Palmeira - Palmeira (1983)
Palmeira 1983

Palmeira - Palmeira (1983)

Jazz Folk, World, & Country Latin MPB Bossanova

Palmeira『Palmeira』について

Palmeiraは、オランダで活動したブラジル風のバンドで、1979年から1985年まで存在したグループだ。ジャズクラブやナイトクラブで数多く演奏し、1983年に唯一のアルバムを私家盤500枚という少ない数で残している。その作品が、2007年に日本のレーベルCélesteからあらためて紹介されたのが、この『Palmeira』である。オリジナルは1983年の録音・制作に属し、2007年盤はその音源を日本で聴ける形にしたものとして位置づけられる。

このアルバムの面白さは、ブラジル音楽の要素を軸にしながら、活動の場がオランダのジャズ/クラブ文化にあった点にある。メンバーはLodewijk Hulsman、Angelo Noce Santoro、Jeanette Van Der Pligt、Hans Van Vugt、Jehanne Hulsmanの5人。編成の詳細までは追い切れないが、少人数のアンサンブルで、ボサノヴァやMPBの流れをたどりつつ、ヨーロッパの室内楽的な感触もにじむタイプの作品として受け取れる。ジャズ、ラテン、フォーク、ワールドの要素が並ぶのも、この出自を考えると自然だ。

作品の位置づけ

Palmeiraにとってこのアルバムは、事実上の代表作であり、唯一のアルバムでもある。1983年に私家盤として少数のみ流通したという経緯から、当時の一般的なディスコグラフィーの中では見つけにくい存在だったはずだ。そうした作品が2007年にCélesteから再び世に出たことで、80年代初頭のヨーロッパにおけるブラジル音楽受容の一断面として聴かれる機会が生まれた、という見方ができる。

Célesteは2000年にToshie Miyaki-Yankuによって設立されたレーベルで、ジャンルをまたいで音楽の光を拾い上げる姿勢を掲げている。この再発も、その方針にきれいに重なる一枚だ。オリジナル盤の希少性を考えると、2007年盤は単なる復刻というより、埋もれていた録音を現在のリスナーに届く形へ整えたものとして意味がある。

音の印象

実際に耳を傾けると、まず前に出てくるのはリズムの運びだ。ボサノヴァ由来の細かな揺れが中心にありながら、ジャズクラブで鳴っていた音らしく、演奏は身構えすぎず、それでも崩れない。歌やメロディは流麗にまとまりすぎず、各楽器の受け渡しに少し余白が残る。その余白が、この作品を単なる“ブラジル風”で終わらせず、オランダのバンドが当時の空気の中でブラジル音楽を咀嚼した記録として聴かせる。

また、MPBやフォークの要素が入ることで、曲ごとの表情が一色に染まらない。ラテン寄りの推進力がある場面と、静かにフレーズを置いていく場面が並び、アルバム全体としては派手な山場よりも、まとまった時間の流れを楽しむタイプだ。クラブでの演奏経験があるバンドらしく、音の見通しがよく、各パートの役割がはっきりしている点も印象に残る。

注目曲について

収録曲の中でも、ボサノヴァ色の強い楽曲はこのアルバムの核にあたる。ギターやリズム隊の刻みが前面に出ると、ブラジル音楽の定番的な語法に寄りすぎず、演奏の呼吸そのものが聴きどころになる。歌が入る曲では、旋律の置き方が軽やかで、言葉数を詰め込みすぎない進行が耳に残る。派手な展開ではなく、テンポの安定とフレーズの連なりで引っ張る作り。

もう一つの聴きどころは、ラテン/ジャズ寄りの曲だ。ここではビートの輪郭がややくっきりし、クラブ演奏で鍛えられた感じが出る。アンサンブルが前へ進む力を保ちながら、各メンバーの音がぶつかりすぎないため、ダンス音楽としての性格と、室内的な落ち着きが同居する。こうしたバランスは、同時代のヨーロッパ圏でブラジル音楽を扱った作品群の中でも、かなり自然体の部類に入るはずだ。

同時代の文脈

1980年代初頭は、ブラジル音楽がヨーロッパ各地で別のかたちに翻訳されていった時期でもある。Palmeiraの音は、ブラジル本国の洗練されたMPBをそのまま再現するものではなく、ジャズ、クラブ、ヨーロッパの演奏感覚を通して組み立てられている。そのため、ブラジル音楽の影響を受けた欧州作品や、ボサノヴァを軸にしたクロスオーバー作品と並べて聴くと、立ち位置が見えやすい。

このアルバムは、華やかなヒット作として語られるより、限られた枚数で残った録音が後年に再評価された例として見るほうが近い。オリジナル盤の希少性、オランダでの活動歴、そして日本盤再発という流れまで含めると、作品そのものだけでなく、流通の歴史も含めて興味深い一枚だ。静かに丁寧に作られたブラジル風ジャズ/MPB作品として、当時の空気をそのまま閉じ込めた記録になっている。

トラックリスト

  1. A1 Trilhos Urbanos 5:18
  2. A2 Undu 8:56
  3. A3 Baixa De Sapateiro 6:12
  4. A4 Telephone 3:05
  5. B1 Living In More Than One Way 5:27
  6. B2 Amanhecer 3:22
  7. B3 Mania De Voce 7:52
  8. B4 Tapajos 5:36

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