Severed Heads - Ear Bitten (2024)
Severed Heads『Ear Bitten』について
Severed Headsは、1979年にシドニーで始動したオーストラリアのグループだ。初期はテープループやノイズ、合成音のざらついた質感を前面に出したインダストリアル寄りの作風で知られ、その後は4/4のリズムや明確なメロディ、ダンスミュージックの要素も取り込みながら、前衛性とポップ性のあいだを行き来してきた。『Ear Bitten』は、その長い活動史のなかでもかなり後年にあたる2024年作で、Dark EntriesからUS盤として出たリリースだ。レーベルの持ち味どおり、埋もれていた音源や再評価の余地がある資料を丁寧に掘り起こした企画盤という印象が強い。
Severed HeadsはTom Ellardを中心に、Richard Fielding、Garry Bradbury、Stephen Jones、Robert Racicら複数のメンバーが関わってきた集団で、時期ごとに顔つきが変わるのが大きな特徴だ。インダストリアル、アンビエント、実験電子音楽、シンセポップの境界をまたぎながら、単なる記録音源ではなく、編集や構成そのものに強い意識がある。『Ear Bitten』も、その系譜の延長線上に置いて聴ける作品としてまとまっている。
収録内容と構成
本作は、A1〜A7が[m173679]収録、B1〜B6とC7〜C8、D1が[m280359]収録、そしてC1〜C6が今回初出という構成になっている。つまり、既存音源の再編成に加えて未発表曲も含む、アーカイブ性の高い内容だ。Severed Headsの作品は、もともとアルバム単位で完結するというより、断片や別バージョン、編集違いが連なって独自の流れを作ることが多い。この盤もその性格を引き継いでいて、曲の並びそのものがひとつの歴史資料のように機能している。
聴き進めると、音響の荒さだけで押し切るのではなく、機械的な拍と反復のなかに細かな音の配置が見えてくる。低域のうなり、金属的な響き、短いフレーズの反復、空間を広く使うアンビエント的な抜け。Severed Headsらしい要素が、時代をまたいだ断片の中で整理されている印象だ。派手な展開よりも、素材の置き方や音色の差で変化を作るタイプの内容で、じっくり追うほど輪郭が見えてくる。
注目曲: A1〜A7の流れ
A面に並ぶA1〜A7は、まとまった組曲のように機能している。Severed Headsの初期から中期にかけての感触を思わせる、テープ由来のざらつきや不規則な揺れが核にありつつ、完全に無秩序にはならない。リズムが前へ出る場面でも、単純に踊らせる方向へは寄り切らず、音の断面を見せるような編集感覚が残る。ここでは、彼らが持っていた「実験」と「構造」の両方が見えやすい。
特にA1からA7へ進むにつれ、音の密度よりも配置の変化で聴かせる作りが際立つ。ノイズが前景に出る瞬間もあるが、それが持続しすぎず、次の断片へと切り替わる流れが速い。アルバムの入口としては、Severed Headsの代表的な方法論をコンパクトに示す部分と言えそうだ。
注目曲: C1〜C6の未発表音源
今回の目玉のひとつがC1〜C6の未発表音源だ。既発曲の再掲だけでなく、ここに新しく聴ける素材が差し込まれていることで、単なる再編集盤以上の意味が出ている。未発表曲群は、既存のSevered Heads像をなぞるだけでなく、よりラフな段階のアイデアや、構成が固まりきる前の動きを感じさせる。完成度を競うというより、作業台の上にある断片を見せるような性格だ。
このセクションでは、音の輪郭が少し曖昧なぶん、リズムや音色の選び方がより目立つ。アンビエント的な広がりと、インダストリアル由来の硬さが同じ盤面で共存していて、Severed Headsが長く保ってきた実験精神がそのまま残っている。新規収録曲があることで、過去音源の再提示にとどまらず、グループの作法そのものを見直すきっかけにもなっている。
Severed Headsの位置づけ
Severed Headsは、オーストラリアの実験電子音楽史のなかでも、かなり独特な位置にいる。初期のインダストリアル色の強い時期から、後にはダンスミュージックやポップの要素を取り込み、1984年には「Dead Eyes Opened」でチャート入りも果たした。つまり、前衛の中に閉じこもるのではなく、外側の大きな音楽文化と接触しながら変化してきたグループだ。その意味で『Ear Bitten』は、単なる過去の拾遺ではなく、変化の痕跡をまとめて見せる資料性の高い一枚として読める。
Dark Entriesがこうした音源を2024年に出したことにも、レーベルの方向性がよく出ている。埋もれたテープ文化、DIY的な電子音楽、再発見されるべきアンダーグラウンド作品という文脈のなかで、Severed Headsの断片は今もなお整理される価値がある。『Ear Bitten』は、その整理のしかた自体が作品の一部になっているリリースだ。
トラックリスト
- A1 All Rights Resevered
- A2 God Factory
- A3 Hawaii / Torso / 97 Cigarettes
- A4 Acid Fur
- A5 Dance
- A6 New York Is A Lonely Town
- A7 (This Track Doesn't Exist)
- B1 Much About Bones
- B2 Scat
- B3 Pander To The Natives
- B4 For Garry 5
- B5 The Monkey Is Safe
- B6 1-2-3 A Baby Buggy
- C1 Walking Best Friend
- C2 Untitled 1
- C3 Untitled 2
- C4 Now This Is God's Son 1
- C5 Acid Fur (Demo)
- C6 Now This Is God's Son 2
- C7 Hello Donald, Merry Christmas
- C8 Pinstripe Bus
- D1 The Man Of My Dreams
動画
- All Rights Resevered
- God Factory
- Hawaii / Torso / 97 Cigarettes
- Acid Fur
- Dance
- New York is a Lonely Town
- [This Track Doesn't Exist]
- Much About Bones
- Scat
- Pander to the Natives
- For Garry 5
- The Monkey is Safe
- 1-2-3 a Baby Buggy
- Walking Best Friend
- Untitled 1