Mouse - Lady Killer (1973)
Mouse 1973

Mouse - Lady Killer (1973)

Rock Prog Rock

Mouse『Lady Killer』について

Mouseは、1970年代前半のイギリスで活動した短命のプログレッシブ・ロック・バンドで、ギタリストのRay Russellを中心に組まれたグループだ。ジャズ畑でも知られるRay Russellが、Running Manに続いて手がけた“1回限りのロック・コンボ”の2組目にあたるのがMouseで、のちにChopynへつながっていく流れの中に置くと、この作品の輪郭が見えやすい。『Lady Killer』は1973年作として扱われるアルバムで、UKの70年代プログレの文脈にありながら、演奏主体の感触が強い一枚として位置づけられる。

この盤はドイツで流通したブートレグ再発盤で、オリジナルのカラー・ジャケットを白黒で再現したシングル・スリーブ仕様。白地に黒文字のレーベル面という作りも含め、オリジナル盤とは見た目の印象がかなり異なる。盤としては後年の再発だが、収録内容そのものは1973年の作品を受け継いでいる。レーベル表記はNot On Label (Mouse (14))となっており、正規再発というよりは、当時の音源を後年に持ち出した体裁のリリースだ。

Ray Russellを軸にしたバンドの性格

Mouseの核にいるRay Russellは、ギタリストとしての技巧だけでなく、バンドを組み立てる視点でも存在感がある。メンバーはAlan “Al” Clareがリード・ボーカルとキーボード、Jeff Wattsがベース、Al Rushtonがドラムを担当。編成はシンプルだが、こうした少人数のロック・バンドらしい骨組みの中で、ギターとキーボードの受け渡しを軸に曲を進めていくタイプの作品として捉えやすい。

同時代の英国プログレの中では、派手なシンフォニック展開を前面に出すというより、演奏の密度や曲ごとの組み立てで聴かせる側に近い。Ray Russellの経歴を踏まえると、ロックとジャズの境目を行き来するような感触も自然で、ギターのフレーズやリズムの置き方にその個性が出ている。アンサンブルの中で過度に鳴らしすぎず、必要なところで前に出る感じが、このバンドの色として伝わってくる。

『Lady Killer』の聴きどころ

このアルバムでまず注目したいのは、曲の流れが比較的コンパクトでありながら、演奏の切り替えにきちんと手触りがある点だ。プログレッシブ・ロックというと長尺組曲を想像しがちだが、Mouseは曲の中で場面を変えながら進めるタイプで、ギター、オルガン系の音色、リズム隊の合わせ方に耳が向く。歌が入る場面でも、メロディを押し出すというより、バンド全体の推進力の中にボーカルが置かれている印象がある。

タイトル曲の「Lady Killer」は、この作品を代表する一曲として扱いやすい。曲名の通り強いフックを持つが、単に派手な歌ものとして進むのではなく、演奏の間合いで引っ張るタイプ。Ray Russellのギターが前面に出る場面では、音数を詰め込みすぎず、フレーズの切れ味で聴かせる構成が目立つ。バンド全体としては、リフの反復と展開のバランスがはっきりしていて、70年代初期の英国ロックらしい硬さが残る。

アルバム全体の位置づけ

Mouseは大きな継続活動を残したバンドではないが、そのぶん『Lady Killer』はRay Russellのロック・プロジェクトの一断面として見やすい。Running Man、Mouse、Chopynと続く流れの中では、ロック寄りの表現を試した時期の記録にあたる。長く定着したバンドの代表作というより、特定の時期にだけ現れる企画性の強い作品として、70年代英国プログレの周縁を知る手がかりになる一枚だ。

また、同時代のプログレを広く見たとき、Mouseのような作品は、名の知れた大御所だけでは捉えきれないローカルな動きや、ジャズ畑の音楽家がロックへ踏み込んだ事例としても興味深い。過剰な装飾よりも、バンドの編成と演奏の呼吸で成立しているところに、このアルバムの性格がよく出ている。

再発盤としての見え方

このドイツ盤は、オリジナルの色刷りジャケットを白黒で再現している点がまず特徴的だ。手に取ったときの印象はかなり異なり、資料的な再発盤としての性格が強い。音源を追う目的で見れば、1973年当時の作品に後年アクセスするための一枚という位置づけになる。オリジナル盤とは別の流通経路で出た盤なので、コレクションとしてはその点も含めて見ておくと整理しやすい。

『Lady Killer』は、派手な知名度で語られるタイプではないが、Ray Russellという音楽家の動きと、70年代初頭英国ロックの一角をつなぐ作品としては押さえておきたい存在だ。短命なバンドながら、演奏の芯がはっきりしていて、当時のプログレッシブ・ロックの多様さをそのまま示している。

トラックリスト

  1. A1 Going Out Tonight
  2. A2 You Don't Know
  3. A3 Electric Lady
  4. A4 All The Fallen Teen-Angels
  5. A5 Ashen Besher
  6. B1 We Can Make It
  7. B2 East Of The Sun
  8. B3 It's Happening To Me And You
  9. B4 Sunday
  10. B5 Just Came Back

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