Neurosis - Through Silver In Blood (1996)
Neurosis 1996

Neurosis - Through Silver In Blood (1996)

Rock Industrial Progressive Metal Doom Metal Post-Metal Sludge Metal

Neurosis『Through Silver In Blood』(1996)

Neurosisの『Through Silver In Blood』は、1996年に登場した作品で、バンドの音楽性を大きく印象づける一枚として知られている。カリフォルニア州オークランドで1985年に結成されたNeurosisは、もともとハードコア・パンクを出発点にしながら、のちにスラッジ、ドゥーム、ポストメタル、インダストリアル、アンビエントといった要素を組み込んでいく。その流れの中で、このアルバムは、初期の激しさと後年の重層的な構成感が強く結びついた時期の記録として位置づけられる。

リリースはUSA、カナダ、ヨーロッパ向けの盤で、レーベルはドイツのロック系レーベルIron City Records。盤面やスリーブの情報を見ると、ゲートフォールド仕様に12インチサイズのブックレットが付き、ビジュアル、歌詞、クレジットを収録した構成になっている。作品としては音だけでなく、視覚面も含めて世界観を作るタイプのアルバムだと受け取れる。

作品の位置づけ

Neurosisは1990年代半ば以降、単なるヘヴィ・メタルの枠に収まらない表現で評価を広げていくが、『Through Silver In Blood』はその流れの中でも特に重要な作品のひとつだろう。バンドの初期から続く圧の強い演奏に、曲の長さや展開の作り込み、ノイズや空間処理の感覚が加わり、のちのポストメタル系バンドに通じる骨格がかなりはっきり見える。EarthやMelvinsのような低速で重い音像、あるいは今日のオルタナティブなヘヴィ・ミュージックとの接点を考えるうえでも、外せないタイトルとして語られやすい。

サウンドの印象

聴感上は、リフの反復で押し切る場面と、沈み込むような静けさを挟み込む場面の落差が大きい。曲の進み方が一直線ではなく、テンションを保ったまま少しずつ景色を変えていくので、単に「重い」というだけでは終わらない。Scott KellyとSteve Von Tillのギター、Dave Edwardsonのベース、Jason Roederのドラムが前面で塊になり、その上にNoah Landis以降の鍵盤やサンプルの感覚につながるような、空気の層を意識した作りが見えてくる。実際に通して聴くと、音圧の強さだけでなく、間の取り方や残響の扱いが印象に残りやすい作品だ。

注目曲「Locust Star」

この作品の代表曲としてまず挙がりやすいのが「Locust Star」だ。アルバム中でも比較的まとまった推進力を持つ曲で、Neurosisの持つ暴力性と構築性が同時に表れている。冒頭から押し出しの強いリフが続き、演奏の密度が高いまま進行するため、アルバム全体の入口として機能しやすい。リフの反復が単調にならず、細かな強弱で意味を変えていくあたりに、このバンドらしい作曲感覚がある。

また、この曲は後年のポストメタル文脈で語られることも多い。派手なフックで引っ張るというより、音の圧力そのものを曲の推進力にしているため、同時代のドゥームやスラッジと比べても、少し先の時代を見ているような印象がある。Neurosisのカタログの中でも、ライブ映えする曲として扱われてきたことがうかがえる。

注目曲「Purify」

「Purify」は、激しさと不穏な空気がより露骨にぶつかるタイプの曲として耳に残る。Neurosisの作品では、重さだけでなく、音が少しずつ崩れていく感覚や、儀式めいた反復が重要になるが、この曲にはそうした要素がよく出ている。演奏は攻撃的でありながら、どこか閉じた空間で鳴っているような圧迫感があり、アルバムの濃い質感を象徴する一曲になっている。

この手の曲は、同時代のメタルの中でも特に、KhanateやISIS、Cult of Lunaのような後続のバンドと比較されやすい。とはいえ、『Through Silver In Blood』では、まだハードコア由来の切迫感が強く残っていて、単なる重厚さよりも、むき出しの緊張が前に出る。そこが本作の特徴として読み取りやすい。

収録曲以外で見えるもの

本作は、曲単体の印象だけでなく、アルバム全体の流れで聴くと輪郭がはっきりする。静かなパートから巨大なうねりへ移る構成、音が飽和した状態の中で細部が少しずつ変わる感覚、そして歌詞やビジュアルを含めた閉鎖的な雰囲気。こうした要素が一体になっているため、Neurosisが単なるスラッジ・メタルのバンドではなく、独自の表現を持つ集団として見られてきた理由も理解しやすい。

また、1990年代のヘヴィ・ミュージックの中でも、この作品は「速さ」や「技巧」ではなく、重さの持続と構成の長さで印象を残すタイプのアルバムとして捉えやすい。後のNeurot Recordingsでの活動につながる、バンド自身が世界観を管理していく姿勢の原型も、この時期の作品から見えてくる。

盤について

今回の1996年盤は、オリジナル期のリリースにあたる。スリーブはゲートフォールドで、12インチサイズのブックレット付き。レーベル表記はIron City Recordsで、裏ジャケットやスパインにそのカタログ番号が見える一方、ランアウトの刻印からRelapse Recordsのカタログ情報も読み取れる仕様になっている。同じスリーブとブックレットを持ちながら、別バージョンとはレーベルやランアウト刻印が異なる点も、この盤の特徴として挙げられる。

『Through Silver In Blood』は、Neurosisの音楽がハードコアからどこまで広がったかを示すだけでなく、その後の重い音楽の地図を描き替えていく起点のひとつでもある。1996年という時点でここまでの密度と構成を備えていたことが、今あらためて見るとかなりはっきりわかる作品だ。

トラックリスト

  1. Album One
  2. A1 Through Silver In Blood 12:12
  3. A2 Rehumanize 1:46
  4. A3 Eye 5:18
  5. B1 Purify 12:18
  6. B2 Locust Star 5:49
  7. Album Two
  8. C1 Strength Of Fates 9:44
  9. C2 Become The Ocean 1:27
  10. D1 Aeon 11:44
  11. D2 Enclosure In Flame 10:20

動画

Share
記事一覧に戻る
toast