソウル・メディアが、1970年代前半の日本ジャズの中でグルーヴ志向を明確に打ち出した作品として見えてくる。管楽器の推進力、リズム隊の粘り、そしてそれらをまとめる編成の精度が、作品全体の輪郭を作っている。ジャズの即興性と、ソウル/ファンク寄りの身体感覚が同居する一枚として、1973年の日本のシーンを知るうえでも、稲垣次郎の活動をたどるうえでも、位置づけのしやすいアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 That's How I Feel
  2. A2 Blue Blood
  3. A3 It's Impossible
  4. A4 Put It Where You Want It
  5. A5 Crazy Medicine
  6. B1 Joie De Vivre
  7. B2 Papa Hooper's Barrel House Groove
  8. B3 Thrill Is Gone
  9. B4 Raven Speaks
  10. B5 Samba Chimba

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