Larry Carlton - Alone / But Never Alone (1986)
Larry Carlton 1986

Larry Carlton - Alone / But Never Alone (1986)

Jazz Fusion

Larry Carlton『Alone / But Never Alone』(1986)

Larry Carltonの『Alone / But Never Alone』は、1986年にMCA Recordsからリリースされた作品で、ギタリストとしての個性が前面に出たフュージョン作品だ。Larry Carltonは1948年生まれのアメリカのジャズ・ギタリストで、60年代から活動を続けてきた人物であり、この時期にはスタジオ・ミュージシャンとしての経験と、ソロ・アーティストとしての表現がきれいに重なっている。タイトルが示す通り、ひとりで弾くこと、そしてひとりではない響きの両方を意識した作りで、ギターの音色と間の取り方が作品全体の中心にある。

本作は、Hollywood, CAのRoom 335で録音されている。Room 335という名前はLarry Carltonのキャリアを語るうえでよく出てくるもので、彼の音楽世界を象徴する場所としても知られている。レコードのオリジナル仕様としては、MCA Master Seriesのインナー・スリーブが付属し、オリジナルのシュリンクには「Audiophile」、さらに「Custom pressed on KC 569 premium virgin vinyl」と記されたステッカーが貼られていた。音質面を意識した作りであることが、パッケージからも読み取れる。

作品の位置づけ

1980年代半ばのLarry Carltonは、いわゆるジャズ・フュージョンの文脈の中でも、プレイヤーとしての輪郭がはっきりした時期にあたる。技巧を見せること自体よりも、フレーズの置き方、コードの響き、トーンの管理といった部分に重心があるのが特徴だ。Pat MethenyやLee Ritenour、Joe Passのように同時代のギタリストと並べて語られることはあるが、Larry Carltonはより乾いた音色と、歌うようでいて過剰に装飾しない運びで区別されやすい。

このアルバムでも、その持ち味は変わらない。派手な展開を連ねるというより、ひとつひとつの音に意味を持たせる構成で、タイトルの「Alone」と「But Never Alone」がそのまま演奏の感触に結びついている。ソロ・ギター的な親密さと、バンド的な広がりが同居している点が、この作品の骨格といえる。

聴きどころ1: タイトル曲「Alone / But Never Alone」

表題曲は、このアルバムの考え方をもっとも端的に示す1曲だ。Larry Carltonのギターは、音数で押すのではなく、短いフレーズの余白や音の減衰まで含めて組み立てられているように聴こえる。旋律が前へ出る場面でも、強く弾き切るというより、音を置いていく感覚がある。そこがこの曲の核で、タイトルの「ひとり」と「ひとりではない」が、演奏の中で自然につながっている。

また、フュージョン作品として聴いたときにも、リズムの推進力よりフレーズの流れを優先している印象が強い。ギター・アルバムでありながら、単独楽器の見せ場に閉じない作りで、周囲の音との関係性がきちんと残る。Larry Carltonのソロ作品の中でも、音色の整理された聞こえ方が印象に残るタイプの一枚だ。

聴きどころ2: Room 335由来の空気感

録音場所がRoom 335であることは、作品の性格を理解するうえでわかりやすい手がかりになる。Larry Carltonの音は、スタジオでの精密さと、演奏の自然さの両方が重要で、このアルバムでもそのバランスが保たれている。ギターの輪郭は明瞭だが、冷たくなりすぎない。音の芯がある一方で、フレーズの終わり方には柔らかさが残る。

1986年という時期を考えると、同じフュージョンでもよりエレクトリックな方向へ振れる作品は多かったが、本作はその中で比較的落ち着いた設計に見える。演奏の見せ場を積み上げるより、全体の流れを崩さずに聴かせるつくりで、Larry Carltonのキャリアの中でも、ギタリストとしての輪郭を静かに示すアルバムとして位置づけられるだろう。

音の作りと盤の特徴

オリジナル盤はUSリリースで、MCA Recordsの品番はMCA-5689。MCAの1980年代US LPラベルは、ブルー地にレインボーの意匠が使われていた時期にあたる。さらに本作は「Audiophile」表記やプレミアム・ヴィニールの案内があり、音質への配慮が前面に出たタイトルだったことがうかがえる。こうした仕様は、Larry Carltonのようにトーンの細部が重要な演奏者には相性がよい。

総じて『Alone / But Never Alone』は、Larry Carltonのギターをじっくり聴くための1986年作だ。フュージョンの枠組みの中で、速弾きや派手な展開よりも、音の置き方と響きの整理で聴かせる内容になっている。タイトル曲を中心に、ギター1本で成立する親密さと、周囲の空間を含めた広がりが同居する一枚として記憶される作品だ。

トラックリスト

  1. A1 Smiles And Smiles To Go 5:44
  2. A2 Perfect Peace 4:25
  3. A3 Carrying You 3:58
  4. A4 The Lord's Prayer 5:07
  5. B1 High Steppin' 6:42
  6. B2 Whatever Happens 4:25
  7. B3 Pure Delight 5:31
  8. B4 Alone / But Never Alone 3:32

動画

Share
記事一覧に戻る
toast