Lizzy Mercier Descloux - Lizzy Mercier Descloux (1984)
Lizzy Mercier Descloux 1984

Lizzy Mercier Descloux - Lizzy Mercier Descloux (1984)

Rock Latin Pop Rock Afro-Cuban Jazzdance

Lizzy Mercier Descloux『Lizzy Mercier Descloux』(1984)

フランス出身のシンガー、ミュージシャン、作家、画家として知られるリジー・メルシエ・デクルーの1984年作。タイトルをそのまま冠した本作は、彼女の名前を前面に出した自己紹介のような一枚で、ロックを軸にラテン、アフロ・キューバン、ジャズダンスの要素が交差する。1980年代前半という時代の空気を受けながらも、単なるニューウェイヴの枠には収まらない作りで、身体の動きと都市的な感覚が同居する作品になっている。

日本盤はEpic Internationalからのリリースで、1984年のオリジナル年に出た盤。リジーは70年代後半のパンク/アート・シーンから頭角を現し、その後は音楽だけでなく表現全体を横断する活動で知られるようになる。このアルバムも、そうしたキャリアの流れの中で見ると、より音楽的な輪郭がはっきりした時期の記録として捉えやすい。

作品全体の印象

このアルバムの面白さは、曲ごとのリズムの置き方にある。ロックの骨格がありながら、打楽器の使い方やフレーズの反復が前に出る場面では、ラテン音楽の手触りが自然に入り込む。歌は感情を大きく押し出すというより、言葉の置き方や発音のニュアンスで引っ張るタイプで、そこに彼女らしい距離感がある。演奏はタイトだが、きっちり整いすぎないところに動きが残る。

同時代の文脈で見ると、NYや欧州のアート寄りのポップ、あるいはダンス志向のニューウェイヴと接点がある。ブロンディやリキッド・リキッドのように都会的なリズム感を持つアーティスト、またはパンク以後の実験性をポップの形に落とし込んだ周辺の作品群と並べて語りやすい。とはいえ、リジーの場合はラテン/アフロ・キューバンの比重がはっきりしていて、その点が独特だ。

注目曲「Wawa」

「Wawa」は、本作を語るうえでまず触れたい一曲。リズムの推進力が強く、ベースとパーカッションの絡みが曲の中心を作る。歌はその上を滑るように進み、メロディを大きく聴かせるというより、反復の中で熱を上げていく構成。ロックの曲というより、ダンスの現場に近い身体感覚を持った曲として耳に残る。

この曲で印象的なのは、派手な展開で押すのではなく、同じモチーフを少しずつずらしながら進むところ。アフロ・キューバン的なグルーヴを下地にしつつ、ポップな抜けも保っていて、アルバム全体の方向性を端的に示している。

注目曲「Santa Noche」

「Santa Noche」は、ラテン色の濃さがより分かりやすい曲。タイトルから受ける印象どおり、夜の気配を持ちながら、リズムは緩く沈み込まず前へ進む。打楽器の配置とギターの刻みが曲に立体感を与え、歌がその間を縫うように入ってくる。派手なサビで押し切るタイプではないが、曲の流れの中で雰囲気がじわじわ立ち上がる。

このあたりは、英語圏のロックだけを軸にした作品とは違う聴き味がある。リジーの歌声は、装飾的に盛り上げるより、音の間を使って空気を作る方向に働いていて、そこが本作の個性につながっている。

曲の並びとアルバムの位置づけ

1984年のリリースという点を踏まえると、本作は80年代前半のポップ/ダンス感覚と、70年代末の実験精神の両方を引き継いでいるように見える。リジー・メルシエ・デクルーの作品群の中では、アート性だけでなく、曲としての推進力が前に出た時期の記録として理解しやすい。本人の持つ多面的な活動歴を考えると、音楽家としての輪郭を強く感じさせる一枚でもある。

日本盤としては、当時の国内で海外の先鋭的なポップやニューウェイヴを受け止めていたレーベルの一枚という見方もできる。ジャケットや帯の情報込みで手に取ると、80年代の輸入感覚がそのまま残るタイプの作品で、音だけでなく時代の空気も含めて味わえる。

まとめ

『Lizzy Mercier Descloux』は、ロック、ラテン、アフロ・キューバン、ジャズダンスの要素が、ひとつのポップ・アルバムの中で無理なく並ぶ作品。歌、リズム、空気感のバランスが独特で、リジー・メルシエ・デクルーという表現者の輪郭をつかみやすい内容になっている。80年代前半のダンス志向のロックや、アート寄りのポップに関心が向くとき、自然と視野に入ってくる一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 It's All My Imagination
  2. A2 Abyssinia
  3. A3 Gazelles
  4. A4 Dolby Sisters Saliva Brothers
  5. A5 Eclipse
  6. A6 Les Dents De L'Amour
  7. B1 Wakwazulu Kwezizulu Rock
  8. B2 Momo On My Mind
  9. B3 I'm Liquor
  10. B4 Queen Of Overdub Kisses
  11. B5 Sun's Jive
  12. B6 All The Same

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