Les Maledictus Sound - Les Maledictus Sound (1968)
Les Maledictus Sound『Les Maledictus Sound』について
Les Maledictus Soundは、Jean-Pierre Massieraを中心にしたフランスのコンセプト・グループで、1968年に1枚だけ残した作品として知られている。今回のイタリア盤は2000年リリースの再発で、オリジナルは1968年録音。録音はニースのStudio SEMで行われており、当時のフランス周辺のサイケデリック・ロック、イージーリスニング、ジャズの要素が交差する、かなり特殊な位置にあるアルバムだ。アーティスト名と同名のタイトルで出ているが、資料によっては別タイトルで呼ばれることもある作品で、当時の流通や再発のされ方も含めて少し複雑な背景を持つ。
この作品の核にいるのは、フランスの音楽家Jean-Pierre Massiera。彼は60年代末から70年代にかけて、ロック、ポップ、実験音楽の境界をまたぐ仕事で知られる人物で、Les Maledictus Soundはその中でもかなりコンセプチュアルな側面が強いプロジェクトと見てよさそうだ。参加メンバーにはJean-Claude Chavanat、André Ceccarelli、Patrick Djivas、Jean Buzonらの名前が並び、演奏面の厚みも感じられる構成。いわゆるバンド作品というより、制作主導の色が濃いアルバムという印象がある。
作品の輪郭
全体を通して耳に入ってくるのは、ロックの推進力だけではなく、室内楽的な組み立てや、軽音楽的な明快さ、スタジオ編集を前提にした音の置き方だ。曲ごとの輪郭がはっきりしていて、同じ1968年のサイケデリック作品の中でも、爆発的な即興や長尺ジャムに寄り切るタイプではない。むしろ、短い断片や展開の切り替えを積み重ねていく作りで、Massieraらしい遊び心が前面に出ているように感じられる。
ジャズ、ロック、ポップという分類が付いているが、実際にはその境目を行き来する作りで、メロディの扱いは比較的明瞭だ。そこに歪んだギターや、奇妙な効果音、コーラスの重ね方が加わることで、普通のイージーリスニングには収まらない。フランス産の実験ポップや、同時代のサイケデリック作品に通じる感触がありつつ、アレンジの見通しは悪くない。聴感上は、混沌よりも構成のほうに意識が向く作品だ。
注目曲1: タイトル曲「Les Maledictus Sound」
アルバムの顔になるのは、やはりタイトル曲だろう。作品全体の性格を短い時間で示す役割を持っていて、テーマの提示、音色の切り替え、曲想の変化が比較的コンパクトにまとまっている。Massiera周辺の作品にある、普通のロック・バンドの枠から少し外れた気配がここでよく見える。旋律は耳に残りやすい一方で、バックの処理はかなり作り込まれていて、単純な歌モノとしては終わらない。
この曲では、ポップな輪郭と実験的な手触りが同居している点が重要だ。サイケデリック・ロックの文脈で聴くと、音の飛び方や配置の妙が目立つし、イージーリスニングの文脈で見ると、そこにある違和感が作品の個性として立ち上がる。アルバム全体の入口として、Les Maledictus Soundが何者かを端的に示す一曲といえる。
注目曲2: 収録曲の中で目立つ展開系トラック
このアルバムでは、曲ごとに性格がかなり変わるので、展開の大きいトラックが印象に残りやすい。静かなパートから急に色数が増えたり、リズムの置き方が変わったりする場面があり、単なる雰囲気作りではなく、編集と構成で聴かせる作りになっている。特に、演奏の粒立ちが見える部分では、ジャズ由来のリズム感とロックの推進力が並走しているのがわかりやすい。
こうした曲では、Massieraのプロデュース感覚が強く出ているように感じられる。フランスの60年代末の実験的ポップや、映画音楽的なアプローチを思わせる部分もあり、場面転換の速さがそのまま作品の個性になっている。1曲単位で完結しながら、アルバム全体ではひとつのまとまりとして聴ける構造だ。
1968年の作品としての位置づけ
1968年という年を考えると、この作品はロックの拡張が一気に進んだ時代の空気をよく映している。英米のサイケデリック作品が大きく注目される一方で、ヨーロッパではスタジオを使った実験性や、軽音楽との接続が独自の方向に進んでいた。その中でLes Maledictus Soundは、フランスの実験ポップ、サイケデリック・ロック、ジャズ的な演奏感覚をまたぐ存在として位置づけられる。
同時代の比較対象としては、音の作り込みや発想の飛び方という意味で、フランスやイタリアのアンダーグラウンド寄りの作品群が思い浮かぶ。ただし、このアルバムは過激さだけを売りにするものではなく、メロディとアレンジの整合性が保たれている点が特徴だ。だからこそ、単発の奇作ではなく、Massieraの仕事の流れの中で見る価値がある一枚として残っているのだと思う。
2000年イタリア盤について
今回のDagored盤は、イタリアのレーベルによる2000年再発。Dagoredはフィレンツェ近郊を拠点に、映画音楽の再発で知られるレーベルで、この盤もその流れの中にある。ゲートフォールド仕様でインサート付きという点も、再発盤としてはうれしいところ。オリジナルの1968年盤を直接追うのが難しい作品だけに、こうした再発でまとまった形で聴ける意義は大きい。
Les Maledictus Sound『Les Maledictus Sound』は、派手な名盤というより、1968年のヨーロッパ実験ポップの複雑さをそのまま閉じ込めたようなアルバムだ。タイトルの扱いがやや入り組んでいる点も含めて、時代の記録として面白い。Jean-Pierre Massieraの仕事をたどるうえでも、ひとつの重要な断面を示す作品として聴こえてくる。
トラックリスト
- A1 Kriminal Theme 2:35
- A2 The Whistler 2:55
- A3 Inside My Brain 2:40
- A4 Blues Section Club 2:50
- A5 Concerto Genocide 2:50
- A6 Transfer From The Modulation 2:55
- A7 Am Stram Gram 2:30
- A8 Entrac Theme 2:15
- B1 Radio Pirat Program 2:35
- B2 Stupidly Made In Gaulle 2:25
- B3 Jim Clark Was Driving Recklessly 2:15
- B4 Dark Sky 2:30
- B5 Crazy Circus 2:45
- B6 Art Director 2:25
- B7 Heathcliff Y Cry Your Name 2:50
- B8 Monstrer Cocktail 2:35
動画
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Kriminal Theme
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The Whistler
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Inside my Brain
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Blues Section Club
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Concerto Genocide
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Transfer From the Modulation
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Ams Tram Gram
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Entrac Theme
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Radio Pirat Program
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Stupidly Made in Gaulle
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Jim Clark Was Driving Recklessly
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Dark Sky
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Crazy Circus
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Art Director
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Heathcliff Y Cry Your Name
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Monster Cocktail
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L'étrange Monsieur Whinster