Ozric Tentacles - Sliding Gliding Worlds (1988)
Ozric Tentacles 1988

Ozric Tentacles - Sliding Gliding Worlds (1988)

Electronic Rock Ambient Psychedelic Rock Space Rock

Ozric Tentacles『Sliding Gliding Worlds』について

Ozric Tentaclesは、1983年にイングランド南西部サマセットで始動した、長い活動歴を持つプログレッシブ/スペース/サイケデリック系のバンドだ。Ed Wynneを中心に編成を変えながら活動を続け、電子音とロックの演奏感を行き来する独自の作風で知られている。『Sliding Gliding Worlds』は1988年の作品として位置づけられるアルバムで、2023年にUK & Europe盤としてKscopeから再登場した。今回の盤は2021年にEd Wynneによってリマスターされており、オリジナル期の音像を現代の再発フォーマットで整え直したものと見てよさそうだ。

Ozric Tentaclesのディスコグラフィーの中では、いわゆる“歌もの”のロックバンドというより、長尺のインストゥルメンタルを軸にした演奏主体の作品群の流れにある。1980年代後半の時点で、すでにバンドの核になっている発想はかなり明確で、リズム、シンセ、ギター、フルートが連続的に動きながら曲を組み立てていく。UKのスペースロック、アシッド寄りのサイケデリア、そしてエレクトロニックな質感が自然につながるところが、このバンドらしさだ。

アルバムの位置づけ

『Sliding Gliding Worlds』は、Ozric Tentaclesの初期の流れを理解するうえで重要な一枚として語られやすい。1980年代の英国インディー/アンダーグラウンドの文脈では、同時代のプログレ再評価やサイケデリック・ロックの更新と重なる部分があり、単純な懐古ではない作りになっている。Camelのようなメロディ重視のプログレとも、Hawkwindの宇宙感とも接点があるが、Ozric Tentaclesはそこにダンス感覚に近い反復や電子処理を持ち込む点で、少し違う立ち位置にいる。

今回の2023年盤は、オリジナルの1988年盤からかなり時間を置いての再発だが、2021年リマスターによって音の輪郭が整理されているのがポイントになる。初期作特有のざらついた手触りを残しつつ、低音域や各パートの分離感が今の再生環境でも追いやすくなっているタイプの再発盤だ。オリジナルの空気感を保ちながら、聴き方の解像度を上げた盤という印象に近い。

聴きどころ1: 反復で押し進める推進力

この作品でまず目立つのは、曲の展開が大きな起伏よりも、細かなフレーズの積み重ねで進んでいく点だ。ギターが前面に出る場面でも、いわゆるロック的なリフの押し出しだけでなく、シンセやベースの反復が土台を作り、その上で音色が少しずつ変化していく。聴感上は派手に転調しているわけではないのに、流れが止まらない。その持続感が作品全体の核になっている。

Ed Wynneの演奏は、旋律を強く歌わせるというより、音のレイヤーを動かして空間を作る方向にある。リマスター盤では、その重なり方が以前より見えやすい。ギターの粒立ち、シンセの帯域、リズム隊の位置関係が把握しやすく、曲がどこで膨らみ、どこで引くのかが追いやすい。こうした構造の明瞭さは、初期のOzric Tentaclesを聴くうえでかなり大きい。

聴きどころ2: 電子的な質感とバンド演奏の同居

『Sliding Gliding Worlds』では、ロックバンドの演奏に電子音楽的な処理が自然に溶け込んでいる。ここが単なるスペースロックにとどまらないところだ。リズムの刻み方には機械的な印象もありつつ、完全に打ち込みへ寄るわけではなく、生演奏の揺れが残る。そのバランスが、1988年という時代の空気とよく合っている。

ジャンル名でいえばElectronic、Rock、Space Rock、Ambient、Psychedelic Rockが並ぶが、実際の聴感はもっと連続的だ。アンビエント的な広がりから、サイケデリックな高揚、そしてバンドとしての推進力へと滑らかに移る。タイトルの“Sliding Gliding”という語感にも、そうした滑走感がそのまま出ているように見える。曲単位でもアルバム全体でも、切れ目より流れを聴く作品だ。

再発盤としての見どころ

2023年盤はKscopeからのリリースで、同レーベルが扱う現在進行形のプログレ系作品群の中に、Ozric Tentaclesの初期作を置き直した形になる。Kscopeはロンドン拠点のプログレ系レーベルで、音の整理された再発や現行アーティストとの接続に強い。そのため、この盤も単なる旧作の復刻というより、今の耳で初期Ozric Tentaclesを聴き直すための入口として機能している。

オリジナル盤と比べると、今回の再発は2021年リマスターによる音の見通しの良さが大きな違いになりそうだ。初期作品にありがちな密度の高さが、むしろ整理されて聴こえる方向で、細部の動きが追いやすい。派手な改訂ではなく、元の素材をきちんと整えて再提示した再発といえる。

まとめ

『Sliding Gliding Worlds』は、Ozric Tentaclesの初期からすでに確立されていた、電子音とバンド演奏の接続、反復による推進、そして宇宙的な広がりをまとめて確認できる作品だ。1988年のオリジナル期の手触りを持ちながら、2023年盤ではリマスターによって各要素の輪郭がつかみやすくなっている。スペースロックや英国プログレの流れをたどるうえでも、バンドの個性を知るうえでも、重要な位置にある一枚として扱えそうだ。

トラックリスト

  1. A1 Yaboop Yaboop 5:25
  2. A2 Soda Water 4:08
  3. A3 The Code For Chickendon 4:56
  4. A4 Guzzard 2:04
  5. B1 The Dusty Pouch 4:23
  6. B2 Sliding + Gliding 4:52
  7. B3 Kick Muck 5:24
  8. C1 Its A Hup Ho World 6:39
  9. C2 Atmospheric Underslunky 3:30
  10. C3 (Omnidirectional) Bhadra 2:56
  11. C4 Fetch Me The Pongmaster 6:09
  12. D1 Mae Hong Song 3:17
  13. D2 White Rhino Tea 4:04
  14. D3 Loaf Jaw 1:12
  15. D4 The Green Island 2:56

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