Joan Jett & The Blackhearts - I Love Rock 'N Roll (1981)
Joan Jett & The Blackhearts『I Love Rock 'N Roll』(1981)
Joan Jett & The Blackhearts の2作目にあたる『I Love Rock 'N Roll』は、1981年にUSのThe Boardwalk Entertainment Co.から出たアルバムだ。Joan Jett が Runaways 解散後に歩んだソロ活動と、Blackhearts というバンド名義の輪郭が、ここでかなりはっきり見えてくる作品でもある。前作『Bad Reputation』で示した直進性を、そのままアルバム全体の骨格にしたような内容で、短い曲、分かりやすいリフ、前へ出る歌声が中心に置かれている。
この時期の Joan Jett は、ロックンロールを女性の側から真正面に引き受ける存在として見られることが多い。The Runaways での経験を経て、よりシンプルで硬質な形にまとめ直したのが Blackhearts 期のサウンドだと思える。ハードロック寄りの演奏だが、過度に大きく広げず、リフとビートで押し切る作り。1980年前後のパンク以後のロックの流れと、FMラジオ向けのフックを両方持つ、当時ならではの立ち位置だ。
アルバム全体の印象
録音は Kingdom Sound Studio で行われ、A5とB5は Soundworks と Kingdom Sound Studio の両方で録音されたとある。音の作りはかなり明快で、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの役割がはっきりしている。重く粘るというより、前に出る音像。アルバムを通して聴くと、派手な装飾は少ないのに、曲ごとの押し出しが強い。アリーナ向けの大仰さより、ライブハウスの熱量をそのまま盤に閉じ込めたような感触がある。
収録曲の並びも、ヒット曲を軸にしながら、カバー曲やロックンロールの定番感を持つ曲で固められている。Joan Jett が当時すでに「自分の曲」を作るだけでなく、「他人の曲を自分のものにする」力を持っていたことが、このアルバムではよく見える。実際、彼女の歌い方は楽曲の出自を問わず、同じ温度で前に押し出していく。
注目曲「I Love Rock 'N Roll」
タイトル曲の「I Love Rock 'N Roll」は、このアルバムを語るうえで外せない代表曲だ。もともとは The Arrows の曲として知られていたが、Joan Jett & The Blackhearts 版では、リフの単純さとコーラスの反復が強く作用して、かなり大衆的なヒット曲として定着した。イントロの時点で曲の輪郭がほぼ見えてしまう作りで、そこに Joan Jett の声が乗ると、意味より先に勢いが立ち上がる。
この曲の面白さは、ロック賛歌の体裁を取りながら、演奏の密度は案外あっさりしているところにある。音数を増やして盛り上げるのではなく、同じフレーズを押し続けることで熱を作る。結果として、歌詞の内容以上に「このバンドが鳴らすロック」の像が残る。シングルとしての強さも、アルバム全体の印象を決めている一曲だ。
注目曲「Crimson and Clover」
「Crimson and Clover」は Tommy James & the Shondells の曲として知られるカバーで、Joan Jett 版では原曲の甘さをそのまま再現するというより、少し乾いた質感に置き換えている。メロディの流れ自体はなじみやすいが、演奏の重心が低く、歌の置き方も淡々としているため、ポップソングをロックバンドの文法に引き寄せた感じが出る。
この曲がアルバムに入ることで、単なる直球ハードロック盤ではなく、1960年代のポップと1970年代以降のギターサウンドをつなぐ視点も見えてくる。Joan Jett がカバーで見せるのは、原曲の雰囲気を壊すことではなく、曲の芯だけを残して自分のバンドの音で鳴らし直すやり方だと思える。
注目曲「Little Drummer Boy」
「Little Drummer Boy」も意外性のある収録曲だ。クリスマス・ソングとして広く知られる題材を、ここではロックバンドの編成で扱っている。こうした選曲は、単に変わり種として置かれているというより、Joan Jett & The Blackhearts のレパートリーがロックの定番だけに閉じていないことを示しているようにも見える。
アルバムの中では異質に感じられるが、その異質さがかえって曲集全体の幅を作っている。タイトル曲のような分かりやすい推進力のある曲と並ぶことで、バンドの演奏力とアレンジの切り替えが確認できる構成だ。A面B面を通して、同じテンションだけで走り切らない点もこの作品の特徴のひとつだろう。
作品の位置づけ
『I Love Rock 'N Roll』は、Joan Jett & The Blackhearts にとって商業的にも認知の面でも大きな意味を持つアルバムとして扱われることが多い。前作から続くバンドの形を整えながら、タイトル曲の大ヒットによって、Joan Jett の名前をより広い層へ押し出した。The Runaways 以後の女性ロック・シンガーという枠にとどまらず、80年代のロック・アイコンとして見られる土台になった作品とも言えそうだ。
同時代のハードロックや、より派手なアリーナ志向のバンドと比べると、このアルバムはかなり簡潔だ。だが、その簡潔さがそのまま強さになっている。ギターリフ、ビート、声、その3つを中心に据える作りは、今聴いても輪郭が崩れにくい。ヒット曲だけでなく、アルバム全体が同じ方向を向いているため、作品としてのまとまりも感じやすい一枚だ。
盤について
今回のUS盤は The Boardwalk Entertainment Co. からの1981年リリースで、白地にピンクのハイプステッカー付きの個体もあったようだ。ステッカーには収録曲として「I Love Rock 'N Roll」「Crimson And Clover」「Little Drummer Boy」などが記されている。ジャケットや盤面だけでなく、当時の販促の雰囲気まで含めて、1981年の空気を感じやすいリリースだと思える。
Joan Jett & The Blackhearts の入口としても、80年代初頭のロックを知る一枚としても、かなり分かりやすい構成のアルバムだ。特にタイトル曲の存在感が強く、そこからアルバム全体へ入っていく流れが自然に作られている。ロックンロールの定番を、バンドの現在形として鳴らした記録、と言えそうだ。
トラックリスト
- A1 I Love Rock 'N Roll 2:55
- A2 (I'm Gonna) Run Away 2:27
- A3 Love Is Pain 3:07
- A4 Nag 2:46
- A5 Crimson And Clover 3:17
- B1 Victim Of Circumstance 2:54
- B2 Bits And Pieces 2:07
- B3 Be Straight 2:40
- B4 You're Too Possessive 3:35
- B5 Little Drummer Boy 4:14
動画
- Joan Jett & The Blackhearts - I Love Rock ‘n’ Roll (1982) • TopPop
- Joan Jett and The Blackhearts-(I'm Gonna) Run Away
- Joan Jett - (I'm Gonna) Runaway (video)
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