Mogwai - Come On Die Young (1999)
Mogwai 1999

Mogwai - Come On Die Young (1999)

Rock Noise Post Rock

Mogwai『Come On Die Young』――静かな圧と、長く残る余韻

Mogwaiの『Come On Die Young』は、1999年にUKのChemikal Undergroundから出た2作目のアルバム。前作『Young Team』で示した大きな音のうねりを受けつつ、この作品ではテンポを落とし、音数を絞り、空白の扱いをより前面に出している。Scottish post-rockバンドとしての輪郭が、ここでかなりはっきり見えてくる一枚という印象が強い。

レーベルは、The Delgadosが1995年に立ち上げたスコットランドのChemikal Underground。90年代後半のUKインディー/ポストロック周辺の空気をそのまま抱えたようなリリースで、Mogwaiの初期像を知るうえでも重要な位置づけにある。録音はDave FridmannがTarbox Road Studiosで担当しており、ミックスも同じくFridmann。彼らの作品らしい、輪郭のある低音と、ざらつきの残る音の重なりが全編に通っている。

アルバム全体の流れ

このアルバムは、派手な展開を連続させるタイプではない。むしろ、短いフレーズや反復、ノイズ、間の取り方でじわじわと圧をかける曲が中心で、聴き進めるほどに重さが増していく。ギターのレイヤーは厚いが、音の出し方は必要以上に飾らない。そのため、曲ごとの温度差や距離感がはっきり伝わる。

また、インストゥルメンタルの楽曲に混じって、声や語りが断片的に置かれるのもこの作品の特徴。Punk Rock/Puff Daddy/ANTICHRISTではIggy Popのスピーチが使われ、曲名の表記も独特だ。こうした要素が、ただのギター中心の作品ではないことを示している。

注目曲「Christmas Steps」

『Come On Die Young』の中でも、まず触れておきたいのが「Christmas Steps」。Luke Sutherlandのヴァイオリンが入るこの曲は、アルバムの中でも特に構成が見えやすい。静かな立ち上がりから、少しずつ音が積み上がっていき、途中で鋭いギターが差し込まれる流れが印象的だ。メロディを前に出すというより、音の層が増えることで景色が変わるタイプの曲になっている。

この曲では、Mogwaiの初期作品に通底する「抑えたまま進む緊張感」がよく出ている。ヴァイオリンが入ることで、ギターだけでは出せない線の細さが加わる一方、全体の重心はしっかり低い。感情を直接押し出すというより、音の配置そのものが感情を作っていくような作り。

注目曲「Cody」

「Cody」では、Richard Formbyのlap steelが加わり、アルバムの中でも少し視界が開ける。とはいえ、明るさが前に出るわけではなく、音の伸びや余韻が長く残ることで、むしろ孤独感のほうが際立つ。ギターの反復が続く中で、細い音色が差し込まれる感覚があり、Mogwaiらしい硬質さの中に、少し別の温度が入ってくる。

この曲は、アルバム全体の中で「静けさ」を単なる休符として扱っていない点がわかりやすい。音を減らすことで緊張を作るというより、余白そのものを曲の中心に置いているように聴こえる。そうした作りが、後年のポストロック作品と比べても早い段階でかなり洗練されている。

注目曲「Punk Rock/Puff Daddy/ANTICHRIST」

タイトルからして異様な存在感がある「Punk Rock/Puff Daddy/ANTICHRIST」は、アルバム後半の中でも特に記憶に残る。Wayne Myersのトロンボーン、そしてIggy Popのスピーチが入ることで、楽器編成の面でもかなり異色だ。曲名の表記はトラックD2で「Punk Rock/Puff Daddy/ANʇICHRISʇ」となっており、細部まで含めて強い個性がある。

音の進み方は決して派手ではないが、言葉と音がぶつかることで、アルバムの中でも最も異物感のある曲になっている。Mogwaiの作品ではしばしば、ノイズや大音量が注目されやすいが、この曲ではそうした要素に加えて、引用や断片的な声が作品の空気を変えている。単なるインスト集ではなく、外部の声や音色を取り込むことでアルバムの輪郭を広げている一曲。

この作品の位置づけ

『Come On Die Young』は、Mogwaiの初期2作のうち、より抑制の効いた側面を強く示す作品として見られることが多い。『Young Team』が持っていた爆発の気配に対して、こちらはもっと低い位置から音を積み上げる。結果として、派手な展開が少ないのに、聴き終えたあとに残る感触はむしろ強い。

同時代のUKポストロックやノイズ寄りのインディーと比べても、この作品はサウンドの密度より、構成の持続で聴かせるタイプに入る。後のMogwaiがさらに広いダイナミクスや映像的な広がりを獲得していく前段階としても重要で、バンドの基礎体力がそのまま記録されたアルバムという見方がしやすい。

まとめ

1999年の『Come On Die Young』は、Mogwaiの初期像を知るうえで外せない一枚。Dave Fridmannの制作、外部ミュージシャンの参加、Iggy Popのスピーチ、そして抑えた演奏の積み重ねが、アルバム全体の印象を形作っている。派手さよりも、音が残る時間の長さが印象に残る作品。

UKのインディー/ポストロック文脈の中で見ても、ここで示された静かな緊張感はかなり明確だ。Mogwaiというバンドが、単なる轟音のグループではなく、音の置き方と引き算で空気を作るバンドであることが、よく伝わるアルバムになっている。

トラックリスト

  1. A1 Punk Rock:
  2. A2 Cody
  3. A3 Helps Both Ways
  4. A4 Year 2000 Non-compliant Cardia
  5. B1 Kappa
  6. B2 Waltz For Aidan
  7. B3 May Nothing But Happiness Come Through Your Door
  8. C1 Oh! How The Dogs Stack Up
  9. C2 Ex-Cowboy
  10. C3 Chocky
  11. D1 Christmas Steps
  12. D2 Punk Rock/Puff Daddy/Antichrist

動画

Share
記事一覧に戻る
toast