Patrice Rushen - Pizzazz (1979)
Patrice Rushen 1979

Patrice Rushen - Pizzazz (1979)

Funk / Soul Funk Soul Disco

Patrice Rushen『Pizzazz』(1979)

Patrice Rushenの『Pizzazz』は、1979年にElektraからリリースされた作品で、彼女がソロ・アーティストとして積み上げてきたR&B、ジャズ、ファンクの要素を、よりレコード作品として整理して聴かせる一枚だ。クラシック音楽の訓練を受けたピアニストであり、キーボード奏者、作曲家、プロデューサーでもあるRushenは、単に歌う人ではなく、演奏と編曲の両面で存在感を示すタイプのアーティストである。本作もその個性がはっきり出ている。

1978年にElektraへ移籍した彼女にとって、『Pizzazz』は同レーベルでの初期の重要作にあたる。70年代後半のElektraは、ロックだけでなくソウルやディスコ寄りの作品も多く抱えていた時期で、このアルバムもその流れの中に置くと見えやすい。洗練されたコード感、タイトなリズム、歌と鍵盤の両立という点で、同時代のミニー・リパートンやアレサ・フランクリン周辺のソウル作品、あるいは後のアーバン・コンテンポラリーの入口に近い手触りもある。

作品の位置づけ

Patrice Rushenは1973年にPrestigeでデビューし、そこから数枚のアルバムを経て、セッション・プレイヤーとしても活動の幅を広げていた。『Pizzazz』は、そうした経験を踏まえたうえで、歌手としての顔と鍵盤奏者としての顔がより自然に結びついている時期の録音といえる。後年の大きなヒット曲で知られる以前の段階だが、すでに演奏、作曲、アレンジのバランスが整っている。

録音はカリフォルニア州ハリウッドのConway Studiosで行われ、Allen Zentz MasteringでChris Bellmanがマスタリングを担当している。US盤はAllied Record Companyプレスで、ラベルにはARの工場コード、ランアウトにはSP-ARの刻印が確認できる。フォト/歌詞入りのインナー・スリーブ付きという点も、当時のLPとしてはうれしい仕様だ。

サウンドの印象

このアルバムは、派手なディスコ一辺倒ではなく、ソウルの骨格を保ちながら、ファンクのリズムやジャズ由来の和声感を織り込んで進む。Rushenの歌は、力みで押すというより、フレーズの置き方で曲を組み立てていくタイプで、鍵盤のラインとボーカルがぶつからずに並走する。録音全体も、各パートが比較的見通しよく収まっていて、ベースとドラムの推進力、シンセやピアノの配置が耳に入りやすい。

タイトルの通り、音の彩りは多いが、過剰に装飾的ではない。ディスコ期の録音にありがちな四つ打ちの押し出しだけでなく、曲によってはリズムの跳ね方やブレイクの置き方にファンク寄りの感触がある。Elektraの1979年盤らしく、時代の空気をまといながらも、Rushen本人の演奏家としての輪郭が前に出る仕上がりだ。

注目曲について

この時期のPatrice Rushenを語るうえで、やはり代表曲として外しにくいのが「Haven’t You Heard」だ。後年シングルとして広く知られるこの曲は、彼女のメロディの作り方、リズムの置き方、そして歌の運びがよく見える一曲で、アルバム全体の軸にもなっている。ファンクの推進力を持ちながら、フックの立ち方はかなりソウル寄りで、ダンスフロア向けの強さと、聴き込むほどに見えてくる和声の細かさが同居している。

「Haven’t You Heard」は、Rushenの代表作の中でも、演奏と歌の両方がきちんと機能している点が大きい。ピアノやキーボードが単なる伴奏に留まらず、曲の展開を押し出す役割を担っているため、歌メロの印象だけで終わらない。70年代後半のソウル/ディスコの中でも、フィリー・ソウルの流れや、ミュージシャン主導のブギー感と比較して聴くと、彼女の作曲家としての整理の仕方がわかりやすい。

もう一つ、本作を聴くうえで重要なのは、アルバム全体の流れの中で派手さを競うより、曲ごとの質感を変えていく作りだ。強いビートで押す場面だけでなく、少し落ち着いたテンポの曲や、鍵盤の響きが前に出る場面があり、Rushenの音楽性が一面的でないことが伝わる。ここには、のちのポップヒットだけでは見えにくい、ジャズを土台にしたソングライターとしての感覚がある。

1979年のソウル/ディスコ文脈で見ると

『Pizzazz』は、1979年というディスコの熱がまだ強い時期に出たアルバムだが、単純な流行追随盤ではない。Patrice Rushenは、同時代のダンス志向のソウル・アーティストの中でも、鍵盤の手触りと曲作りの細かさで個性を出している。耳あたりのよさだけでなく、演奏者としての視点が残るところが、この作品の特徴になっている。

結果として『Pizzazz』は、Patrice Rushenが80年代に大きく知られていく直前の、重要な足場のひとつとして聴ける。ソウル、ファンク、ディスコを横断しながら、彼女自身のコード感と演奏力が前面に出る一枚だ。Elektraの1979年US盤としても、当時のレーベルの方向性とRushenの個性が重なる記録になっている。

トラックリスト

  1. A1 Let The Music Take Me 6:50
  2. A2 Keepin' Faith In Love 4:07
  3. A3 Settle For My Love 5:15
  4. A4 Message In The Music 3:00
  5. B1 Haven't You Heard? 6:44
  6. B2 Givin' It Up Is Givin' Up 4:58
  7. B3 Call On Me 6:47
  8. B4 Reprise (Message In The Music) 0:58

動画

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