Shark Move - Ghede Chokra's (1973)
Shark Move 1973

Shark Move - Ghede Chokra's (1973)

Rock Psychedelic Rock Prog Rock

Shark Move『Ghede Chokra's』について

インドネシアのバンド、Shark Moveが1973年に残した『Ghede Chokra's』は、同国ロックの初期を語るうえで外せない一枚だ。Bandungで1970年に結成されたこのグループは、Benny Soebardjaを中心に活動し、ロックに伝統的な旋律感覚や当時としては踏み込みの深い演奏を持ち込んだことで知られている。日本や欧米の有名バンドとは少し違う場所から出てきた作品だが、音の作りはかなり強い。単なる地域ロックではなく、当時のプログレッシブ・ロックやサイケデリック・ロックの文脈の中で聴ける内容になっている。

この盤は2014年にRockpod Recordsから出た再発盤で、オリジナルの1973年作品を現在の耳で聴ける形にしたものだ。Shark Moveはインドネシアのロック黎明期を支えたバンドのひとつで、Benny Soebardjaが作曲、ギター、ヴォーカルの軸を担っている。メンバーにはBhagu Ramchand、Sammy Zakaria、Soman Loebis、Janto Diabloらが名を連ね、編成の中で各人の役割がはっきりしている印象がある。演奏の中心にあるのは、バンドとしての一体感と、曲ごとに表情を変える展開の組み立てだ。

作品の位置づけ

Shark Moveは1970年にBandungで始動し、ほどなくしてインドネシアの実験的なロックを代表する存在として見られるようになった。プロフィールにもある通り、当時のいわゆる“甘い”ポップ寄りの音楽とは距離を置き、より攻めたロックを鳴らしていたバンドだ。しかも英語詞の曲が含まれている点も、この時代のローカル・ロックとしては目を引く。国産ロックの枠内に収まりきらない志向が、作品全体に通っている。

バンドの歩みとしては、キーボード奏者の死去をきっかけにBenny SoebardjaがShark Moveを続けず、新しいバンドGiant Stepを組む流れへつながっていく。そうした経緯を踏まえると、『Ghede Chokra's』はShark Moveという名前で残された重要な記録として受け止めやすい。インドネシアの70年代ロックを掘るとき、しばしば比較対象に挙がる欧米のサイケやプログレの大作群と並べて語られることもあるが、実際にはもっと土着的な手触りと、当時の録音ならではの生々しさが前に出る。

聴きどころ

全体を通してまず目立つのは、ギターの存在感だ。リフの作り方やフレーズの置き方に、単なるハードなロックとは違う粘りがある。Benny Soebardjaの歌とギターは、曲を引っ張る役割をきっちり担っていて、演奏が進むにつれてテンションが上がる場面も多い。キーボードやリズム隊も前に出すぎず、かといって伴奏に徹しすぎもしない。バンド全体で展開を積み上げていく感じが強い。

サイケデリック・ロックの要素は、派手なエフェクトの量よりも、構成の揺らぎや音の重ね方に出ているように聞こえる。曲によっては英語詞が入るため、メロディの運びが国際的なロックの文法に近づく瞬間もあるが、そこにインドネシアらしい旋律の感触が残る。結果として、単に海外志向の模倣ではなく、ローカルなバンドが自分たちの言葉でプログレやサイケを鳴らしていた、という輪郭が見えやすい。

注目したい曲の流れ

収録曲の中では、まずタイトル曲にあたる『Ghede Chokra's』周辺の流れがこの作品の核になっているように感じられる。バンド名義の作品らしく、演奏のまとまりと曲の推進力が前面に出る場面だ。リズムの刻みが安定しつつ、上物のフレーズが少しずつ形を変えていくため、聴き進めるほどに音の層が見えてくる。派手に展開するというより、じわじわと圧を高めるタイプの曲作り。

また、英語詞が使われる曲では、Benny Soebardjaのヴォーカルがバンドのキャラクターをはっきり示している。発音の細部よりも、言葉を押し出す勢いとメロディの運びが印象に残る。歌ものとしての分かりやすさを保ちながら、演奏はしっかりと実験的で、当時のインドネシア・ロックがどこまで踏み込めたかを示す材料になっている。

再発盤としての聴こえ方

2014年盤はRockpod Recordsによる再発で、1973年のオリジナル作品を現在の環境で手に取りやすくしたものだ。こうした再発盤では、オリジナルの空気感を保ちながらも、入手性の面で大きな意味がある。Shark Moveのように地域的な評価だけでは追いにくいバンドの場合、再発によって作品単位での聴取がしやすくなるのは重要だろう。

『Ghede Chokra's』は、インドネシアの70年代ロックがどの地点にあったかを示す記録として見どころが多い。サイケデリック・ロックとプログレッシブ・ロックの要素を持ちながら、演奏はきわめてバンド的で、Benny Soebardjaの存在感も強い。派手な逸話で売るタイプの作品ではないが、音を追うほどに当時のバンドの意志が伝わってくる一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 My Life
  2. A2 Butterfly
  3. A3 Harga
  4. B1 Evil War
  5. B2 Bingung
  6. B3 Insan
  7. B4 Madat

動画

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