Pendragon - Fly High Fall Far (1984)
Pendragon『Fly High Fall Far』について
イングランドのプログレッシブ・ロック・バンド、Pendragonの初期作にあたる『Fly High Fall Far』は、1984年に登場した作品で、バンドが本格的にレコード契約へ進んでいく時期の空気をそのまま閉じ込めたような一枚だ。Pendragonは1979年にZeus Pendragonとして始まり、その後に現在のバンド名へ短縮されている。1980年代前半の英国プログレ復興の流れの中で、初期MarillionやIQ、Pallasらと並べて語られることの多い存在で、この作品もそうした時代の手触りが強い。
今回の盤は1990年リリースのUK盤で、Awareness Recordsからの発行。オリジナルの1984年版から時間を置いた盤ではあるが、収録された音楽そのものは、当時のPendragonが持っていた初期衝動を知るうえで重要な位置にある。のちにバンドの核となるNick Barrettのギターとヴォーカル、Peter Geeのベースを軸にした編成が、まだ初期のメンバー変遷を経ていた時期の記録でもある。
作品の位置づけ
Pendragonはその後、よりメロディを前面に出した長編志向のプログレ路線で知られるようになるが、『Fly High Fall Far』はそうした後年の完成されたイメージよりも、もっと荒さと直進性が残る段階の作品として聴こえる。80年代前半の英国プログレは、70年代的な大作志向を引きずりつつも、シンセやギターの音像を整理していく流れがあり、このバンドもその文脈の中で独自の立ち位置を作っていった。
同時代の比較でいえば、演奏の組み立てや曲の伸ばし方にはMarillion周辺の新世代プログレと共通する感触がある一方、ギターの主導感やバンドの押しの強さには、よりロック寄りの質感もある。大仰さだけで引っ張るのではなく、リフと展開で押していくタイプの初期プログレとして捉えると見通しがよい。
サウンドの印象
実際に聴くと、まず耳に入るのはNick Barrettのギターの存在感だ。リフの輪郭がはっきりしていて、音の動きが曲の推進力になっている。そこにRik Carterのキーボードが重なり、メロディの線を補強する形で曲を広げていく。後年のPendragonに比べると、音の設計は比較的シンプルだが、そのぶん各パートの役割が見えやすい。
また、この時期の作品らしく、演奏はきっちり整いすぎない。だが、その少し粗い感じがかえって初期バンドらしい緊張感につながっている。1984年という年を考えると、シンセポップやハードロックが強い時代に、英国の若いプログレ・バンドがどこへ向かうかを探っている途中の記録として興味深い。
注目曲
収録曲の中では、タイトル曲「Fly High Fall Far」がまず印象に残る。Pendragonの初期らしく、曲名そのものが持つ上昇感と下降感を、そのまま音の流れに置き換えたような作りだ。リズムが前へ押し出し、ギターがその上でフレーズを重ねていく構成で、バンドの方向性を端的に示している。のちの洗練された長編曲ほど複雑ではないが、初期の段階でこのバンドがすでに“曲を走らせる力”を持っていたことはよくわかる。
もうひとつ耳を引くのは、メロディの立ち方だ。派手なフックで押すというより、演奏の流れの中で少しずつ印象を残すタイプで、聴き進めるほどに輪郭が見えてくる。こうした作りは、80年代英国プログレの中でも、歌ものとしての分かりやすさと演奏の展開を両立しようとするバンドに通じるものがある。
もしアルバム全体を通して聴くと、単曲での強い主張だけでなく、バンドがどのように音を積み上げていたかが見えてくる。初期Pendragonにおける“曲の始まり方”と“終わり方”の感覚が、その後の作品群の土台になっていくことも感じやすい。
1990年UK盤としての見どころ
この1990年のAwareness Records盤は、オリジナルの1984年版から少し距離のある再登場として扱える。Awareness RecordsはAndy Wareによって1980年代半ばに立ち上げられたUKレーベルで、英国プログレや関連シーンの作品を支えた文脈の中にある。盤としては、初期作を後年に改めて手に取りやすくした存在で、Pendragonの出発点を追ううえでは重要なアイテムだ。
結果として『Fly High Fall Far』は、完成度だけで評価する作品というより、Pendragonがどの地点から始まり、どの方向へ伸びていったのかを確かめるための一枚として意味を持つ。Nick Barrettを中心にしたバンドの骨格、80年代英国プログレの空気、そして後年につながるメロディ志向の芽が、ここにはすでに見えている。
まとめ
『Fly High Fall Far』は、Pendragonの初期像を知るうえで外せない作品だ。1984年のオリジナル期に生まれた音楽を、1990年のUK盤で改めて触れると、バンドがまだ模索の途中にありながら、すでに独自の推進力を持っていたことが伝わってくる。80年代英国プログレの流れを追ううえでも、Pendragonのキャリアをたどるうえでも、出発点として見ておきたい記録である。
トラックリスト
- A1 Fly High Fall Far 4:54
- A2 Victims Of Life 6:51
- B1 Dark Summer's Day 5:29
- B2 Excalibur 6:26