Museo Rosenbach - Zarathustra (1973)
Museo Rosenbach『Zarathustra』について
Museo Rosenbachの『Zarathustra』は、1973年にイタリアで発表されたプログレッシブ・ロックの代表的な一枚として知られている作品だ。バンドはイタリアのプログレ・シーンに属し、本作もその流れの中で、長編構成、演奏の緊張感、曲ごとの展開の細かさが前面に出た内容になっている。タイトルの通りニーチェの思想書『ツァラトゥストラはこう語った』を意識した作品として語られることが多く、70年代前半のイタリアン・プログレらしい知的な題材と、ロックバンドとしての推進力が同居している。
ここで扱うのは、1982年に日本盤として出たSeven Seas盤(K22P-280)だ。オリジナルの1973年盤と時間差のある再発で、当時の日本のリスナーがイタリアン・プログレに触れる窓口のひとつだった可能性がある。Seven Seasはキングレコード系のレーベルで、輸入盤の国内展開や洋楽カタログの紹介で存在感を持っていたレーベルだ。この盤も、そうした文脈の中で受け取られた一枚と見てよさそうだ。
作品の位置づけ
Museo Rosenbachはイタリアのプログレ・バンドとして知られ、数ある同時代作の中でも『Zarathustra』は特に名前が挙がりやすい。1970年代初頭のイタリアでは、GenesisやKing Crimsonの影響を受けつつも、より劇的で、歌ものの比重が大きく、組曲的な展開を持つ作品が多く生まれた。本作もその系譜にありながら、単なる模倣ではなく、重いリズムと強いボーカルを軸にした独自の押し出しがある。
メンバーにはGiancarlo Golzi、Pit Corradi、Alberto Moreno、Stefano Galifi、Enzo Merogno、Leonardo Lagorio、Walter Francoが名を連ねる。編成を見るだけでも、鍵盤、ギター、サックス、リズム隊、ボーカルがそれぞれ役割を持ち、アンサンブルで推進するタイプの作品であることが伝わる。実際、演奏は一人のソロで引っ張るより、全体のうねりで場面を切り替えていく印象が強い。
聴きどころ1: タイトル曲「Zarathustra」
本作の中心に置かれるのは、やはりタイトル曲「Zarathustra」だろう。長めの尺の中で、静かな導入から重心の低いバンド・アンサンブルへ移り、さらにパートごとに表情を変えていく流れがはっきりしている。単純に音を積み上げるのではなく、節目ごとに空気を変える構成で、70年代プログレの組曲的な作りがよく出ている。
この曲で目立つのは、ボーカルの強い存在感と、楽器陣の間にある緊張感だ。歌が前に出る場面でも、伴奏はただ支えるだけではなく、鍵盤やギターが細かな動きを入れて曲の輪郭を保っている。派手な技巧の見せ合いというより、曲全体のドラマを崩さずに積み上げるタイプで、アルバムの性格をそのまま示す代表曲として受け取られている。
聴きどころ2: 「Dell'eterno ritorno」ほか中盤の流れ
アルバムの中盤では、タイトル曲のような大きな構造だけでなく、各曲の中での切り替えや、リフの反復の置き方が見えやすくなる。たとえば「Dell'eterno ritorno」のような曲では、テーマを繰り返しながら少しずつ密度を上げていく作りが印象に残る。ここでは、リズムの刻みとメロディの動きが近い距離で絡み合い、曲が進むにつれて重さが増していく。
こうした部分は、同時代のイタリアン・プログレの中でも、より交響的な方向に寄るバンドと比べると、やや硬質で、直接的な押しの強さがある。たとえばPFMやBanco del Mutuo Soccorsoのような代表格と並べて語られることは多いが、Museo Rosenbachはもう少し鋭く、リフの輪郭を前に出す場面が目立つ。曲の展開を追っていくと、その違いが見えやすい。
日本盤としての聴きどころ
1982年の日本盤は、1973年のオリジナルから約9年後のリリースになる。こうした再発盤では、作品そのものの評価が時間を経て定着していることが多く、当時の新譜としてではなく、名盤として棚に並ぶ性格が強い。この盤も、イタリアン・プログレをまとめて掘る流れの中で出会われた可能性が高いだろう。
オリジナル盤との聴感上の差については、音作りや収録状態の違いが気になるところだが、ここでは盤固有の詳細には踏み込まない。少なくとも作品の核は、1973年のオリジナルで確立された長編構成、重心の低い演奏、強いボーカルにある。その骨格はこの日本盤でも変わらず伝わってくるはずだ。
まとめ
『Zarathustra』は、Museo Rosenbachというイタリアのプログレ・バンドが残した、70年代初頭のイタリアン・プログレを語るうえで外しにくい作品だ。タイトル曲を軸に、長い曲構成の中で緊張感を保ちながら進む作り、各メンバーの役割が見えやすいアンサンブル、思想的な題材をロックの形式に落とし込む姿勢が、このアルバムの輪郭を作っている。
1973年のオリジナル作品としての存在感と、1982年の日本盤として流通した事実、その両方を踏まえると、本作は単なる一枚のアルバムではなく、イタリアン・プログレが国境を越えて受け取られていく過程も映している。70年代プログレの文脈の中で、長編志向、構成の緻密さ、バンド全体の推進力を確認できる一作だ。
トラックリスト
- Zarathustra
- B1 Degli Uomini
- B2 Della Natura
- B3 Dell'Eterno Ritorno
動画
- Zarathustra- L'ultimo Uomo
- Zarathustra- Il Re Di Ieri
- Zarathustra- Al Di La Del Bene E
- Zarathustra- Superuomo
- Zarathustra- Il Tempio Delle Cles
- Degli Uomini
- Della Natura
- Dell'Eterno Ritorno