Napalm Death - Scum (1987)
Napalm Death『Scum』――1987年の極限をそのまま刻んだ初期グラインドコアの要点
Napalm Deathの『Scum』は、1987年にUKのEaracheから登場した作品で、バンドの初期像を知るうえでまず外せない1枚だ。Birminghamで結成されたバンドだが、この時点ではメンバーの入れ替わりが激しく、作品全体にもその過渡期らしい荒さがはっきり残っている。とはいえ、単なる「未完成」の記録ではなく、のちにグラインドコアと呼ばれる流れを決定づける、非常に重要な初期作として受け止められている。
この作品の面白さは、ハードコア・パンクの速度感とスラッシュ・メタルの硬さを、かなり極端な密度で押し固めている点にある。短い曲が連続し、息をつく間もない構成で進むが、ただ速いだけではなく、リフの切れ味やドラムの突進力が前面に出ている。Earacheのカタログの中でも、極端な音楽の初期衝動を示す代表的なタイトルとして扱われるのも納得しやすい。
作品の位置づけ
『Scum』はNapalm Deathにとって、後年の長い活動の出発点にあたる作品だ。ここで鳴っている音は、のちのデス・メタル寄りの重さや、より整理されたグラインドコアの作法とはまだ少し距離がある。それでも、短時間で一気に押し切る構成、ノイズのように圧縮された演奏、怒りを前面に出したヴォーカルは、このバンドの核としてすでに成立している。初期Napalm Deathの輪郭を知るには、まずこのアルバムが基準になる。
同時代の文脈で見ると、Extreme Noise TerrorやDoom、Sore Throatのような英国の過激なハードコア勢と並べて語られることが多い。だが『Scum』は、その中でも特にアルバムとしてのまとまりと、以後のジャンル名に直結する影響力を持っていた作品として記憶されやすい。後続の多くのバンドが、この作品の速度、短さ、圧のかけ方を参照していった流れはかなり明確だ。
聴きどころ1: タイトル曲「Scum」
タイトル曲の「Scum」は、この作品の性格をそのまま示す中心曲だ。曲名の短さに対して、内容は非常に直接的で、音の立ち上がりも早い。リフは分かりやすく反復されるが、その反復がむしろ圧力として働いている。ここでは、技巧を見せるというより、音を前へ押し出すこと自体が目的になっている印象が強い。
実際に聴くと、音数の多さよりも、むしろ余白の少なさが印象に残る。演奏が止まる瞬間がほとんどなく、短いフレーズが次々に叩きつけられるため、1曲の中で受ける情報量はかなり多い。後のグラインドコアにある「一瞬で通過する暴力性」の原型として、この曲を挙げるのは自然だろう。
聴きどころ2: 「You Suffer」
『Scum』を語るうえで外しにくいのが「You Suffer」だ。極端に短いことで知られるこの曲は、Napalm Deathの名を広く知らしめた要素のひとつでもある。曲としての長さは驚くほど短いが、単なる話題性だけではなく、バンドが当時どこまで音の圧縮を突き詰めていたかを示す例でもある。
この1曲は、アルバム全体の設計ともつながっている。長い展開を積み重ねるのではなく、短い断片を連打して全体像を作るという発想が、『Scum』ではかなり徹底している。「You Suffer」はその最も端的な例で、Napalm Deathというバンドの初期衝動を象徴する存在として扱われやすい。
演奏と音像
演奏面では、ギターの切断的なリフ、低く押しつぶすベース、前に出るドラムが要点になる。録音も含めて、生々しさが前面に出ており、整ったプロダクションを期待すると少し違うかもしれない。ただ、その粗さがこの作品の場合は欠点というより、当時のバンドの速度と緊張感をそのまま残す方向に働いている。
ヴォーカルも、メロディを聴かせるタイプではなく、言葉を押し込むような発声が中心だ。これが曲の短さと組み合わさることで、全体の印象はかなり切迫したものになる。各パートが独立して主張するというより、ひとつの塊として突進してくる感触が強い。
アルバムとしての印象
『Scum』は、後年の完成度の高い作品と比べると、当然ながら粗さが目立つ場面もある。ただ、その粗さが初期Napalm Deathの記録として重要だ。メンバーの変遷が激しい時期の作品でありながら、結果としてはバンドの名前をジャンル史の中心に押し上げる役割を果たしている。1987年という時点で、ここまで極端な速度と密度を一枚のアルバムとして提示していた事実は、今聴いても重みがある。
Earacheの初期カタログを追ううえでも、『Scum』はかなり分かりやすい基準点になる。スラッシュ・メタルの鋭さ、ハードコアの即効性、その先にあるグラインドコアの圧縮感が、まだ荒い形のまま同居している。Napalm Deathの長い歴史の入口としてだけでなく、80年代後半の英国アンダーグラウンドがどこまで先鋭化していたかを示す作品として見ておきたい1枚だ。
トラックリスト
- A1 Multinational Corporations
- A2 Instinct Of Survival
- A3 The Kill
- A4 Scum
- A5 Caught....In A Dream
- A6 Polluted Minds
- A7 Sacrificed
- A8 Siege Of Power
- A9 Control
- A10 Born On Your Knees
- A11 Human Garbage
- A12 You Suffer
- B1 Life?
- B2 Prison Without Walls
- B3 Point Of No Return
- B4 Negative Approach
- B5 Success?
- B6 Deceiver
- B7 C.S.
- B8 Parasites
- B9 Pseudo Youth
- B10 Divine Death
- B11 As The Machine Rolls On
- B12 Common Enemy
- B13 Moral Crusade
- B14 Stigmatized
- B15 M.A.D.
- B16 Dragnet