Steely Dan - Pretzel Logic (1974)
Steely Dan『Pretzel Logic』について
Steely Danの3作目にあたる『Pretzel Logic』は、1974年の作品だ。Walter BeckerとDonald Fagenを中心にしたこのバンドは、ニュー・ヨーク出身のロック・バンドとして出発しながら、早い段階からジャズの語法を作品に取り込んでいった。ここでもその傾向ははっきりしていて、ロックの骨格を保ちながら、コード感や演奏の組み立てにジャズ由来の感覚が入り込んでいる。ABC Recordsから出た当時のSteely Danらしさが、かなり明確に形になった一枚といえる。
1972年に始動したSteely Danは、初期からスタジオ志向の強いバンドだったが、『Pretzel Logic』ではその方向性がさらに見えやすい。演奏の精度、曲ごとの切り替え、メロディと和声の運びに、後のSteely Dan像につながる輪郭がある。ロックのアルバムとして聴いても、ソングライティングの細かさが目立つ一方で、バンド演奏の温度は一定に保たれている。派手に盛り上げるより、音の配置で聴かせるタイプの作品だ。
アルバム全体の印象
この時期のSteely Danは、同時代のウェストコースト系ロックや、より硬質なAOR的感覚とも近い距離にいるが、単純に並べてしまうと少し違う。The Doobie BrothersやEaglesのような流れと比較されることはあるものの、Steely Danの方が言葉の切れ味と和声のひねりが強い。『Pretzel Logic』でもその特徴は変わらず、曲ごとに表情を変えながら、全体としては落ち着いた統一感を保っている。
また、このアルバムは後の洗練されたスタジオ作品へ向かう前段階としても重要だ。のちのSteely Danは、セッション・ミュージシャンを徹底的に使い、より緻密な録音作業へ進んでいくが、その土台になる発想がこの時点でかなり固まっている。バンドとしての演奏感と、作家性の強い楽曲が同居する、過渡期の作品という見方もできる。
注目曲「Rikki Don’t Lose That Number」
本作を語るうえで外せないのが「Rikki Don’t Lose That Number」だ。Steely Danの代表曲として知られ、アルバムの中でも特に耳に残る。冒頭のピアノのフレーズから曲の輪郭がすぐに立ち上がり、そこから進む展開も無駄が少ない。リズムは軽やかだが、単純なポップソングとして終わらず、コードの動きやメロディの置き方に独特の引っかかりがある。
この曲は、Steely Danが「聴きやすいのに、どこか普通ではない」という性格を持つことをよく示している。ラジオ向きの分かりやすさがありながら、細部には作曲の癖がある。ベースラインやコーラスの処理も含めて、演奏の流れが滑らかに整えられていて、アルバムの入口として機能している。
注目曲「Pretzel Logic」
タイトル曲「Pretzel Logic」は、アルバムの中でも特にSteely Danらしい曲のひとつだ。曲名どおり、少しひねった感覚があり、歌詞の運びも音の流れも直線的ではない。演奏自体は落ち着いているのに、どこか視点がずれているような感触が残る。こうした「ひねり」は、このバンドの魅力を説明するうえで分かりやすい要素だ。
この曲では、ジャズ的な和声感とポップな構成が自然に接続されている。派手なソロで押すのではなく、曲全体の設計で聴かせるタイプで、アルバムの中でも知的な印象が強い。タイトル曲として、作品の方向を端的に示している。
そのほかの楽曲について
『Pretzel Logic』には、ミドルテンポの曲や軽いグルーヴを持つ曲が並び、アルバム全体の流れは比較的なめらかだ。強いフックを持つ曲と、少し引いた位置で進む曲が交互に置かれていて、単調さを避けている。演奏面では、ギター、キーボード、ドラムが前に出すぎず、曲の輪郭を保つ方向に寄っている。
Steely Danの初期作として見ると、このアルバムは後の完成度の高い録音作に比べて、まだバンド感が残る時期の記録でもある。Walter BeckerとDonald Fagenの作家性を軸にしながら、Denny Dias、Jeff Baxter、Jim Hodder、David Palmerらの演奏が曲の表情を支えている。個々の楽器が前に出るというより、全体のバランスで成立している感じだ。
UK盤について
このUK盤はABC RecordsのABCL 5045。1974年当時の英国盤として流通した一枚で、Steely Danの初期カタログを英国市場に届けた盤のひとつだ。ABCのUK展開はこの時期に整理されていくが、本盤はその流れの中に位置する。なお、同時代のABC系UK盤には、オリジナル発売年を示すクレジットを保った再発的な扱いのものもあるため、盤ごとの仕様差が出やすい時期でもある。
マスターノートにある通り、ビニール盤にはゲートフォールド仕様と通常ジャケット仕様の両方が存在する。ジャケットの作りはコレクション面での違いになりやすいが、作品そのものの中身は変わらない。音楽面では、1974年という年のSteely Danがどこへ向かっていたかを、かなり素直に確認できるアルバムだ。
まとめ
『Pretzel Logic』は、Steely Danの初期の中でも、ロックとジャズの要素が最も自然な形で混ざり始めている作品のひとつだ。代表曲「Rikki Don’t Lose That Number」を中心に、メロディの分かりやすさと、作りの細かさが同居している。後年のより精密なSteely Dan像を知っていると、その入口としても見えてくる。1974年のロック作品としてだけでなく、バンドが独自の方法を固めていく途中の記録としても印象に残る一枚だ。
トラックリスト
- A1 Rikki Don't Lose That Number
- A2 Night By Night
- A3 Any Major Dude Will Tell You
- A4 Barrytown
- A5 East St. Louis Toodle-O
- B1 Parker's Band
- B2 Through With Buzz
- B3 Pretzel Logic
- B4 With A Gun
- B5 Charlie Freak
- B6 Monkey In Your Soul
動画
- Rikki Don't Lose That Number
- Night By Night
- Any Major Dude Will Tell You
- Barrytown
- East St. Louis Toodle-Oo
- Parker's Band
- Through With Buzz
- Pretzel Logic
- With A Gun
- Charlie Freak
- Monkey In Your Soul