Motorpsycho - The All Is One (2020)
Motorpsycho 2020

Motorpsycho - The All Is One (2020)

Rock Prog Rock

Motorpsycho『The All Is One』について

Motorpsychoは、ノルウェー・トロンハイム出身のバンドで、1989年に結成された。ベント・サーサー、ハンス・マグヌス “Snah”・ライアンを中心に、長い活動のなかで編成を変えながらも、硬質なロック感覚と長尺構成、演奏の密度を保ち続けてきたグループとして知られている。2020年作の『The All Is One』は、そのMotorpsychoの活動の流れのなかでも、プログレッシブ・ロック的な組み立てを前面に出した作品として位置づけやすいアルバムだ。

リリースは2020年、レーベルはドイツ・ハンブルクのStickman Records。今回の盤はヨーロッパ盤で、180グラムのクリア・ヴァイナル、10面の折り込みスリーブ仕様。12インチ四方のインサート、ハイプステッカー、ダウンロードカードも付属する。物理的なパッケージも含めて、アルバム全体を一つの作品としてまとめる意識が見える内容だ。

作品の輪郭

『The All Is One』は、Motorpsychoらしい長い展開と、曲ごとの場面転換がはっきりした作りが印象に残る。録音はフランスのBlack Box Studio、ノルウェーのOcean Sound Recordings、トロンハイムのKommun'で行われており、複数の場所をまたいで仕上げられている。メンバー自身による追加録音もKommun'で重ねられていて、スタジオ作業の積み上げがそのまま音像に反映されている。

クレジットを見ると、A1〜A3とD2、D4、B1〜B2、A4、D1、D3といった形で複数セッションに分かれている。こうした構成からも、単発のライヴ感より、組曲的な流れや章立てを意識したアルバムとして聴こえてくる。Motorpsychoは90年代以降、ハードロック、サイケデリック、プログレッシブの要素を行き来してきたが、この作品ではそのなかでも長尺と構築性が前に出ている印象だ。

Motorpsychoというバンドの中での位置づけ

Motorpsychoはデビュー作『Lobotomizer』以降、メンバー変遷を経ながらも、ベント・サーサーとSnahの核を保ち続けてきた。ドラムにはHåkon Gebhardt、Kenneth Kapstad、Tomas Järmyr、Ingvald André Vassbøなど、時期ごとに異なるプレイヤーが参加しており、その時々で音の輪郭を変えている。『The All Is One』は、そうした長い歴史のなかで、近年のMotorpsychoがどれだけ大きな構成を自然に扱うかを示す一枚として見える。

バンドの文脈でいうと、短い曲を連ねるアルバムよりも、アルバム全体を通して流れを作るタイプの作品に近い。90年代のオルタナティヴ・ロック的な感触よりも、70年代プログレや長編ロックの作法に寄った聴こえ方をする場面が多い。とはいえ、単純に技巧を並べるだけではなく、リフの押し出しや曲の推進力が残っているところにMotorpsychoらしさがある。

注目曲として聴きたいポイント

A1〜A3に置かれた前半は、この作品の入口として重要だ。録音時期が2019年9月のBlack Box Studioセッションに集中していることもあり、音のまとまりが強い。冒頭から、リフを軸にしながら展開をずらしていくタイプの進行が目立ち、Motorpsychoの持つ“曲を大きくしていく”手つきがよく出ている。1曲ごとに完結しながらも、次の曲へ続くような感覚があり、アルバムの導入部として機能している。

この前半部分では、演奏の密度が高い一方で、音数を増やしすぎずに推進力を保つバランスが見える。ベースとギターの絡み、ドラムの押し引き、そこに重なるヴォーカルの配置が、プログレッシブ・ロックらしい構造を作っている。Motorpsychoを初めて追う場合でも、バンドが長年積み上げてきた組み立ての感覚をつかみやすい区間といえる。

後半では、D1、D2、D3、D4にかけて作品のスケール感がさらに広がる。こちらはトロンハイムのKommun'での録音や追加録音が多く、スタジオ内で素材を重ねる作りが目立つ。曲のつなぎや展開の変化が細かく、単独の楽曲というより、複数の断片が一つの流れに組み込まれていく印象だ。Motorpsychoの作品群のなかでも、こうした後半の構成はアルバム全体の重心を支える部分として機能している。

サウンドと聴きどころ

本作の聴きどころは、派手なフックよりも、演奏の積み重ねと構成の切り替えにある。音は厚いが、ただ大きいだけではなく、パートごとの役割が見えやすい。ギターはリフとリードの両面を担い、リズム隊は場面転換を支える。そこにヴォーカルが入ることで、長い曲でも一本の線としてまとまる。

また、クリア・ヴァイナルと10面折り込みスリーブという仕様も、このアルバムの“全体を一つにまとめる”感覚と相性がいい。Motorpsychoはもともとアルバム単位で語られやすいバンドだが、『The All Is One』はその傾向が特に強い。曲単位で切り取るより、通して聴いたときに構成の意図が見えやすい作品として受け取れる。

まとめ

『The All Is One』は、Motorpsychoの長い活動のなかで培われた構成力と演奏力が、2020年時点の形でまとまったアルバムだ。ノルウェーのバンドとしての背景、Stickman Recordsからのヨーロッパ盤、複数スタジオでの録音、そして折り込みスリーブ仕様のパッケージまで含めて、作品全体を一つの大きな流れとして提示している。プログレッシブ・ロックの文脈で語りやすい一方で、Motorpsycho独自の粘りと推進力もはっきり残る内容になっている。

トラックリスト

  1. A1 The All Is One 8:30
  2. A2 The Same Old Rock (One Must Imagine Sisyphus Happy) 5:17
  3. A3 The Magpie 5:35
  4. A4 Delusion (The Reign Of Humbug) 2:44
  5. N.O.X. ∞ 21:08
  6. N.O.X. ∞ 21:26
  7. D1 A Little Light 2:18
  8. D2 Dreams Of Fancy 9:36
  9. D3 The Dowser 2:45
  10. D4 Like Chrome 5:03

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