Shadow - Sweet Sweet Dreams (1984)
Shadow『Sweet Sweet Dreams』
トリニダード・トバゴ出身のカリプソニアン、ShadowことWinston Baileyが1984年に発表した『Sweet Sweet Dreams』は、Kalico RecordsのUS盤として出た作品で、同年にトリニダードのSR Recordsからもリリースされた。バックカバーにはShadowのCrossroads Musicのロゴが入り、ジャケットはカナダ製となっている。全6曲のアルバムで、カリビアン・ソカとエレクトロニック・ディスコが融合した異色の傑作だ。
制作背景・エピソード
このアルバムは、Shadowが新鋭キーボード奏者のGerry Abraham(Skice)らと組み、当時としては先端的だったアナログ・シンセサイザーとエレクトロニック・ビートを大きく取り入れて制作した作品として知られている。伝統的なカリプソ/ソカの文脈で活動してきたShadowが、電気的な音色とリズムを前面に出した点が大きな特徴になっている。
しかし1984年の発売当時、トリニダード・トバゴの音楽界やラジオ局では「こんなものはソカではない」と受け止められ、評価も販売も振るわなかった。生ホーン主体の伝統を重んじる地元シーンから拒絶され、Shadow自身も多額の負債を抱えて深い痛手を受けたという苦難のエピソードが残されている。
時代の文脈
1980年代半ばのカリブ海圏で、ソカがエレクトロニック・ダンス・ミュージック、ブギー、シンセ・ディスコと交差した例として語られる作品である。とりわけ、80年代初頭のニューヨークのエレクトロやポスト・ディスコ、ヨーロッパのシンセ・ポップと響き合う先鋭的な要素を持ち、当時のカリブ音楽の中では完全に時代を先取りした特異な位置に置かれていた。
生ホーン主体の伝統的なソカとは異なる方向へ進んだその先進性は、発売から何十年もの時を経て、ダンスミュージック史のミッシングリンクとして光を浴びることになる。
サウンドの特徴と聴きどころ
収録曲では、「Way, Way Out」の中毒的なベースラインと浮遊感あふれるシンセ・リフが抜群の疾走感を生み出している。「Together(Let's Get It Together)」は多幸感に満ちたモダン・ソカ・ブギーとして愛され、「Dreaming」や「Moon Walking」ではスペーシーなシンセとShadow特有のディープな低音ボーカルの組み合わせが神秘的な魅力を放つ。全6曲を通して、生のリズムと初期エレクトロニクスの組み合わせが前面に出た唯一無二の1枚となっている。
後世への影響
発売から数十年後、このアルバムは世界中のレコード・ディガーやクラブDJによって再発見され、オリジナル盤は中古市場で1,000ドルを超える高額プレミアがつくカリビアン・コズミック・ディスコの「究極の聖杯(Holy Grail)」として神格化された。
2016年には名門Analog AfricaとJamwaxから正規再発が実現し、評価が一気に世界へ広がった。フローティング・ポインツ、フォー・テット、ジャイルス・ピーターソン、フニーといったトップDJたちがクラブでプレイし、世界的ダンスフロア・アンセムとして蘇った。2018年に世を去ったShadowにとって、晩年における最大の名誉回復と音楽的勝利をもたらした金字塔として語り継がれている。
トラックリスト
- A1 Way, Way Out
- A2 Together
- A3 Dreaming
- B1 Let's Make It
- B2 Moon Walking
- B3 Without Love