Kikagaku Moyo - Kumoyo Island (2022)
Kikagaku Moyo 2022

Kikagaku Moyo - Kumoyo Island (2022)

Rock Psychedelic Rock J-Rock

Kikagaku Moyo『Kumoyo Island』レビュー

Kikagaku Moyoの『Kumoyo Island』は、2022年にリリースされた作品で、バンドにとって最後のスタジオ作として位置づけられる一枚だ。東京で結成されたこのバンドは、2010年代の日本のサイケデリック・ロックを代表する存在のひとつとして知られてきたが、本作はその活動の集大成というより、ひとつの区切りを静かに示すアルバムとして受け取られている。レーベルはGuruguru Brain。バンド自身と近い距離感を持つレーベルからの発表という点も、この作品のまとまりに関わっているように見える。

収録内容は、これまでのKikagaku Moyoらしい演奏の密度を保ちながらも、曲ごとの輪郭が比較的はっきりしている印象がある。長尺の展開で押し切るだけでなく、リズムの置き方や声の入り方、音の引き算が細かく組まれている。聴き進めるうちに、単なるサイケデリック・ロックの枠には収まらない、歌ものとしての整理された感触も見えてくる。2022年という年に、このバンドがどこへ向かっていたかを確認する意味でも重要な作品だろう。

バンドの終盤に置かれた作品として

Kikagaku Moyoは2012年に東京で始動し、2022年に活動休止を発表した。1月には、この年のあと無期限活動休止に入ること、そして5月に出る次作が最後の作品になることが公表されている。そうした流れを踏まえると、『Kumoyo Island』は単独で聴くよりも、バンドの終盤の空気を背負った作品として見えてくる。実際、演奏には慌ただしさよりも、まとまりと整理がある。最後のレコードとして、派手な総決算ではなく、各メンバーの役割をきちんと置いた作りに感じられる。

メンバーはKotsuguy、Go Kurosawa、Daoud Popal、Ryu Kurosawa、Tomo Katsurada。インド音楽やフォーク、ジャズ的な間合いを含むサイケデリック・ロックという文脈で語られることが多いが、本作ではそうした要素が前面に出るというより、曲の土台として自然に組み込まれている。2010年代の日本のサイケ・シーンを代表するバンドとして、同時代の海外勢と並べて語られることも多かったが、『Kumoyo Island』ではその比較よりも、バンド自身の言語がすでに確立していたことのほうがはっきりしている。

注目曲「Monaka」

本作の中でも「Monaka」は、アルバムの入り口として機能しやすい曲だ。リズムの立ち上がりが明快で、音の積み重ねも追いやすい。Kikagaku Moyoの楽曲は、しばしば反復の中で細部が変わっていくが、この曲もその組み立てがわかりやすい部類に入る。ギターのフレーズが前へ出すぎず、歌とリズムの間を行き来するように配置されているため、派手さよりも流れの良さが残る。

聴いていると、単に勢いで押すのではなく、音数を整理しながら推進力を作っているのが伝わってくる。バンドの持ち味である土着的なビート感と、柔らかくも芯のあるメロディの両方が見えやすい曲でもある。アルバム全体のトーンをつかむには、まずこの曲から入ると輪郭が見えやすい。

注目曲「Dripping Sun」

「Dripping Sun」は、Kikagaku Moyoの代表曲として触れられることが多い一曲だ。もともとバンドのライブや配信でも存在感のある曲だったが、『Kumoyo Island』でもその役割は大きい。タイトルの通り、曲の進行には熱のこもった感触がありながら、音は過度に飾られない。歌、ギター、リズムがそれぞれの位置を保ちながら進むため、サイケデリックな広がりがありつつも、曲としての芯が崩れにくい。

この曲の聴きどころは、展開の大きさそのものより、同じモチーフを繰り返しながら少しずつ温度を上げていくところにある。Kikagaku Moyoの中でも比較的広く知られている曲だけに、バンドの最終盤においてこの楽曲がどう鳴っているかは象徴的でもある。過去作で見せてきた伸びやかな演奏が、そのまま最後まで持続している印象だ。

注目曲「Kumoyo Island」

タイトル曲の「Kumoyo Island」は、アルバムの核に置かれているように見える。曲名からして作品全体のイメージをまとめる役割があり、実際の音作りもその方向に沿っている。Kikagaku Moyoの作品には、外へ広がる感じと、内側へ沈んでいく感じが同居しているが、この曲ではその両方が比較的落ち着いた形で表れている。サイケデリックな要素を前面に押し出すというより、流れの中で自然に滲ませていく作り。

アルバムを通して聴くと、この曲は終盤の印象を強く残しやすい。大きな転調や急な変化で驚かせるタイプではないが、バンドの演奏がどこまで整理されていたか、どこまで歌を中心に据えられていたかが見えやすい。最後の作品という背景を抜きにしても、Kikagaku Moyoの音のまとまりを確認できる一曲だ。

レーベルと流通面

本作はGuruguru Brainからのリリースで、レーベル番号はGGB-028LP。Guruguru Brainは、Go KurosawaとTomo Katsuradaによって2014年に立ち上げられたインディペンデント・レーベルで、アジア圏の気分のいい音楽を軸に展開してきた。東京から始まり、のちにアムステルダム、さらにロッテルダムを経て、現在は福岡へ拠点を移している。Kikagaku Moyoの作品がこのレーベルから出ていることは、バンドの活動史とレーベルの歩みが重なっている点でも興味深い。

Worldwideでの流通体制も整っており、作品が地域をまたいで届く設計になっている。日本のバンドでありながら、国内だけで完結しない広がりを持っていたことは、Kikagaku Moyoの評価を語るうえで外しにくい。

まとめ

『Kumoyo Island』は、Kikagaku Moyoが最後に残した作品として、過剰に語らずにバンドの輪郭を残したアルバムだ。演奏の力、曲の整理、歌の置き方がそれぞれはっきりしていて、派手な結論よりも、積み上げてきたものの確認に近い。代表曲「Dripping Sun」を含みつつ、全体としてはアルバム単位でのまとまりが強い。2012年から続いてきたバンドの歩みの終点を示す一枚として、静かに位置づけられる作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Monaka
  2. A2 Dancing Blue
  3. A3 Effe
  4. A4 Meu Mar
  5. B1 Cardboard Pile
  6. B2 Gomugomu
  7. B3 Daydream Soda
  8. B4 Field Of Tigerlilles
  9. B5 Yayoi, Iyayoi
  10. B6 Nap Song
  11. B7 Maison Silk Road

動画

Share
記事一覧に戻る
toast