Khruangbin - Con Todo El Mundo (2018)
Khruangbin 2018

Khruangbin - Con Todo El Mundo (2018)

Folk, World, & Country Funk / Soul Funk Psychedelic

Khruangbin『Con Todo El Mundo』について

Khruangbinの『Con Todo El Mundo』は、2018年に発表されたアルバム。Houston, Texasを拠点にしながら、バンドのルーツはBurton, Texasにあり、国境や地域の感覚を軽く飛び越えていくような音作りで知られるグループの作品だ。バンド名の「Khruangbin」はタイ語で「飛行機」を意味し、メンバーが受けたタイのロックやファンクへの影響をそのまま名前に落とし込んでいる点も、この作品の聴こえ方とよくつながっている。実際、ここで鳴っている音は、アメリカ南部の土壌に根ざしながら、世界各地の音楽の輪郭をゆるやかに混ぜ合わせたものとして捉えやすい。

レーベルはNight Time Stories。オリジナル・アーティスト作品を扱う姉妹レーベルとして2013年に始まったラインで、2018年のUK盤として出たこのアルバムも、その文脈に沿ったリリースになっている。Khruangbinにとっては、デビュー作『The Universe Smiles Upon You』に続く2作目のフルレンジの作品で、バンドの輪郭がよりはっきり見える位置づけの一枚といえる。

作品全体の印象

このアルバムの核にあるのは、Donald Johnson, Jr.のドラム、Laura Leeのベース、Mark Speerのギターが、過不足なく噛み合うこと。曲は派手に展開しすぎず、短いモチーフや反復を丁寧に積み重ねていく。Funkのリズム感、Psychedelicな浮遊感、FolkやWorld Musicの要素が同じフレームの中で並び、どれか一つが前に出すぎないバランスが保たれている。聴き進めるほどに、演奏の隙間や間合いそのものが曲の表情になっていることが分かる作りだ。

録音はテキサスの納屋で行われているというバンドの制作環境とも重なって、音の輪郭に余計な装飾が少ない。乾いた空気感、低音の粘り、ギターのエコーの残り方が、屋外の景色を連想させることもある。いわゆる“世界音楽”的な参照を並べるだけでなく、アンサンブルの質感でその外側へ連れていくタイプの作品として聴こえる。

注目曲「Maria También」

このアルバムを語るうえで「Maria También」は外せない。軽快なベースラインと、細かく跳ねるギターのフレーズが、曲全体を前へ押し出していく。リズムはタイトだが、詰め込みすぎない。そこがKhruangbinらしいところで、音数を増やさなくても推進力が出る構成になっている。メロディの反復もわかりやすく、アルバムの中でも耳に残りやすい一曲だ。

この曲は、バンドの代表曲として語られることが多い。演奏の手触りは非常にシンプルに見えるが、実際にはドラムの置き方とベースのうねりが細かく支えていて、そこにギターの音色が乗ることで、南西部の乾いた空気と少し遠い土地のムードが同居している。Khruangbinの魅力を初めて掴む入口として、この曲が挙がるのも納得しやすい。

注目曲「Evan Finds the Third Room」

「Evan Finds the Third Room」は、アルバムの中でも少し視界が開けるような感触を持つ曲だ。フレーズ自体はシンプルだが、反復の中で微妙なニュアンスが変わっていくため、同じ場所を回っているようでいて、少しずつ景色が動いていく。ベースとドラムの受け渡しが目立つ構成で、ギターはその上で輪郭を描く役回りに回る。

この曲の良さは、派手な盛り上がりではなく、一定の温度を保ったまま長く引っ張れるところにある。アルバム全体に通じる「静かな持続力」がよく出ていて、Khruangbinの演奏がいかにミニマルな素材から空間を作るかが分かりやすい。Funkの躍動とPsychedelicな余韻が、ここではかなり自然に結びついている。

アルバムとしての位置づけ

『Con Todo El Mundo』は、Khruangbinが持つ国際的な感覚を、より明確な形で示した作品として捉えやすい。タイのロックやファンクへの敬意を名前に込めたバンドが、アメリカ南部で録音し、UKレーベルから世に出したアルバムという流れそのものが、このグループの立ち位置をよく表している。地域性の強い音に見えながら、実際には参照先がひとつに絞られない。その多方向性が、作品全体の魅力になっている。

同時代のインストゥルメンタル・バンドや、ファンク/サイケデリックの再解釈を行うグループと比べても、Khruangbinは演奏の温度を一定に保つのがうまい。強い主張を前面に出すのではなく、音の配置と反復で聴き手を運ぶ。そのやり方が、このアルバムでは特にきれいに整理されている。2018年時点でのKhruangbinの方向性を示す、輪郭のはっきりした一枚だ。

まとめ

『Con Todo El Mundo』は、Funk、Soul、Folk、World Musicの要素を、Khruangbin独自の手つきで束ねた2018年作。代表曲「Maria También」を中心に、演奏の隙間、反復の強さ、空間の作り方がじわじわ効いてくる。派手な展開よりも、音の置き方そのものに耳が向く作品で、バンドの個性がはっきり読み取れる内容になっている。

トラックリスト

  1. A1 Como Me Quieres
  2. A2 Lady and Man
  3. A3 Maria También
  4. A4 August 10
  5. A5 Como Te Quiero
  6. B1 Shades of Man
  7. B2 Evan Finds the Third Room
  8. B3 A Hymn
  9. B4 Rules
  10. B5 Friday Morning

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