Simon & Garfunkel - Sounds Of Silence (1966)
Simon & Garfunkel『Sounds Of Silence』(1966)について
『Sounds Of Silence』は、Simon & Garfunkelが1966年に発表したUS盤のアルバムで、デュオの名を広く決定づけた重要作だ。もともとこの作品は、前年のデビュー作『Wednesday Morning, 3 A.M.』の反応を受けて、楽曲の再構成と再編集を経て世に出たもので、フォークの枠に収まりきらない広がりを持つ内容になっている。アコースティック中心の歌とギターを軸にしながら、当時のフォーク・ロックの流れの中で、ポップ・チャートにも届く形へと整えられている点が大きい。
Simon & Garfunkelは、Paul SimonとArt Garfunkelによるアメリカのフォーク・ロック・デュオで、1960年代の録音作品を通じて強い存在感を残した。『Sounds Of Silence』は、その中でも初期の転機にあたる一枚で、のちの『Parsley, Sage, Rosemary and Thyme』や『Bookends』へつながる足場になっている。なお、UK盤では収録内容に差があり、このUS盤とは構成が異なる。
US初回モノ盤の特徴
この1966年US盤は、初回モノラル・プレスとして知られる。ジャケットは、表面に白字の「SIMON & GARFUNKEL」、その下に青字で「SOUNDS OF SILENCE」というレイアウト。曲目は表面に記載されず、裏面下部の枠内にも掲載されていない初期仕様になっている。裏ジャケットでは、Art Garfunkelの写真に写るTiger Beat誌のロゴが確認でき、後年の版では修正された要素として知られる。
レーベルはColumbiaの赤い“360 Sound”デザイン。初期プレスでは「NONBREAKABLE」の表記が見られ、さらに非常に初期のステレオ盤ではリム・テキストに「MASTERWORKS」が入るものもあるが、この盤はモノ盤なので、当時のColumbiaらしい60年代中期の仕様をそのまま伝える。A6「Angie」表記も初期仕様の一つで、のちに「Anji」へ改められる。
アルバムの位置づけ
この作品の重要性は、単に代表曲を含むからだけではない。デビュー作では十分に届かなかったデュオの魅力が、より明確な形で再提示された点にある。フォークの語り口、整ったハーモニー、曲ごとの細かなニュアンスが前面に出ていて、同時代のBob Dylan周辺のフォーク・ロックや、The Byrdsのようなエレクトリック化したサウンドとも地続きに感じられる場面がある。一方で、Simon & Garfunkelはあくまで声の重なりと曲の輪郭で聴かせるタイプで、その点に独自性がある。
録音物としても、のちの大作期ほど音数で押す作品ではない。だからこそ、旋律の運びや歌詞の聞こえ方、ギターの刻みがはっきり残る。実際に耳を通すと、派手なアレンジよりも、声の近さと曲順の流れで引き込む作りだと分かる。1曲ごとの密度が高く、アルバム全体を通して聴くと、デュオの歌唱バランスがかなり精密に組まれていることが伝わる。
注目曲「The Sound of Silence」
このアルバムを語るうえで外せないのが「The Sound of Silence」だ。もともとは別ヴァージョンで知られていた楽曲だが、この時期の再構成によって大きく広まり、作品の象徴になった。タイトル曲らしく、アルバムの顔として機能している。静けさそのものを題材にしながら、歌の入り口からサビにかけての流れが非常に明瞭で、Simonの作曲感覚とGarfunkelの伸びる声がきれいに噛み合う。
聴きどころは、言葉の置き方とハーモニーの間合いだ。大きな音で押さず、節ごとの積み重ねで緊張を作る。60年代半ばのフォーク・ロックには、社会性や内省を兼ねた楽曲が多いが、この曲はその中でも語り口が整っていて、ラジオで広く届いた理由が分かりやすい。アルバムの中に置かれると、単独ヒットとしての強さだけでなく、作品全体の方向性を示す役割も担っている。
注目曲「Richard Cory」や「A Most Peculiar Man」
アルバムの中では、短い曲でも印象が残るものが多い。「Richard Cory」は、淡々と進む語りの中で人物像を立ち上げる曲で、フォークの物語性がよく出ている。「A Most Peculiar Man」も同様に、時間をかけずに場面を描き切る構成で、Simonの作詞の切れ味が見えやすい。どちらも派手な展開ではないが、言葉とメロディの結びつきがはっきりしている。
このあたりを聴くと、Simon & Garfunkelが単なる美しいハーモニーのデュオではなく、歌詞の視点や人物描写でも強い個性を持っていたことが分かる。後年の作品で見られる緻密さの原型が、すでにこの段階でかなり整っている印象だ。
「Anji」をめぐる表記の変遷
A6に収録された「Anji」は、インストゥルメンタルとしてアルバムの中で少し空気を変える役割を持つ。初期プレスでは「Angie」と表記され、クレジットもB. Janschとなっているが、のちに表記が「Anji」、作曲者表記がDavy Grahamへ修正される。バックカバーではすでにDavy Grahamへのクレジットが見られる点も、この盤の初期仕様を示す要素だ。曲そのものは、ギター主体のアルバムの中で、演奏の細部を聴かせる場面として収まりがよい。
まとめ
『Sounds Of Silence』は、Simon & Garfunkelの初期キャリアを語るうえで重要な一枚であり、1966年という時代のフォーク・ロックが持っていた広がりを、かなり明確に示す作品だ。初期USモノ盤はジャケットやラベルの仕様にも特徴があり、作品の初出期の姿をそのまま伝えている。代表曲「The Sound of Silence」を中心に、短い曲でも印象を残す構成が続き、のちの大成へ向かう前段階として見ても内容が濃い。声、曲、言葉、その三つがきれいに揃ったアルバムとして記憶される一枚だ。
トラックリスト
- A1 The Sounds Of Silence
- A2 Leaves That Are Green
- A3 Blessed
- A4 Kathy's Song
- A5 Somewhere They Can't Find Me
- A6 Angie
- B1 Richard Cory
- B2 A Most Peculiar Man
- B3 April Come She Will
- B4 We've Got A Groovey Thing Goin'
- B5 I Am A Rock