Luna - Luna (1981)
Luna 1981

Luna - Luna (1981)

Electronic Rock Prog Rock Space Rock

Luna『Luna』(1981) 作品紹介

イタリアのロック史を追っていくと、オザンナ周辺の動きはどうしても気になる。そんな流れの中で生まれたのが、ダニロ・ルスティチを中心とするLunaの唯一作『Luna』である。オザンナの直系として聴くと少し肩透かしに感じるかもしれないが、実際の中身はもっと整理されていて、メロディーとリズムの推進力を前面に出した作品になっている。1981年という時期を考えると、70年代的な大作志向よりも、コンパクトな曲作りと現代的な音のまとまりが印象に残る一枚だ。

メンバーはダニロ・ルスティチ、ジョー・アモルーゾ、ダリオ・フランコ、サバティーノ・ロマーノ。ルスティチはギターだけでなく歌も担当し、鍵盤のアモルーゾが音の輪郭を広げる。ベースとドラムが土台を作りつつ、全体はかなり流れよく進む。プログレの複雑さをそのまま持ち込むというより、ロック、フュージョン、ポップの要素を自然に混ぜたバンド作品としてまとまっている点が、このアルバムの特徴といえそうだ。

オザンナ後のダニロ・ルスティチが選んだ別の道

Lunaは、オザンナ解散後のルスティチが立ち上げたグループとして位置づけられる。イタリアのプログレ文脈に置くと、同時代のバンド群がシンフォニックな展開や劇的な構成を競っていたのに対し、この作品はもう少し軽快で、曲単位の聴きやすさが前に出る。だからといって単純なAOR一辺倒ではなく、演奏には細かな動きがあり、フュージョン寄りのフレーズが入る場面では手触りが変わる。

1981年のイタリア作品として見ると、70年代プログレの残響を残しながら、よりポップな感触へ寄っていく時期の空気も感じられる。オザンナの鋭さや実験性を期待すると確かに違うが、そのぶん旋律の流れやコーラスの整い方が耳に残る。いわゆる“隠れた名盤”として語られるのも、このズレと完成度の両方があるからだろう。

アルバム全体の聴きどころ

このアルバムでまず目立つのは、イタリアらしい柔らかなメロディーと、抜けのよいコーラスワークである。曲の進み方は比較的素直だが、単純に流れるだけではなく、鍵盤やギターのフレーズに細かい工夫があるため、聴き流すよりも少し耳を寄せたほうが面白い。ロックとしての骨格はしっかりしている一方で、音の質感は軽やかで、重く沈み込む感じはあまり強くない。

また、演奏の端々にはテクニカルな感触がある。フュージョン的なリズム処理や、ギターと鍵盤の受け渡しが自然で、派手なソロで押し切るというより、アンサンブル全体で曲を組み立てている印象だ。プログレ、スペース・ロック、ロックをまたぐ作品として整理できるが、どの曲も過度に長大ではなく、アルバムとしての密度が高い。

注目曲「Firebird」

収録曲の中で特に目を引くのが「Firebird」である。この曲はストラヴィンスキーの作品を新たに構成し直したもので、アルバムの中でも少し異質な立ち位置にある。ロック・バンドによるクラシック題材の扱いとしては珍しくないが、Lunaの場合は技巧の誇示というより、曲の骨格を自分たちのサウンドに引き寄せている感じがある。

結果として、「Firebird」はアルバムの中で演奏面の強さがよく見える一曲になっている。もとの素材が持つ緊張感に、バンド側のアレンジが重なり、他の楽曲よりも構成の切り替わりがはっきりしている。イタリアのプログレ作品に時折ある“引用”の面白さを、比較的わかりやすい形で示す曲ともいえそうだ。

イタリア語の歌と、聴きやすさのバランス

アルバムは「Firebird」を除いてイタリア語で歌われている。ここがまた、この作品の印象を決める重要な要素だ。英語圏のロックに近い発声ではなく、母語の持つ流れがそのままメロディーに乗るため、楽曲が柔らかく感じられる場面が多い。コード進行やリズムの組み方に多少の複雑さがあっても、歌が前に出ることで全体はまとまりやすい。

一方で、歌だけが主役になるわけでもない。ギター、キーボード、リズム隊がそれぞれ短いフレーズを積み重ねていくことで、曲の中に小さな起伏が生まれる。そのため、派手な転調や長い組曲構成がなくても、アルバム全体としては十分に変化がある。こうした作りは、70年代イタリアン・プログレの大仰さとは違うが、同じ系譜の中で別の方向へ進んだ作品として見ると腑に落ちる。

日本盤について

日本ではSeven SeasからK22P-155としてリリースされている。1981年当時の国内盤らしく、イタリアのロック作品を日本で追える導線のひとつになっていた盤である。オリジナル年と同じ1981年の発売なので、作品の初期イメージをそのまま伝える資料性もある。Lunaのディスコグラフィーはこの一枚で終わるため、アルバム単位でこのバンドの方向性をつかむことになる。

オザンナ周辺の音楽を起点にしながら、よりポップで、より整理された形へ進んだ作品として見ると、『Luna』はなかなか興味深い。イタリアン・ロックの中でも、華美さより曲の運びとアンサンブルの手触りが残る一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Sulla Luna
  2. A2 L'Isola
  3. A3 Lou Jean
  4. A4 In Concerto
  5. B1 Firebird
  6. B2 Serenade
  7. B3 Un Seme Strano
  8. B4 Come Va?

動画

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