Lene Lovich - Stateless (1978)
Lene Lovich 1978

Lene Lovich - Stateless (1978)

Electronic Rock New Wave Synth-pop Leftfield

Lene Lovich『Stateless』について

Lene Lovichの『Stateless』は、1978年に初めて世に出たデビュー作として知られるアルバムで、ニューウェイヴ初期の空気をそのまま封じ込めたような一枚だ。アメリカ・デトロイト生まれで、10代でイギリスに移ったLovichは、英国のパンク以後の流れの中で個性を強く打ち出したシンガー/ソングライターとして位置づけられる。この作品でも、歌メロのまとまりより先に、声の使い方やフレーズの切り方、楽曲の輪郭の作り方が前面に出ている。

盤としてここで扱うのは1979年カナダ盤。レーベルはStiff-Epic(JE 36102)で、StiffがCBS系とのジョイントとして展開していた時期のリリースにあたる。Stiffの“flexible”な姿勢は、ロック、電子音、ポップの境界を軽く越えるこの時代の音作りと相性がいい。『Stateless』もその例に漏れず、ロックの骨格を持ちながら、リズムや音色の配置にかなりひねりがある。

アルバム全体の印象

『Stateless』を聴くとまず、Lene Lovichの声が作品の中心にあることがはっきり分かる。細く鋭いというより、音程の取り方や語尾の揺らし方で輪郭を作るタイプで、歌そのものがリズムの一部として機能している。曲によってはメロディが前へ出すぎず、むしろ言葉の置き方や間の取り方が印象を残す。ニューウェイヴの中でも、単純なパンクの延長ではなく、実験性とポップ感が同居した方向の作品だ。

同時代の比較でいえば、Suzi Quatroのようなロックの押し出しの強さとも、Chrissie Hyndeのような骨太なバンド感とも少し違う。むしろ、後のアート寄りニューウェイヴや、個性の強い女性ヴォーカル作品に通じる部分がある。音の作りはコンパクトだが、楽曲の組み立てはかなり独特で、短いフレーズを積み上げて曲を進める場面が多い。

「Lucky Number」

このアルバムを語るうえで外せないのが「Lucky Number」だ。Lene Lovichの代表曲として広く知られ、アルバムの顔になっている。タイトルから受ける軽さに対して、実際の曲はかなり癖がある。リフの反復、跳ねるようなリズム、そして声のアクセントが曲全体を引っ張っていく構造で、普通のポップソングの感覚だけでは捉えにくい。

この曲の面白さは、キャッチーさがあるのに、耳に残るポイントが一つに固定されないところにある。フックは確かにあるが、それがメロディだけではなく、発音、間合い、サウンドの切れ味に分散している。ニューウェイヴ期のシングルらしい即効性と、アヴァンギャルド寄りの違和感が同時に出ている代表曲だ。

「Say When」

「Say When」は、アルバムの中でも曲調のひねりが分かりやすい一曲だ。歌の進み方がまっすぐではなく、リズムの置き方に引っかかりがある。Lovichのボーカルはここでも装飾的になりすぎず、むしろ音の隙間を使って曲を立ち上げている。派手な展開より、細かなニュアンスで引き込むタイプの楽曲と言える。

この曲は後年の再編集やリミックスの対象にもなっており、アルバム『Stateless』が単なる初期作品ではなく、発売後も異なる形で扱われてきたことを示している。曲単位で見ても、作品全体の中でLene Lovichの個性がもっとも見えやすい部類だ。

「I Think We're Alone Now」

こちらはカバー曲だが、オリジナルの親しみやすさをそのままなぞるのではなく、かなり別の温度で処理している。原曲のポップな輪郭を残しつつ、音の配置や歌い回しで不穏さと軽さが同居する仕上がりだ。ニューウェイヴ期のカバーらしく、単なる懐古ではなく、曲の性格を組み替える方向に向かっている。

この曲が入ることで、アルバムは完全な自作色だけで閉じず、当時のポップ・ソングを新しい文法で読み替える感覚も見えてくる。Lovichの作品が、シンガーの個性だけでなく、既存曲の再解釈でも存在感を示せることが分かるポイントだ。

オリジナル盤とその後の版について

『Stateless』は1978年の初出以後、短い期間に複数の版が出たことが知られている。初期には赤盤、その後に黒盤のグレーラベル版があり、さらに同じ曲順ながら一部が再録音・リミックスされた改訂版も流通した。国によってはUS向けに曲順を変え、さらに別のリミックスを施した版も存在する。つまり、このアルバムは一枚の固定された完成形というより、初期ニューウェイヴらしく流通の中で姿を変えていった作品でもある。

今回の1979年カナダ盤は、その流れの中にある一枚として見ると分かりやすい。『Stateless』というタイトル通り、定まった型に収まりきらない感触が作品全体にある。Lene Lovichの初期代表作として、声、曲構成、時代性の三つがまとまって出たアルバムだ。

トラックリスト

  1. A1 Home 3:40
  2. A2 Sleeping Beauty 3:00
  3. A3 Lucky Number 2:47
  4. A4 Too Tender (To Touch) 4:04
  5. A5 Say When 2:49
  6. B1 Writing On The Wall 3:08
  7. B2 Telepathy 2:45
  8. B3 Momentary Breakdown 3:18
  9. B4 I Think We're Alone Now 2:45
  10. B5 One In A 1,000,000 2:48
  11. B6 Tonight 4:27

動画

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