Madness - One Step Beyond... (1979)
Madness『One Step Beyond...』— 2 Tone期を代表するデビュー作
Madnessの『One Step Beyond...』は、1979年にUKのStiff Recordsからリリースされたファースト・アルバムである。カムデン・タウン出身の7人組が、1970年代末の英国で起きた2 Tone ska revivalの流れの中で一気に存在感を強めていった時期の作品で、バンドの初期像をそのまま記録したような1枚になっている。レゲエやスカのリズムを土台にしながら、英国のポップ感覚と街場の空気を前面に出したサウンドが特徴で、同時代のThe SpecialsやThe Selecterと並んで語られることが多い。
レーベルはStiff Records、カタログ番号はSEEZ 17。Stiffはパンク、ニューウェイヴ、スカの文脈で重要な役割を果たしたレーベルで、Madnessの初期キャリアを支えた存在でもある。1979年当時のUKシーンを考えると、このアルバムは単なるデビュー盤ではなく、2 Toneの広がりを一般のリスナー層へつなげた作品のひとつとして位置づけられる。
アルバム全体の印象
収録曲は、短く切れ味のある曲が並ぶ構成で、テンポの良さと分かりやすいフックが目立つ。ホーンの使い方は派手すぎず、リズムの跳ね方をきっちり支える役回りで、全体のまとまりを作っている。録音はEden & T.W. Studios、ミックスはRushent's Mansionで行われており、各楽器の輪郭がはっきりした仕上がり。Clanger / Alan Winstanley制作という点も含め、当時の英国ポップ・レコードらしい整理された聴き心地がある。
この時期のMadnessは、後に広く知られるユーモラスなキャラクターよりも、まずはスカのビートを軸にしたバンドとしての推進力が前に出ている。とはいえ単なる復古趣味には寄らず、ロンドンの生活感がにじむ歌詞と、シングル向きの構成で独自性を作っている点が重要だろう。
代表曲「One Step Beyond」
タイトル曲「One Step Beyond」は、このアルバムを象徴する1曲である。元はPrince Busterの楽曲として知られる曲だが、Madness版では冒頭の語りと掛け声、そして反復の強いリズムによって、ライブの合図のような役割を持つ曲になっている。アルバム版でもその勢いは十分で、1曲目近くに置かれることで作品全体の方向性をはっきり示している。
この曲は、Madnessが一般層にまで届く入口になった代表曲としても重要だ。スカの定型をなぞるだけでなく、マイク・バーロソンの鍵盤とホーン、そしてボーカルの軽い跳ね方が一体になって、聴き手をすぐ巻き込む作り。2 Toneの中でも特にポップ寄りの入口として機能していたことがうかがえる。
「My Girl」「Night Boat to Cairo」などの流れ
アルバムでは「My Girl」も外せない。のちにシングルとしても広く知られるこの曲は、日常的なモチーフを使いながら、Madnessらしい軽快さで押し切るタイプの楽曲である。派手な展開があるわけではないが、リズムの置き方とメロディの運びが明快で、バンドのポップセンスがよく出ている。
「Night Boat to Cairo」も印象に残る1曲だ。こちらはやや異国情緒めいた題材を扱いながら、実際の音はあくまでロンドンのスカ・バンドらしい。ホーンのリフとボーカルの掛け合いが前に出て、アルバムの中でも特にバンドの個性が見えやすい。こうした曲が並ぶことで、『One Step Beyond...』は単発のヒット集ではなく、Madnessの初期スタイルをまとめて提示する作品になっている。
収録内容とクレジット面の特徴
このUK初期盤では、B2の表記がスリーブとラベルで「Bed & Breakfast」となっており、後年の「Bed And Breakfast Man」とは表記が異なる。また、B7の「Madness」は意図的にクレジットされていない。こうした細部は、初期プレスならではの資料的な面白さがある。全曲の出版クレジットは基本的にCopyright Controlで、一部にMelodisc Records Ltd.やWarner Bros Music Ltd.が関わる。
さらに、この盤は初期のUK Stiff盤として、後年の再発とはいくつかの差異がある。再発盤ではスリーブ表記や出版者表記が変わるものがあり、録音物そのものは同じでも、資料としては見比べがいのあるタイトルだ。ランアウトもエッチング主体で、CBSマークのみスタンプという点が確認できる。
Madnessにとっての位置づけ
Madnessは1976年に結成され、1979年から1980年代半ばにかけて最も大きな成功を収めた。『One Step Beyond...』は、その最初の大きな到達点である。のちの彼らはよりポップで親しみやすい方向へも広がっていくが、このデビュー盤では、2 Toneの文脈の中でどれだけ強い個性を出せるかがはっきり示されている。
同時代のThe Specialsが社会性や緊張感を強めた側面を持っていたのに対し、Madnessはより軽妙で、街の空気をそのまま音にしたような印象がある。『One Step Beyond...』は、その違いが最初から見える作品であり、Madnessというバンドの輪郭をつかむうえで非常に重要な1枚といえる。
トラックリスト
- A1 One Step Beyond... 2:17
- A2 My Girl 2:44
- A3 Night Boat To Cairo 3:31
- A4 Believe Me 2:28
- A5 Land Of Hope & Glory 2:56
- A6 The Prince 3:18
- A7 Tarzan's Nuts 2:24
- B1 In The Middle Of The Night 3:01
- B2 Bed & Breakfast 2:32
- B3 Razor Blade Alley 2:41
- B4 Swan Lake 2:35
- B5 Rockin' In A♭ 2:28
- B6 Mummy's Boy 2:24
- B7 Madness 2:37
- B8 Chipmunks Are Go! 0:52
動画
- Madness - One Step Beyond (Official 4k Video)
- Madness - My Girl (Official Video)
- MADNESS : One Step Beyond LP 1979 vintage vinyl full album
- Madness - Tarzan's Nuts (One Step Beyond Track 7)
- Madness - Night Boat to Cairo (Official HD Video)
- Madness - Bed and Breakfast Man
- Madness - Believe Me (One Step Beyond Track 4)
- Madness - Land Of Hope And Glory (One Step Beyond Track 5)
- Madness - The Prince (One Step Beyond Track 6)
- Madness - In The Middle Of The Night (One Step Beyond Track 8)
- Madness - Razor Blade Alley (One Step Beyond Track 10)
- Madness - Swan Lake (One Step Beyond Track 11)
- Madness - Rockin' In A Flat (One Step Beyond Track 12)
- Madness - Mummy's Boy (One Step Beyond Track 13)
- Madness - Madness (One Step Beyond Track 14)