King Gizzard And The Lizard Wizard - Flying Microtonal Banana (Explorations Into Microtonal Tuning Volume 1) (2017)
King Gizzard And The Lizard Wizard 2017

King Gizzard And The Lizard Wizard - Flying Microtonal Banana (Explorations Into Microtonal Tuning Volume 1) (2017)

Rock Psychedelic Rock Prog Rock Alternative Rock

King Gizzard And The Lizard Wizard『Flying Microtonal Banana』を聴く

オーストラリア・メルボルン出身のKing Gizzard And The Lizard Wizardが2017年に発表した『Flying Microtonal Banana(Explorations Into Microtonal Tuning Volume 1)』は、彼らの多作ぶりの中でも、音の作り方そのものを大きく組み替えた作品として知られている。Psychedelic Rockを軸にしながら、Prog RockやAlternative Rockの要素も見えるが、何より目を引くのはマイクロトーナル・チューニングの導入だ。通常の西洋音楽で使われる半音よりさらに細かい音程を取り入れ、バンドの持つ推進力と奇妙な揺れを同時に前へ出している。

録音はStu MackenzieがFlightless HQで2016年4月から9月にかけて行ったとされる。作品全体は、既存のロックの語法に乗りながらも、ギターのフレーズやリフの感触がどこか既知のものから少しずれる。そのずれが曲全体の印象を強めていて、単なる変則的な実験ではなく、バンドの勢いを別の角度から見せるアルバムになっている。

この作品の位置づけ

King Gizzard And The Lizard Wizardは2010年結成のサイケデリック・ロック・バンドで、2010年代に入ってから非常に多くの作品を連続して発表してきた。その中で本作は、マイクロトーナル・チューニングという手法をバンドの表現に初めて持ち込んだ点で、かなり重要な位置を占める。タイトルにもある通り、後年の『Explorations Into Microtonal Tuning Volume 2』へつながる出発点でもある。

King Gizzardの作品は、70年代ロックの文脈や現代的なガレージ感、プログレッシブな構成感が一つの作品内で交差することが多いが、本作ではそこに「音程の設計」が加わる。結果として、リフの輪郭やメロディの着地が通常のロックよりも少し不安定に聴こえる場面があり、その不安定さが曲の推進力として機能している。

アルバム全体の聴きどころ

このアルバムは、派手な装飾よりも、反復するリフと細かな音程の変化で引っ張る作りが中心だ。聴いていると、いわゆる「変拍子の妙」だけでなく、同じフレーズが少しずつ表情を変える感覚が残る。マイクロトーナル・チューニングは珍しさだけで終わらず、サイケデリックな浮遊感と、ロックの直進性を同時に押し出している。

また、タイトルにある“Banana”やジャケットの黄色いビジュアル、限定盤のメタリックゴールドアクセントのジャケットなど、作品の見せ方も含めて記憶に残りやすい。さらに、スクラッチ&スニッフのステッカーやダウンロードカード、予約特典のZineといった付属要素もあり、2010年代のアナログ盤らしいパッケージ感もある。

注目曲「Rattlesnake」

本作を語る上で外せないのが「Rattlesnake」だろう。アルバムの中でも特に反復の力が強く、リフが延々と回り続ける構成が印象に残る。単純な繰り返しに見えて、音の間隔や鳴り方が少しずつずれていくため、同じ場所を回っているようでいて、実際にはじわじわ前進している感触がある。

この曲は、King Gizzardの中でも代表曲の一つとして扱われることが多く、本作の方向性を端的に示す存在でもある。マイクロトーナル・チューニングの面白さが、理屈より先に耳へ入ってくる曲で、バンドの持つ執拗さと、変則的な響きの組み合わせがよく出ている。

注目曲「Sleep Drifter」

「Sleep Drifter」は、アルバムの中でも比較的メロディの流れがつかみやすい曲として耳に残る。リフの推進力がありつつ、歌のラインが前面に出るため、実験色の強い作品の中で入り口になりやすい一曲だ。耳触りは鋭いが、曲の構造自体は整理されていて、バンドの演奏力がそのまま形になっている。

ここでも、通常のロックで聴き慣れた音程感から少し外れた響きが効いている。派手に奇抜さを見せるというより、曲の中に自然に入り込んでいる点が面白い。結果として、サイケデリックな広がりと、歌ものとしてのまとまりの両方が見えてくる。

注目曲「Nuclear Fusion」

「Nuclear Fusion」は、本作の中でも特にタイトルと音の動きが結びついて聴こえる曲だ。細かく刻まれるフレーズと、せわしなく進む展開が印象的で、アルバムの中で実験性が前面に出る場面の一つになっている。ギターの音程感が普通のロックよりわずかにズレていることで、曲全体の緊張感が保たれている。

この曲は、King Gizzardが単に変わったチューニングを試しただけではなく、その条件の中でしっかりロックとして機能する曲を書いていることを示している。音の配置が変わっても、バンドの勢いが失われていないところが重要だ。

まとめ

『Flying Microtonal Banana』は、King Gizzard And The Lizard Wizardが自分たちのロックを拡張するために、音程のルールそのものへ踏み込んだ作品だ。2017年の時点でこの手法をアルバム全体に持ち込み、しかもサイケデリック・ロックとしての快感を保っている点に、このバンドらしさがある。聴感としては、奇をてらうよりも、既存のロックの歯車を少しずつずらしていくような手つきが印象に残る。

作品の中では「Rattlesnake」を中心に、反復と微細な音程差がどう効くのかが分かりやすい。King Gizzardの中でも、後のマイクロトーナル作品へつながる起点として見ておきたい一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 Rattlesnake
  2. A2 Melting
  3. A3 Open Water
  4. B1 Sleep Drifter
  5. B2 Billabong Valley
  6. B3 Anoxia
  7. B4 Doom City
  8. B5 Nuclear Fusion
  9. B6 Flying Microtonal Banana

動画

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